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SPOT LIGHT ギャラリーヴァルール(名古屋)で2023年2月21日-3月11日

ギャラリーヴァルール(名古屋) 2023年2月21日〜3月11日

SPOT LIGHT

 2回に分けて企画された現代美術の若手グループ展。PART1では、秋元はづきさん、富永敏博さん、今川理恵さん、中野優さん、片岡美保香さん、丸山ナオトさんが紹介された。

 PART2は、以下の7人が出品している。

及川裕子

及川裕子

 及川裕子さんは1987年、愛知県生まれ。名古屋芸術大学卒業。岐阜県を拠点に制作している。油絵具、オイルパステルを使って、日常の中で出会った印象深い光景の、色彩やイメージなどのエッセンスを虚構と融合させながら描いている。

 自身が惹きつけられた光景と、視覚、記憶、そして世界の不確かさに向き合い、写真の「アレ・ブレ・ボケ」の美学にも似たイメージとして描いている。

加納明香

加納明香

 加納明香さんは1994年、滋賀県生まれ。京都市立芸術大学油画専攻卒業。同大学院修士課程修了。滋賀県で制作している。

 風景を描いているが、風景の絵というより、絵が《風景》になりうるかを探求しているように思える。筆触、色彩の重なり、絵具の物質性があらわな絵画空間には確かな気配があり、その感覚が、現実空間に広がるような臨場感を伴っている。

齋藤里奈

齋藤里奈

 齋藤里奈さんは1999年、大阪府生まれ。2022年、愛知県立芸術大学彫刻専攻卒業、同大学院入学。石膏、蜜蝋、ジェスモナイトを素材に人体彫刻をつくっている。

 斎藤さんは、人体によっていかに現在を問うかを自分に突きつけながら制作している。人体はデフォルメされ、波打ち、あるいは外界に対して溶解しているようである。怖れと不安にさらされ、体が揺らぎ、悲しみ、孤独とともに生きている姿にも見える。

里美穂

里美穂

 里美穂さんは1991年、東京都生まれ。東京芸術大学美術学部卒業、同大学院絵画専攻油画修了。糸の繊細な表情を丁寧に描出している。

 糸は、生き物のように自在に形を変える。集まることがあれば、離れることもある。時に絡み合い、結ばれ、つながり、あるいは、垂れ落ち、なびく。擬人化されたような糸が、象徴的な光景、ドラマのような一場面になって、作者の心象を表している。 

野々村麻里

野々村麻里

 野々村麻里さんは1987年、愛知県豊田市生まれ。愛知県拠点。2010年、名古屋芸術大学卒業。白亜地に油絵具を薄く塗り重ね、ドライフラワーなどを描いている。他に、レース、舞台、描いた花を拭き消したようなイメージもある。

 いずれも空間に消え入りそうな、しみのような質感をあえて好んでいる。朽ちるような絵は、弘法大師空海『性霊集』の「人は亡くなれば、その身は朽ち果てるが、その心はかぐわしき薫りとなって広大無辺の世界へと広がっていく」という言葉と重なる。

文谷有佳里

文谷有佳里

 文谷有佳里さんは1985年、岡山県生まれ。愛知県立芸術大学音楽学部作曲専攻卒業、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。

 多様で繊細な線の重なり、広がりによって、豊かなイメージと空間が生成される。呼吸、体の動きが一体になって引かれた直線が、精緻な構成、パースペクティブとともに、身体性、即興性、パフォーマティブな感覚、疾走感、浮遊感によって、生の痕跡を絵画空間に刻んでいる。

松村かおり

松村かおり

 松村かおりさんは1986年、静岡県生まれ。2009年、愛知県立芸術大学美術学部油画専攻卒業、2011年、同大学院博士前期課程修了。ギャラリーヴァルールで2022年7月5-30日に個展を開いている。

 今回は、鉛筆、クレパス、インクを使ったドローイングである。点と線、形、色彩が連鎖するように紡がれた、いささか紛雑としたイメージで、にぎやかである

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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