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ふじのくに⇄せかい演劇祭2023 4月29日-5月7日に開催 詳細情報を発表

撮影:平尾正志

「東アジア文化都市」として中韓の話題作もラインナップ!

 SPAC-静岡県舞台芸術センターが、2023年のゴールデンウィーク(4月29日~5月7日)に開催する「ふじのくに⇄せかい演劇祭2023」の詳細情報を発表した。2023年3月15日、静岡芸術劇場での会場とオンラインでプレス発表会が開かれた。

 演劇祭特設サイトも開設された。 ガイドパンフレットがこちらからダウンロードできる。チケットは、SPACの会先行予約受付開始が3月18日10時、一般前売り開始が3月25日10時。チケット販売状況はこちら

 静岡県が「東アジア文化都市」に選ばれた2023年は、中国、韓国の話題作4作品が上演される。会場は、静岡芸術劇場、舞台芸術公園、駿府城公園など。

 フランスからオリヴィエ・ピィの注目作も来日。駿府城公園エリアでは、同時開催の「ふじのくに野外芸術フェスタ2023」の一環で、宮城聰の代表作『天守物語』を上演される。

 「ストレンジシード静岡」も街をにぎにぎしく盛り上げる。

 コロナ禍の2020年には、オンラインによる「くものうえ⇅せかい演劇祭 2020」を開催。全演目を野外上演とした 2021年の開催を経て、2022年は 3 年ぶりに海外招聘も復活した。

ふじのくに⇄せかい演劇祭 2023

『アインシュタインの夢』

[日本初演] 演劇 <<<北京・中国
演出:孟京輝
4月29日 [土・祝 ]、 30日 [日 ] 各日 13:30
会場:静岡芸術劇場
[全席指定 ] 上演時間: 75分 多言語上演/日本語字幕

 出世作『恋愛的犀牛』での観客動員数は延べ100万人を超え、観劇がステータスになるほど若者の熱狂的な支持を集める中国の雄・孟京輝。今作では、アインシュタインが残した手紙や会話の記録、カフカの短編小説『田舎医者』などからインスピレーションを受け、実験的なフィジカルシアターを緻密に組み上げる。病棟を思わせる無機質な空間に、映像やライブ演奏、アクロバティックな身体表現、コントじみたスピーディな掛け合いで描き出される夢の世界は、初めてみるはずなのに、ずっと前から知っているようでもある。見慣れたはずの光景が歪んでいくう ちにふと気づく、何かが いつもと違う” 。 「早く寝なさい」 ── 眠れぬ夜にみる夢が、静岡芸術劇場にいま姿を現す。

あらすじ
 世界を揺るがす理論を生み出そうとしていたアインシュタインは、繰り返される夢のなかへ落ちてしまった。合わせ鏡のように、連なるベッドと砂嵐のテレビ画面、天井に浮かぶシーツにくるまれたソファ。厳かな雰囲気を破りグラスを持った千鳥足の男が迷い込むと、静止した時間が動き出す。円を描くような時間の中で、繰り返し出会い、すれ違い、拒絶しあう男女たち。細切れの夢は織り合わされて、あなたしか知らない景色を思い出させる。

『XXL レオタードとアナスイの手鏡』

[日本初演] 演劇 <<<アンサン・韓国
演出:チョン・インチョル、作:パク・チャンギュ
5月3日 [水・祝 ] 14:00、 4日 [木 ・祝 ] 13:00
会場:静岡芸術劇場
[全席指定 ] 上演時間: 90分 韓国語上演/日本語字幕

(c) kisoul

 大学入試を控えたジュノ。彼はレオタードを着ると幸せを感じるが、友人やガールフレンドには絶対に言えない。ところがある日、レオタード姿の男性の自撮り写真が流出、同級生たちが写真の人物を特定しようと騒ぎはじめた…。一体誰が、何の目的で拡散させたのか?本作は、2014年に起きたセウォル号沈没事故をきっかけに、犠牲となった高校生たちが暮らして
いたアンサン市の協力を得て製作され、 15年の初演以来繰り返し上演されてきた。その間に世界的な広がりを見せた「 MeToo運動」や「 LGBTQ」への関心、コロナ禍での価値観の変化など同時代的な視点も取り入れ、 22年にはロンドンでも上演され話題を呼んだ。格差社会における受験や就職の悩み ─ ─ 「いま」を生きる若者たちの心の機微が、日本の観客と交差する。

あらすじ
 大学入試の不安と焦りから、女性用レオタードを着て自撮りすることで心の安定を探すジュノ。しかし、教育熱心な母親や友人たちからの目を気にして秘密にしている。ところがある日、レオタード姿のジュノの写真が学校内で拡散されてしまう。それは、学校で孤立してしまっているヒジュの仕業だった。体育科のある大学に入りたいヒジュは、その写真を口実に体育の試験であるダンスのペアになろうとジュノに言い寄る。徐々にお互いを理解し協力し合う二人の姿に、周囲 からは冷ややかな目が注がれるが…。

『Dancing Grandmothers 〜グランマを踊る〜』

[日本初演] ダンス <<<ソウル・韓国
振付・演出:アン・ウンミ
5月7日 [日 ] 14:00 19:00
会場:静岡芸術劇場
[全席指定 ] 上演時間: 90分

(c) Young-Mo Choe

 “韓国のピナ・バウシュ”とも評され、 世界で活躍 する振付家、アン・ウンミ。 彼女は故郷を巡る旅の中、出会った「グランマ」たちが自由に踊る姿を映像に記録した。それぞれが歩んできた人生の襞を雄弁に物語る温かい身体と、鍛え抜かれたカンパニーのダンサーの身体が舞台上で化学反応を起こし、ポジティブなエネルギーが満ちる。今回は、静岡に暮らす「グランマ」たちと共演するスペシャルバージョン。色鮮やかな光、映し出される韓国の風景と人々── 世代を超えた身体が舞台で混ざり合うとき、静岡芸術劇場はダンスフロアと化し、観客をも巻き込むダンスの渦が演劇祭のフィナーレを飾る!

『ハムレット(どうしても!)』

[日本初演] 演劇 <<<アヴィニョン・フランス
<ウィリアム・シェイクスピアによる>
翻訳・演出:オリヴィエ・ピィ
4月29日 [土 ・祝 ]、 30日 [日 ] 各日 17:00
会場:舞台芸術公園 野外劇場「有度」
[全席 自由 ] 上演時間: 140分 フランス語 上演 /日本語字幕

(c) Christophe Raynaud de Lage Festival d’Avignon

 万の心を操る劇作家、シェイクスピアが遺した傑作悲劇『ハムレット』。フランスを代表する劇作家・演出家のオリヴィエ・ピィはこの世界一有名な古典をアヴィニョン演劇祭の市民参加型シリーズ企画として翻訳・演出し、俳優や一般市民、俳優学校の学生らとともにリーディング形式で 2021年に上演、大きな評判を呼んだ。「善と悪」 「自我」 「時間」など哲学的なテーマから原典を紐解いたこの挑戦は全10作に及び、そのエッセンスを凝縮したエピソード 11が『ハムレット(どうしても!)』として静岡にやってくる!ピィの演劇を貫くのは「ことばの力が世界を変える」という信念。復讐の運命に翻弄されるハムレットが、西洋の偉大な思想家たちと出会い、対話を始めると、新たなドラマが生まれ、詩が溢れ出す。変幻自在な 4人の俳優とミュージシャンは、観客を心躍る知的な冒険へと誘いこむ。「生きるべきか、死ぬべきか」、野外の劇空間であなたの目に映るのは ─ ─ 。

あらすじ
 父である先王の亡霊からその死の経緯を知らされたハムレットは、死を仕組んだ現王・叔父クロ―ディアスへの復讐を誓い、狂気を演じる。復讐計画により、ハムレットを慕うオフィーリアや その兄レアティーズ、王妃ガートルードをはじめ、周りの人々は運命の歯車を狂わせていく。ハムレットの友人ホレーシオが語り継ぐこの悲運の物語に、西洋の偉大な思想家、デカルト、フロイト、ハイデガー、ヴィトゲンシュタイン、デリダなどが次々と現れる。世紀をまたぐ出会いの先、その運命はどう変わる?

『パンソリ群唱〜済州島 神の歌〜』

[日本初演] 音楽劇 <<<ソウル・韓国
作・演出・音楽監督:パク・インへ、ドラマトゥルク :イ・ギョンファ
5月5日 [金・祝 ] 12:30、 6日 [土 ] 13:00
会場:舞台芸術公園 屋内ホール「楕円堂」
[全席 自由 ] 上演時間: 95分 韓国 語上演/ 日本語 字幕

(c) Na Seungyeol

 一人の歌い手が、太鼓のリズムに乗せ、独特の節回しで喜怒哀楽を語る朝鮮の民俗芸能「パンソリ」。その若き旗手であり、伝統を取り入れた新しい創作でも注目を集めるパク・インへが、 済州島に伝わる〈家の神々の起源譚〉を、 6人の“群唱”による叙情豊かな音楽劇に仕立てた。権威的な父、慎ましい母、意地悪な 側室 、賢く勇敢な末っ子 伝統的な家のあり方を映す神話を、パクは、家族がコミュニケーション不全を乗り越え再生していく物語として昇華する。日本平の森に佇む楕円堂に“神の歌”がこだまする時、私たちは共に笑い語る喜びを思い起こすだろう。

あらすじ
 ナムソンビは、妻ヨサンと7人の息子たちと貧しい暮らしをしていました。ある日、ジョンサンおじさんが一家のもとを訪れ、オドン島での穀物貿易の仕事を勧めました。 7人の息子が作った船でオドン島に向うナムソンビ。しかし彼は、そこで出会ったノイルジョデに恋をし、全財産を浪費してしまいました。一方ヨサンは、末っ子のノクティセンイのおかげで裕福になりました。ヨサンは夫が 3年経っても帰って来ないので、探しに行きました。 が 、ノイルジョデに騙され、池に突き落とされてしまいました。ノイルジョデはヨサンに化けて家に帰りました。 しかしノクティセンイは、彼女が母親でないことに気付きました。正体がばれたことを察したノイルジョデは、 7人の息子を殺そうと企みました。そして「自分の病気を治す唯一の方法」だとして、ナムソンビに 7人の息子の肝臓を取り出すよう唆し。

駿府城公園で同時開催! ふじのくに野外芸術フェスタ2023静岡

『天守物語』

「東アジア文化都市」春の式典上演作品[SPAC作品] 演劇 <<<静岡・日本
演出:宮城聰、作:泉鏡花、音楽:棚川寛子
5月3日[水・祝]、4日[木・祝]、5日[金・祝]、6日[土]各日18:45開演
会場:駿府城公園 紅葉山庭園前広場 特設会場
[全席指定 ] 上演時間: 65分 日本 語上演/ 中国 語 ・韓国語・英語 字幕

(c)MIURA Koichi

出演::美加理、阿部一徳、大高浩一、本多麻紀、石井萠水、木内琴子、貴島豪、榊原有美、
桜内結う、大道無門優也、舘野百代、寺内亜矢子、永井健二、山本実幸、吉植荘一郎、吉見亮

 『天守物語』は1996年に初演され、日本国内をはじめ、インド、パキスタン、中国、エジプト、韓国、アメリカ、フランス、台湾等の 国内外30都市で上演されてきた。宮城演出の特徴である「俳優による生演奏」と「二人一役の手法(一つの役を“台詞”を担当する俳優と“動き”を担当する俳優の二人で演じる)」をはじめ、アジアの多様な演劇の伝統を現代の新しい創作につなぐ趣向が随所に散りばめられている、 “祝祭音楽劇”の原点といえる作品。

 この世ならぬものの棲む白鷺城天守閣第五重。その主、美しき富姫と、若き侍・図書之助。異界の者同士にだけ許される純粋な恋――。泉鏡花の幻想世界が俳優たちの生演奏にのせて華ひらくとき、駿府城天守閣がまぶたに浮かぶ・・・。

あらすじ
 戦国時代。「白鷺城」の異名をとる姫路城。だがその第五重は「人間は生きて帰れぬ」といわれる、魔界の者たちの棲家。居並ぶ妖怪たちをつかさどる天守夫人・富姫は、猪苗代に帰る妹分の亀姫に、城主・武田播磨守寵愛の鷹を土産として持たせる。播磨守に鷹探しを命じられた若き鷹匠・姫川図書之助は、生きて帰れぬことを覚悟で第五重に現れる。富姫は妖怪に臆さぬ図書之助のいさぎよさに心をひかれ、命を奪わず地上に帰すが、主君の元に戻った図書之助はあらぬ誤解を受け、やむなく再び富姫の前にあらわれるのだった・・・。

ストレンジシード静岡 2023

開催概要

日程:2023年5月4日(木・祝)〜6日(土)
会場:駿府城公園、静岡市役所・葵区役所など静岡市内
料金:観覧無料 ※一部予約制・有料の場合あり

コアプログラム

・ウォーリー木下 演出『χορός/コロス』
・『Woman with Flower』 Creative Dandi

オフィシャルプログラム

・きゅうかくうしお
・江本純子
・マームとジプシー
・tupera tupera
・エンニュイ

オープンコールプログラム

・TACT(TAkasaki Community Theater)
・DANCE PJ REVO
・安住の地
・ダンスカンパニーデペイズマン
・お寿司

演劇祭の過去と現在

ふじのくに⇄せかい演劇祭

 公益財団法人静岡県舞台芸術センター(SPAC)では、1999年に開催された世界の舞台芸術の祭典「第2回シアター・オリンピックス」の成功を受け、2000年から、「Shizuoka 春の芸術祭」を毎年開催。各国から優れた舞台芸術作品を招聘してきた。

 SPACが活動15年目を迎えた2011年からは、名称を「ふじのくに⇄せかい演劇祭」と改め、新たなスタートを切った。

 「ふじのくに⇄せかい演劇祭」には、「ふじのくに(静岡県)と世界は演劇を通して、ダイレクトに繋がっている」というメッセージが込められている。

 静岡県の文化政策である「ふじのくに芸術回廊」と連携しながら、世界最先端の演劇、ダンス、映像、音楽などを招聘。

 静岡で世界中のアーティストが出会い、交流する―そんなダイナミックな「ふじのくにと世界の交流(ふじのくに⇄せかい)」を理念としている。

東アジア文化都市

 日本、中国、韓国の3カ国で、文化芸術による発展を目指す都市を毎年選び、文化交流、文化芸術イベント等を実施する国家的プロジェクト。

 アジア域内の相互理解、連帯感の形成を促進するとともに、東アジアの多様な文化の国際発信力の強化を図ることを目指している。

 2023年、静岡県は、中国の成都市、梅州市、韓国の全州市の3都市とともに、日本の東アジア文化都市に選ばれた。2023年の1年間で、さまざまな文化交流を図る。

SPAC(Shizuoka Performing Arts Center)

 SPACは、専用の劇場や稽古場を拠点として、俳優、舞台技術・制作スタッフが活動する日本で初めての公立文化事業集団。舞台芸術作品の創造・上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を目的としている。

 1997年から、初代芸術総監督鈴木忠志のもとで本格的な活動を開始。2007年からは、宮城聰が芸術総監督に就任。さらに事業を発展させている。

 演劇の創造、上演、招聘以外にも、教育機関としての公共劇場のあり方を重視し、中高生鑑賞事業公演や人材育成事業、アウトリーチ活動などを続けている。

 2013年、全国知事会第6回先進政策創造会議で、SPACへの取り組みが「先進政策大賞」に選ばれた。18年度グッドデザイン賞も受賞。無形の活動が一つのデザインとして高く評価された。

宮城聰(みやぎ・さとし)  SPAC芸術総監督プロフィール

 1959年、東京生まれ。演出家。SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督。

 東京大学で小田島雄志、渡邊守章、日高八郎から演劇論を学び、1990年、ク・ナウカを旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、同時代的なテキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で国内外から高い評価を得る。

 2007年4月、SPAC芸術総監督に就任。自作の上演と並行して世界各地から現代社会を鋭く切り取った作品を次々と招聘。アウトリーチにも力を注ぎ、「世界を見る窓」としての劇場運営を進めている。

 2017年、『アンティゴネ』をフランス・アヴィニョン演劇祭のオープニング作品として法王庁中庭で上演。アジアの演劇がオープニングに選ばれたのは同演劇祭史上初めてで、その作品世界は大きな反響を呼んだ。

 他の代表作に『王女メデイア』『マハーバーラタ』『ペール・ギュント』など。2004年、第3回朝日舞台芸術賞受賞。2005年、第2回アサヒビール芸術賞受賞。2018年、平成29年度第68回芸術選奨文部科学大臣賞受賞。2019年4月、フランス芸術文化勲章シュヴァリエ受章。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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