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豊田市美術館が2023年度展覧会ラインナップを発表

2023年度も多彩な展覧会を開催

 豊田市美術館(愛知県)が2023年度の展覧会ラインナップを発表した。

 2月25日から始まる「ねこのほそ道」展に続き、国内の気鋭の若手作家4人を紹介する「吹けば風」展、建築家・谷口吉生さんの代表作として知られる同館で見るアメリカ近代建築の巨匠「フランク・ロイド・ライト」展、美術館の隣地にできる博物館の開館に合わせて博物学的手法で作品をとりあげる「未来の驚異の部屋」展と、多彩な展覧会を展開する。

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ねこのほそ道 2023年 2月25日[土] - 5月21日[日]

佐々木健 《ねこ》 2017年 油彩、カンヴァス 個人蔵 Courtesy of the artist and Gomike

 飼いならされることなく、野生を保ったまま人間とともに暮らすねこ。なにかの役に立っているわけではないのに、飼い主の情緒に訴える普通で変な生きもの。

 群れをつくらず、ひとりで狩りをする肉食獣の彼らは独立心が旺盛で、優雅な、家のなかの小さな虎。

 これまで、人間は多くの種に影響を及ぼし、世界中の動物を絶滅へと追いやってきたが、ねこは長い時間をかけて人間と暮らすようになった。

落合多武《 猫彫刻》 2007年 ポリウレタンプラスチック、キーボード 個人蔵 ©Tam Ochiai

 そして、人間が自然を離れて都市を形成し、高層ビルに住むようになると、ねこも一緒に空に上がってきた。ねこは長い進化の過程で、自ら見て、触れ、自在に行き来しながら、あるがままの道を歩んできた。

 本展では、人間とは異なる空間感覚や倫理観を持ち、言葉の秩序から逃れる逸脱可能な存在として、自由、野生、ユーモア、ナンセンス溢れる、どこか”ねこ”のような現代美術を紹介する。

 同時開催:愛知県美術館・豊田市美術館同時期開催コレクション展 徳冨満-テーブルの上の宇宙、コレクション展 小さきもの-宇宙/猫

吹けば風 2023年6月27日[火] - 9月24日[日]

 本展のタイトルは、明治生まれの詩人・高橋元吉が詠んだ詩の「咲いたら花だった 吹いたら風だった」という一節からきている。

 それがなにかわかるまでは「なにか得体の知れないもの」でよいと言い、おおらかな気持ちでものごとを見ようとするこの詩人にとって、世界は新鮮な発見に満ちていたかもしれない。

 本展では、「得体の知れないもの」が花になり風になるように、単なる現象がひとにとって意味をもつ体験になる瞬間に注目する。

 本展に参加する4名の作家もまた、海や山で見た景色や日々の出来事など、日常的な体験に目を向ける。

 その作品はどこか確定できない部分があり、いつまでも汲みつくせない魅力を湛えている。

 たとえば、出展作家のひとり、川角岳大が素潜りやドライブ中の体験を思い出しながら淡く描く絵画は、時間や空間の伸縮や記憶の濃淡を思わせ、わたしたちがなにかを見たり、感じたりするときの身体感覚や心の動きを思い起こさせる。

川角岳大《 Night cruising》 2022年 acrylic on canvas

 あるいは、ふだんは気に留めないような小さな謎を映画や写真、日常会話のなかに見つけ探っていく澤田華、センサーや風力計を用いて天気を作品に取り込む船川翔司、これまで多くの作品において身体や言葉を用いて、リアルタイムで作品を更新しつづけてきた関川航平も、それぞれの仕方で、ひとがなにかを体験することについて示唆に富む仕事を続けている。

 同時開催:コレクション展 枠と波

澤田華《漂うビデオ(水槽、リュミエール兄弟、映像の角)》2022年

帝国ホテル二代目本館100周年 フランク・ロイド・ライト 世界を結ぶ建築 2023年10月21日[土] -12月24日[日]

フランク・ロイド・ライト《アヴェリー・クーンレイ・プレイハウスの窓ガラス》 1912年頃 豊田市美術館蔵

 アメリカ近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(1867-1959年)。「落水荘(カウフマン邸)」や「グッゲンハイム美術館」で知られるライトは、「帝国ホテル二代目本館」や「自由学園明日館」「山邑太郎左衛門邸(現ヨドコウ迎賓館)」を手がけ、熱烈な浮世絵愛好家としての顔も持つ、日本とゆかりの深い建築家である。

 2012年には、5万点以上におよぶ図面などの資料がフランク・ロイド・ライト財団からニューヨーク近代美術館とコロンビア大学エイヴリー建築美術図書館に移管され、学術調査研究が進められてきた。

《大バグダッド計画案 鳥瞰透視図》1957年
コロンビア大学エイヴリー建築美術図書館フランク・ロイド・ライト財団アーカイヴス蔵
©The Frank Lloyd Wright Foundation Archives
(The Museum of Modern Art | Avery Architectural & Fine Arts Library,
Columbia University, New York)

 その成果は、建築にはじまり、芸術、デザイン、著述、造園、教育、技術革新、都市計画に至るライトの広範な視野と知性を浮き彫りにしている。

 代表作「帝国ホテル二代目本館」完成から100年となる本年、エイヴリー建築美術図書館の全面的な協力のもと、日本で約26年ぶりとなる本格的な回顧展を開催する。

 世界を横断して活躍したライトのグローバルな視点は、21世紀の今日的な課題と共鳴し、来るべき未来への提言にもなる。

未来の驚異の部屋 2024年 1月20日[土] - 3月24日[日]

リュウ・チュアン《Lithium Lake and Island of Polyphony》2020年 参考写真

 美術館や博物館の原型とされる、16世紀ヨーロッパで流行した「驚異の部屋(ヴンダーカマー)」には、大航海時代を背景に、絵画や彫刻に加え、動物剝製や植物標本に貝殻、地球儀や天球儀、東洋の陶磁器など、世界中からあらゆる美しいもの、珍しいものが集められていた。

 「驚異の部屋」は、未だ知らぬ広大な世界を覗き見ることができる、小さいけれど壮大な夢と好奇心を刺激する部屋だった。

 近年、美術の分野でも、文化人類学的、自然博物学的、歴史研究的手法に基づく、博物学的な作品が多く見られるようになっている。

 事物や資料を映像や彫刻などとともに編集し、構成するそれらの作品は、収集と展示の背後で作用する力、分類と分析に基づく世界の把握の仕方、また作品や事物の保存・継承と伝統との関りを、現代の課題として照らし出す。

 本展では、美術館の隣にできる博物館の開館に向け、現在の「驚異の部屋(ヴンダーカマー )」を展開し、美術館・博物館の源流と新たな可能性を探る。

 それぞれの作品は、歴史はいかに構築されるのか、伝統はどのように交差・変容していくのか、ローカルとグローバルの関係はどうなっていくのかといった、未来に向けた問いを投げかけるだろう。

リュウ・チュアン《Lithium Lake and Island of Polyphony》2020 年 参考写真

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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