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愛知県美術館 第25回アートフィルム・フェスティバル 10月20-31日

The 25th Art Film Festival

 実験映画やビデオ・アート、ドキュメンタリー、フィクションなど従来のジャンルを越えた独自プログラムで構成する映像作品の特集上映会「第25回アートフィルム・フェスティバル」が2021年10月20〜31日、名古屋・栄の愛知芸術文化センター12階アートスペースAで催される。 主催は愛知県美術館。入場無料。

 昨年度、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため開催を見送ったことから、開催は2年ぶりとなる。

  特集テーマは、音声表現の魅力を持つ映画の系譜をたどる「映画の声を聴く」。

特集 映画の声を聴く

章梦奇(ジャン・モンチー)『自画像:47KMのスフィンクス』2017年 
提供:山形国際ドキュメンタリー映画祭

 1895年に誕生した映画は、音声を伴わないサイレントの表現として始まり、1930年代以降、映像と音がシンクロした映画が確立する。

 サイレントだった1920年代に映画が第一の黄金時代を迎えたこともあって、映画ファンの中には、映像に比べて音声をあまり重視しない人もいる。

 そんな中、今回は、ジョナス・メカスの日記映画や、クリス・マルケルのエッセイ・フィルムのように、極めて独特で印象的なナレーションをもつ映像作品を紹介する。

 さらには、鈴木志郎康、キドラット・タヒミック、ジャン=リュック・ゴダール、ストローブ=ユイレらを経て、草野なつかや小森はるか、ミヤギフトシ、章梦奇(ジャン・モンチー)など、近年の注目すべき作家までを取り上げ、音声表現の魅力をもつ映画の系譜をたどる。

サブ・プログラム

小特集1 水谷勇夫の映像世界

野田真吉『水谷勇夫の十界彷徨』(1984年)
制作風景(野田監督は、右から3人目。写真提供:水谷イズル)

 愛知を拠点に活動した画家、水谷勇夫(1922-2005年)は、美術にとどまらず、公演芸術や 映画、民俗学研究など、複数の領域と関わりを持つマルチ・アーティスト的な存在だった。

 2020年、愛知県美術館では「小企画 水谷勇夫と舞踏」展を開催。 水谷勇夫と土方巽、大野一雄らの舞踏家との交流 にフォーカスした。

 日本におけるドキュメンタリー映画のパイオニアの 1人で、『マリン・スノー―石油の起源』(1960年)などの作品で知られる野田真吉(1911-1993年)が監督した『水谷勇夫の十界彷徨』(1984年)に焦点を当てる。

 当時、水谷が試みていた「凍結絵画」の制作過程を記録したこの作品は、映画完成の年に開催された「水谷勇夫展 十界之内 蠅と食卓」(東京・日本画廊)で上映された。

小特集2 出光真子の実験映画とビデオ・アート

出光真子『アニムスPart2』(1982年)

 2019年度に愛知県美術館が『アニムス Part1』『同 Part2』(1982年)を収蔵した出光真子は、日本における先駆的な映像作家で、ビデオ・アーティストの1人としても評価されている。

 実験映画の分野で繊細な感性で光をとらえた美しいフィルム映像が知られるとともに、ビデオ・アートでは画面の中の空間に設置したモ ニター内の映像と登場人物とが相互に関連づけられる独自の「マコ・スタイル」と呼ばれる表現が注目された。

 『AtAnyPlace4 ヨネヤマ・マ マコ「主婦のタンゴ」より』(1978年)などの作品を通じて、出光真子のフィルム映像とビデオ作品を別々のスタイルと捉えるのではなく、相互に関係するものとして探っていく。

上映スケジュール

20日(水)

17:00 「オリジナル映像作品」の声1
森弘治『Case Study』、 田村友一郎『アポロンの背中』、ミヤギフトシ『音と変身/Sounds, Metamorphoses』
19:00 作り手たちの声1
野田真吉『くずれる沼 あるいは 画家・山下菊二』、鈴木志郎康『日没の印象』

21日(木)

16:45 写し出された声1
章梦奇(ジャン・モンチー)『自画像:47KM の窓』
19:00 写し出された声2
章梦奇(ジャン・モンチー)『自画像:47KM のスフィンクス』

22日(金)

15:30 「オリジナル映像作品」の声2
和田淳子『ボディドロップアスファルト』
17:30 作り手たちの声2
ジョナス・メカス『ロスト・ロスト・ロスト』

23日(土)

13:30 写し出された声1 再上映
章梦奇(ジャン・モンチー)『自画像:47KM の窓』
15:45写し出された声2  再上映
章梦奇(ジャン・モンチー)『自画像:47KM のスフィンクス』
17:45 作り手たちの声3
ジャン=リュック・ゴダール 『映画史』
第 1 章=1A「すべての歴史」
第 2 章=1B「ただ一つの歴史」

24日(日)

小特集1 水谷勇夫の映像世界

13:30 野田真吉『水谷勇夫の十界彷徨』
14:30 水谷イズル講演(60分)、『水谷勇夫の十界彷徨』アウトテイク
16:30 「野田真吉監督講演」※1983年の録音テープ

26日(火)

16:15 「オリジナル映像作品」の声3
小森はるか『空に聞く』劇場版
18:00 「オリジナル映像作品」の声4
草野なつか『王国(あるいはその家について)』150分版

27日(水)

16:30大 野一雄の声
『ロングインタビュー』
18:30 大野一雄と慶人の声
ジャンニ・ディ・カプア『Antologia』Part1、Part2

28日(木)

16:00 「オリジナル映像作品」の声5
草野なつか『王国(あるいはその家について)』64 分版
17:30 作り手たちの声4
キドラット・タヒミック『虹のアルバム~僕は怒れる黄色’94』

29日(金)

18:00 小特集2 出光真子の実験映画とビデオ・アート1私的映像の世界」
『おんなのさくひん』、『At Yukigaya 1』、『At Santa Monica 3』、『わたしのアメリカ、あなたのアメリカ』、『父の情景』、『たわむれときまぐれと』、『ざわめきの下で』
19:30 小特集2 出光真子の実験映画とビデオ・アート2「アーティストとのコラボレーション」
『アニムス パート 1』、『アニムス パート 2』、『At Any Place 4 ヨネヤマ・ママコ「主婦のタンゴ」より』、『Someting Within Me』

30日(土)

13:30 小特集2 出光真子の実験映画とビデオ・アート3「ドキュメンタリーへの志向」
『サム、聞いているの?』、『Woman’s House』
15:00 2つの『サン・ソレイユ』1
クリス・マルケル『サン・ソレイユ』

31日(日)

13:30 2つの『サン・ソレイユ』2
クリス・マルケル『サン・ソレイユ』日本語ナレーション版
15:45 声の引用
ストローブ=ユイレ『セザンヌ』、『ルーブル美術館訪問』

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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