記事内に商品プロモーションを含む場合があります

鈴木里菜展 ギャラリーIDF(名古屋)で2023年6月3-18日に開催

GALLERY IDF(名古屋) 2023年6月3〜18日

鈴木里菜

 鈴木里菜さんは1985年、静岡県生まれ。2007年、名古屋造形大学造形芸術学部美術学科洋画コース卒業、2009年、名古屋造形大学大学院造形研究科造形芸術専攻修了。現在は、沖縄を拠点に制作している。

 2009年、「第6回はるひ絵画トリエンナーレ」で、はるひ賞を受賞している。

 グループ展は、さまざまな形で参加している。2012年に第31回損保ジャパン美術財団選抜奨励展(損保ジャパン東郷青児美術館・東京)にも出品した。

鈴木里菜

 名古屋では、GALLERY IDFのほか、2010-2012年に名古屋・本郷にあったアーティスト・ラン・スペース・GALLERY GOHONでも作品を展示している。

 鈴木雅明さん、田口美穂さん、吉田葵さんや、今回の鈴木里菜さんなど、GOHONに参加していた若手作家の何人かが継続して作品を発表していることをうれしく思う。

 鈴木里菜さんは、結婚で生活拠点が沖縄に移った。出産、育児を経験しながら、制作を進め、10年ぶりの個展となる。

鈴木里菜

 画家になる希望をもって美大、芸大に入った人が、それを続けるには並々ならぬ勇気がいる。それは、人生の本質に関わるものと言ってもいいものだろう。 

2023年 個展

 展示したのは、ここ4、5年に描いた作品である。ギャラリーによると、鈴木さんの制作スタイルは一貫していて、今回も果物などのゼリーを描いている。

 ベリー系やオレンジ系が中心だが、桜茶に使う塩漬けの桜を使ったものもある。これらをすべて自分でゼリーにして、描くのである。

鈴木里菜

 一見、抽象にも見える画面である。形は柔らかで主張しすぎず、流動感のある画面である。心地よい感覚に誘うような透明感があって、清々しい。

 モチーフがゼリーと知れば、なるほどと思わせるリアルな描き方である。鮮やかな色彩も出しゃばりすぎず、静かで落ち着いた感覚へと誘う。

 この有機的な世界、美しい色彩と透明感が広がる画面をつぶさに見ていくと、鈴木さんがこのモチーフを選ぶ理由が分かるような気がする。 

鈴木里菜

 ゼリーの中をたゆとうような多様な果実の形、その細かで繊細な内部、変化に富んだ色彩、そして、複雑な形状、色彩をいたわるように射す穏やかな光と微かな影、小さな気胞さえもが一緒になった絵画空間である。

 果物それぞれが持つ美しく個性的な形と色、それらの細部の質感。私たちが普段、果物を見ていても気づかないような、果物本来の素の表情、その秘密の姿を見せてくれるような感覚がここにはあるのだ。

 それは多分に、果物を包み込むゼリーの透明感と感触によって導き出されているのではないだろうか。果物だけでなく、このゼリーの層を鈴木さんは実に丁寧に描く。

鈴木里菜

 ゼリーの柔らかに果物を包み込み、すべてをゆるしてくれるような優しさによって、果物が自分をさらけ出してくれているような感覚である。

 果物が内部を惜しみなく露わにし、あらんかぎりの色彩を精一杯放っている。流されるままに漂いながら、身を任せて、そのいのちの美しさを見せてくれたような光景である。

 鈴木さんは、制作拠点を沖縄に移し、育児や家事と共にある生活の中で、身の回りのフルーツをゼリーにすることで、そこに現れた形、色彩の魅惑に心ときめかせ、そのありのままの姿を描き留めている。

鈴木里菜

 鈴木さん自身の生きることと、暮らしの中で出会った外界のいのちの美しさが響き合い、丁寧な制作と描く喜びによって紡がれた作品が、こうして生まれる。

 だからなのだろう、鈴木さんの作品は、この世界の美しさ、豊かさの感覚、日常の中の新鮮なものに出会えたような喜びと幸福感を感得させてくれる。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

最新情報をチェックしよう!
>文化とメディア—書くこと、伝えることについて

文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

CTR IMG