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SPACの宮城聰芸術総監督演出の ベルリン国立歌劇場オペラ『ポントの王ミトリダーテ』がコロナで延期

SPAC芸術総監督の宮城聰さん  SPAC提供 Ⓒ 加藤孝

SPACの宮城聰芸術総監督 ベルリン国立歌劇場のオペラ『ポントの王ミトリダーテ』を演出

 SPAC-静岡県舞台芸術センターによると、 芸術総監督の宮城聰さんが、独ベルリン国立歌劇場のオペラ『ポントの王ミトリダーテ』(モーツァルト作 曲)を演出する。当初は2020年11月の公演予定だったが、新型コロナウイルス感染症の再拡大を受け、12月以降に延期となった。

 メルケル首相が、2020年11月2〜30日、レストランやバー、映画館や劇場などを閉鎖すると発表。ベルリン国立歌劇場も閉鎖となり、11月13日に開幕する予定だった『ミトリダーテ』も12月以降への延期が決まった。

 ベルリン国立歌劇場が日本人演出家を招くのは同歌劇場 278 年の歴史で初めて。また、宮城さんの演出による本作が、同歌劇場のコロナ禍後の再開第一弾となる。

 SPACによると、稽古に合わせ渡独中の宮城さんは、健康面に問題はない。11月4日まで劇場に残って、照明の作業に立ち会った後、いったん帰国する予定。

 『ポントの王ミトリダーテ』は、モーツァルトが 14 歳の時に作曲した。紀元前 1 世紀、小アジアの国ポントの王ミトリダーテをとりまく戦争と人間模様が描かれる。

 繰り返される戦争と復讐の連鎖。宮城さんの演出では、この物語に、第 二次世界大戦末期の日本を重ねる。「死者たちの鎮魂の儀式」として描くことで、希望の光が見える舞台を目指す。

 指揮を務めるのは、世界的に活躍するマルク・ミンコフスキ。歌手陣にはフランスを代表するソプラノのジュリー・ フックスや人気絶頂のカウンターテナー、ヤクブ・オルリンスキら豪華な顔ぶれが並ぶ。

 クリエイティブ・チームとしては、宮城さんとともに 25 年以上共同作業をし、代表作『マハーバーラタ』、『アンティゴネ』、新作歌舞伎『極付印度伝 マハーバーラ タ戦記』(2017 年歌舞伎座)、オペラ『ルサルカ』(2017 年日生劇場)などを手掛けた木津潤平さん(空間構成)、高橋佳代さん(衣裳)らが参加する。

 仏アヴィニョン演劇祭(2017 年)、米ニューヨーク(2019 年)での『アンティゴネ』公演など、国内のみならず、世界的にも高く評価される宮城さんの新たな挑戦となる。

オペラ 『ポントの王ミトリターデ』
ベルリン国立歌劇場 バロックターゲ 2020(バロック週間)

  • 日時(現地時間) : 2020年11月13日(金)18:00、17日(火)19:00、19日(木)19:00、22日(日)18:00、28日(土)19:00 →変更予定
  • 会場 : ベルリン国立歌劇場(ドイツ)
  • 上演言語 : イタリア語上演(英語およびドイツ語字幕)
  • 作曲 : ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
  • 台本 : ヴィットーリオ・アマデオ・チーニャ=サンティ(ジャン・ラシーヌの悲劇による)
  • 指揮 : マルク・ミンコフスキ
  • 演出 : 宮城聰
  • 空間構成 : 木津潤平
  • 美術 : 深沢襟
  • 衣裳 : 高橋佳代
  • 照明 : Irene Selka
  • 振付 : 太田垣悠
  • ドラマトゥルク : Detlef Giese
  • 演奏 : グルノーブル・ルーヴル宮音楽隊

あらすじ

 紀元前60年頃、黒海沿岸のポントス(ポント)の王ミトリダーテは、ローマ軍との戦いに出陣するに際に、若い許嫁のアスパージャを2人の息子に託し、自分が戦死したと嘘の報告を流して息子達のアスパージャに対する態度を知ろうとする。

 かねてからアスパージャに思いを寄せていた長男ファルナーチェは、強引に彼女に結婚を迫り、彼女を守ろうとする次男シー ファレと対立する。

 シーファレと惹かれ合うアスパージャ、そこへ帰還するミトリダーテ。シーファレは父への忠誠心と愛の間 で苦しむ。

クリエイティブ・チーム


宮城 聰 MIYAGI Satoshi   演出家。SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督。東京大学で小田島雄志、渡邊守章、日高八郎から演劇論を学び、1990年、ク・ナウカ旗揚げ。国際的な公演活動を展開し、 同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式性を融合させた演出で、国内外から 高い評価を得る。2007年4月、SPAC芸術総監督に就任。自作の上演と並行して、世界各地 から現代社会を鋭く切り取った作品を次々と招聘。「世界を見る窓」としての劇場づくりに力を注いでいる。

 2014年7月、アヴィニョン演劇祭から招聘された『マハーバーラタ』の成功を受け、2017年、『アンティゴネ』をアジア演劇で同演劇祭史上初のオープニング作品として法王庁中庭で上演。他の代表作に、『王女メデイア』『ペール・ギュント』など。2004年、第3回朝日舞台芸術賞受賞。2005年、第2 回アサヒビール芸術賞受賞。平成29年度(第68回)芸術選奨文部科学大臣賞(演劇部門)受賞。2019年4月フランス芸術文化勲章シュヴァリエを受章。

木津 潤平 KIZ Junpei   建築家。東京大学大学院建築学専攻修了。木津潤平建築設計事務所代表。明治大学建築学科兼任講師。アヴィニョ ン演劇祭での宮城聰演出『マハーバーラタ』(2014年 ブルボン石切場)、『アンティゴネ』(2017年 アヴィニョン法王庁中庭)など、 野外や個性的な空間における「場の力」を読み込み、その力を最大限に活用して劇場空間へと再構築。戯曲の世界観を 表現する独特の空間構成スタイルを確立している。

高橋 佳代 TAKAHASHI Kayo  舞台衣裳デザイナー。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン科卒。1998年、舞台衣裳製作会社を退社後、フリーの舞台衣 裳デザイナーとして活動。2004年、有限会社インプレッシブ設立。舞台衣裳をはじめ、ミュージシャンのPVやライブ衣裳、 CM関係の衣裳デザイン製作など手がける。宮城聰演出作品では『王女メデイア』、『マハーバーラタ』、『オセロー』、『アン ティゴネ』などに参加。ハワイ在住。日本とハワイを往復して活動中。

深沢 襟 FUKASAWA Eri  舞台美術家。武蔵野美術大学で舞台美術家・高田一郎、小竹信節に師事する。2006年から、SPACに参加。戯曲、演出の イメージのみならず、立ち回る俳優との関係性から空間を創り上げる舞台美術が特徴。近年は、SPAC以外の舞台へも活動の幅を広げている。SPACでは、『グリム童話~少女と悪魔と風車小屋~』、 『真夏の夜の夢』(演出:宮城聰)な どのほか、『変身』(演出:小野寺修二)、『病は気から』(演出:ノゾエ征爾)などの舞台美術を手がける。

太田垣 悠 OTAGAKI Yu  9歳から、バレエを始め、15歳で渡仏。リヨン国立高等コンセルヴァトワールを卒業後、リヨンオペラ座バレエ団やスイスのグラン・テアトル・ドゥ・ジュネーブで10年以上にわたり幅広い作品を踊る。2016年から、フリーとしてさまざまな振付 家の作品を踊る。フランスのダンス教師国家資格を生かしプロ、アマチュアにコンテンポラリー・ダンスやバレエ を教える。2017年に帰国後、SPAC-ENFANTSプロジェクトで振付アシスタントを務める。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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