記事内に商品プロモーションを含む場合があります

第27回アートフィルム・フェスティバル 2023年10月21日-11月1日に愛知芸術文化センターで開催 オリジナル映像作品最新作31作 清原惟監督『A Window of Memories』も初公開

クリヨウジ『AU FOU! (殺人狂時代)』(カラー版) 1967年

The 27th Art Film Festival

 「第27回アートフィルム・フェスティバル」が2023年10月21日~11月1日、名古屋・栄の愛知芸術文化センター12階アートスペースAで催される。

 特集は、映画作家・クリヨウジ。愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品の最新作となる31作目、清原ゆい監督『A Window of Memories』(2023年)も初公開となる。

 アートフィルム・フェスティバルは、実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、フィクションなど、従来のジャンル区分を越えて、独自の視点からプログラムを構成する映像の特集上映会である。主催は愛知県美術館。入場無料。

特集 映画作家・クリヨウジ

 今回特集するクリヨウジ(2016年、久里洋二からカタカナ表記に変更)は、1928年、福井県鯖江市生まれの漫画家、アニメーション作家。

 デザイナーの柳原良平、イラストレーターの真鍋博とともに結成した「アニメーション三人の会」により、1960年、草月アートセンターで開催した「三人のアニメーション」は、今日、アート・アニメーションと呼ばれる動向の、日本における先駆けと言えるものだった。

 当時一般的だった「漫画映画」が、今、「アニメ」という略語を含めて置き換わってしまった状況を思えば、それがいかに革命的であり、インパクトのあるものであったか、実体験のない者にも想像できるのではないだろうか。

 クリの映像領域における活動はアニメーションに留まるものではない。

 それを象徴的に示すのが 1973年に手掛けた『芸術と生活と意見』シリーズ。前衛的、実験的志向の美術家たちを対象としたアート・ドキュメンタリーで、これも類例のない画期的な仕事である。

クリヨウジ『芸術と生活と意見―合田佐和子』1973年

 クリのアニメーションといえば、まずドローイングを思い浮かるが、ほかにもフィルムに直接傷をつけて描くキネカリグラフィーや、人間や物体をオブジェ的に使ったピクシレーション、ヤン・シュワンクマイエルを想起させるコラージュ等、実に多彩な手法が用いられているのも特徴。

 本特集では、アニメーションの枠組みから一歩踏み出し、映画という観点からクリの仕事を見つめ直す。

 また、『芸術と生活と意見』上映にちなみ、ナム・ジュン・パイクやジョナス・メカスらが手掛けたドキュメンタリー志向の作品も上映する。     

○作品提供:久里実験漫画工房

オリジナル映像作品第31作 清原惟監督『A Window of Memories』初公開

清原惟監督『A Window of Memories』(2023年)
清原惟『A Window of Memories』 2023年

 愛知芸術文化センターでは、開館した1992年から、1年1本のペースで、「身体」をテーマとした実験的な映像作品の委託制作を続けている。

 最新第31作として完成し、今回、初公開されるのが清原惟監督『A Window of Memories』(2023年)である。

 この作品は監督の清原が、人間には父方と母方の双方に祖母が存在することに着目したことが起点となっている。

 2人の祖母にはそれぞれの人生があり、そこで培われていった体験が蓄積されている。彼女ら2人は、多くの人が知る著名人でもなければ、特別な事件や出来事に当事者として関わった訳でもない。いわば市井の人として暮らしてきたが、清原監督はその声に耳を傾け、それらをかけがえのないものとして慈しむように記録してゆく。

 清原惟は、初長編の『わたしたちの家』(2017年)と、これに続く『すべての夜を思いだす』(2023年)の2本が、ともに「ベルリン国際映画祭」に出品され、注目を集める若手映画監督。

 これまでの作品は劇映画の領域に分類されるが、『A Window of Memories』は彼女が初めてドキュメンタリーの領域に踏み込んだ作品となる。

 単純な記録としてのドキュメンタリーに留まらず、採取した祖母たちの言葉を2人の俳優に、演劇のリーディングを思わせるアプローチで朗読させてもいる。そして、この作品はこの2つの領域をたゆたうように、自在に行き来して進行する。

 この作品に合わせ、ジョナス・メカスやビル・ヴィオラらが自身の母親を含む家族を撮った作品も上映する。映像で描く家族という表現の奥深さに触れる機会となるだろう。

アートフィルム・フェスティバル概要

クリヨウジ『芸術と生活と意見―関根伸夫』1973年

会  期:2023年10月21日(土)~11月1日(水)※月曜休館
会  場:愛知芸術文化センター12階アートスペースA
〒461-8525 名古屋市東区東桜 1-13-2
アクセス:地下鉄東山線・名城線「栄」駅下車/名鉄瀬戸線「栄町」駅下車、オアシス21連絡通路利用徒歩3分
主  催:愛知県美術館⇒公式サイト
〒461-8525 名古屋市東区東桜1-13-2 Tel.052-971-5511
定  員:180名
入 場 料:無料
チ ラ シ:ダウンロードは、こちら

クリヨウジ『芸術と生活と意見―荒川修作』1973年

上映スケジュール

10 月 21 日(土)

〈映画作家・クリヨウジ①アニメーションの実験〉
14:00
『ファッション』1960 年、5 分、16mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ
『切手の幻想』1960 年、7 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー 音楽:林光
『人間動物園』1961 年、2 分 11 秒、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー 音楽:武満徹、詩:谷川俊太郎、声:水島弘、岸田今日子
『椅子』1963 年、10 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ 出演:岡本太郎、谷川俊太郎、他
『軌跡』1963 年、8 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー 音楽:八木正生
『アオス』1964 年、9 分 13 秒、35mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ 声:小野洋子、イラスト:井上洋介、アニメーション:古川肇郁、林政道
『フルフル』1967 年、5 分 13 秒、16mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ
『G 線上の悲劇』1969 年、9 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー 音楽:一柳慧
『ポップ』1974 年、3 分、35mm、モノクロ アニメーション:佐々木一恵
計:58 分 37 秒

〈映画作家・クリヨウジ②創造と再創造〉
15:30
『二匹のサンマ』(白黒版)1960 年、22 分、16mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ 音楽:秋山邦晴、詩:谷川俊太郎
『二匹のサンマ』(カラー版)1968 年、13 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー 作詞:山上路夫、作曲:いずみたく、歌:相良直美
『殺人狂時代』(白黒版)1966 年、13 分、35mm(デジタル・ビデオ上映)、モノクロ 音楽:山崎宏
『AU FOU!(殺人狂時代)』(カラー版)1967 年、9 分 32 秒、35mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー
計 57 分 32 秒

◉22 日(日)

〈映画作家・クリヨウジ③アート・ドキュメンタリーの先駆〉
14:00
『芸術と生活と意見』1973 年
「合田佐和子」25 分 21 秒、16mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー
「関根伸夫」26 分 8 秒、16mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー/モノクロ
計 51 分 29 秒

15:15
「荒川修作」29 分 30 秒、16mm(デジタル・ビデオ上映)、カラー/モノクロ
『あなたは何を考えているの?』1967 年、9 分 42 秒、カラー/モノクロ
計 39 分 12 秒
*上映終了後、久里実験漫画工房・吉野ナオコ氏のトークを行います。

23 日(月)休館

24 日(火)

〈映像による人物像〉
17:30
ナム・ジュン・パイク『ジョン・ケージに捧ぐ』1973-76 年、29 分 2 秒、ビデオ、カラー ○
ナム・ジュン・パイク 『リビング・ウィズ・ザ・リビング・シアター』1989 年、28 分 30 秒、
ビデオ、カラー ○
計 57 分 32 秒

19:00
ナム・ジュン・パイク『パイクによるマースによるマース』共作:マース・カニングハム、チャールズ・アトラス、久保田成子 1978 年、28 分 45 秒、ビデオ、カラー ○
ナム・ジュン・パイク 『アランとアレンの不平』共作:久保田成子 1982 年、28 分 33 秒、ビデオ、カラー ○
計 57 分 18 秒

25 日(水)

〈映像による人物像〉
17:30
ジョナス・メカス『ライフ・オブ・ウォーホル』1990 年、35 分、16mm(ビデオ上映)、カラー ○
ジョナス・メカス 『ゼフィーロ・トルナー、あるいはジョージ・マチューナスの人生からの
光景』1992 年、34 分、16mm(ビデオ上映)、カラー ○
計 69 分

19:00
ジョナス・メカス『ジェローム・ノート』1978 年、45 分、16mm(ビデオ上映)、カラー ○
26 日(木)

〈映像による人物像〉

17:30
ジョナス・メカス『ジェローム・ヒルによるカール・ユング博士の記録映像あるいは「賢者の石」』1991 年、29 分、16mm(ビデオ上映)、カラー ○
ジョナス・メカス 『カップ/ソーサー/2 人のダンサー/ラジオ』1983 年、23 分、16mm(ビデオ上映)、カラー 出演:ケネス・キングほか ○
計 52 分

19:00
ビル・ヴィオラ『空っぽの部屋を叩く理由』1983 年、19 分 11 秒、ビデオ、モノクロ ○
ビル・ヴィオラ 『砂漠』1994 年、26 分、ビデオ、カラー ○
計 45 分 11 秒

27 日(金)

〈映像による人物像〉
17:30
長野千秋『O 氏の肖像』1969 年、65 分、16mm(ビデオ上映)、モノクロ ●
19:00
ダニエル・シュミット『KAZUO OHNO』1995 年、14 分、35mm、カラー ★
ダニエル・シュミット 『稽古場の大野一雄』(旧題『ダニエル・シュミット、レナート・ベルタ撮影による未使用フィルム』)1995 年、13 分、ビデオ(オリジナル 16mm)、カラー ●
山城知佳子『創造の発端 -アブダクション/子供-』2015 年、18 分、デジタル・ビデオ、カラー 出演:川口隆夫 ★
計 45 分

28 日(土)
〈アーティストによる、家族の映像〉


14:00
ジョナス・メカス『リトアニアへの旅の追憶』1972 年、87 分、16mm(ビデオ上映)、カラー/モノクロ ○
〈愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品最新第 31 作初公開〉
16:00
清原惟『A Window of Memories』2023 年、67 分、デジタル・ビデオ、カラー 出演:砂子旭子、清原磋智子、小山薫子、坂藤加菜
*上映終了後、清原監督によるトークを行います。

29 日(日)
〈アーティストによる、家族の映像〉

14:00
ジョナス・メカス『「いまだ失われざる楽園」、あるいは「ウーナ 3 歳の年」』1979 年、
90 分、16mm(ビデオ上映)、カラー ○
16:00
ビル・ヴィオラ『ザ・パッシング』1991 年、54 分 15 秒、ビデオ、モノクロ ○

◉30 日(月) 休館

◉31 日(火)
〈アーティストによる、家族の映像〉

16:30
キドラット・タヒミック『竹寺 - モナムール』1988-89 年、60 分、ビデオ、カラー ○
18:00
キドラット・タヒミック『フィリピンふんどし 日本の夏』1998 年、39 分、16mm、カラー ★

◉11 月 1 日(火)
〈映像による人物像〉

18:00
酒井耕+濱口竜介『うたうひと』2013 年、120 分、デジタル・ビデオ、カラー
出演:小野和子 ☆

☆:愛知県美術館蔵
★:愛知県美術館蔵(愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品)
○:アートライブラリー蔵
●:アートライブラリー蔵(大野一雄ビデオライブラリー)

・第26回アートフィルム・フェスティバルは、こちら
第25回アートフィルム・フェスティバルは、こちら
第24回アートフィルム・フェスティバルは、こちら

最新情報をチェックしよう!
>文化とメディア—書くこと、伝えることについて

文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

CTR IMG