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あいちトリエンナーレ開幕 見どころを速報

 「情の時代」をテーマに、あいちトリエンナーレ2019が2019年8月1日、開幕した。10月14日まで、愛知芸術文化センター、名古屋市美術館、豊田市美術館、名古屋市内の四間道・円頓寺エリアなどを会場に多ジャンルの現代芸術が展開される。この記事では、7月31日、酷暑の中催されたプレスツアーとオープニング記者会見の様子をリポートし、見どころを速報する(豊田市美術館会場のリポートは後日掲載。注目作品の紹介・レビュー等も地元メディアとして随時追加する)。

 オープニングの記者会見で、本業がジャーナリストである津田大介芸術監督は、映像や音楽などを含め、ジェンダーバランス(男女アーティスト数の平等性)を確保したトリエンナーレにすると改めて強調。2013年のあいちトリエンナーレ(五十嵐太郎芸術監督)のテーマ「揺れる大地」に倣い、テーマ性にこだわったとし、「情」を感情、情報、情けなど広く解釈してもらいたいとも語った。特に「ジャーナリストが芸術監督になる意味を考え続けた」とし、ジェンダー、差別(東海地方に多い在住ブラジル人などニューカマーの問題を含めて)、これらと表裏一体の表現の自由を主要なテーマに掲げた。実際の展示でも、美術部門では、移民、難民(ディアスポラ)や、ジェンダー、フェミニズムとこれらに関わる差別、テクノロジーを主題に据えた映像、インスタレーションが多く、オーソドックスな国際展としてよくまとまっていた。

 参加アーティストは約90人(組)。音楽プログラムは別途、60プログラムがある。

オープニング記者会見

 31日午後4時過ぎからあった記者会見では、津田芸術監督から「今回の会見は質疑中心にしたい」との挨拶があった後、パフォーミングアーツ部門キュレーターの相馬千秋さんが「美術と違い、パフォーミングアーツは、作品を定着させない役目がある」と強調。具体的には、美術作品と連動する「エクステンション」として、美術作品を出品しているアーティストが自作について語ったり議論を促したりすることで鑑賞者が身体的、集団的な体験をし直す時間を設ける、とした。また、同部門の14作品のうち11作品が新作であることから、まさに愛知で生成変化するものとして作品を発信・共有したいと述べ、「男性中心の価値基準の構造をラジカルな方法で揺さぶりたい」と付け加えた。

 音楽プログラムの大山卓也キュレーターは、音楽プログラム約60のうち現時点では20しか発表されていないと、現状を報告。10月の公演など現在もブッキングしている途中だとした。男女比については、大山キュレーターは音楽においては「(達成は)それほど難しくなかった」とした。津田監督は、暗闇の中でサラウンドシステムを使うなど、サカナクションの実験的な公演も7公演1万5000人分のチケットが完売した、とアピール。日本を代表するタブラ(インドの打楽器)奏者のU-zhaanが朝10時から夜8時まで40日間、タブラを叩き続ける一種の修行を見せる企画もPRした。

 映像プログラムの杉原永純キュレーターは、映画の世界はまだ男性社会で、「男女平等は難しかった(が実現できた)」と発言。女性監督として、東日本大震災の被災地の記憶を記録し続ける小森はるか監督や、数少ない米ハリウッドの女性監督、キャスリン・ビグロー(作品「デトロイト」)に注目してほしいとした。他に、杉原キュレーターや、津田芸術監督からは、地元東海テレビ放送による報道現場密着ドキュメンタリー「さよならテレビ」、ナチスと密接な関係にあったとされ、情報操作やプロパガンダとの関係が問われるレニ・リーフェンシュタールの「民族の祭典」「美の祭典」、愛知県春日井市出身のカンパニー松尾監督の新作なども言及された。

 会場からの質問は、2015年、東京都内で市民による実行委が開いた展覧会をアップデートする形で国際現代美術展の一特集として企画した「表現の不自由展・その後」に集中。なぜ鑑賞者がSNSに写真・動画を投稿するのを禁止にしたのかなどと質問が出された。津田芸術監督は「個人としてはどんどん写真をSNSに上げてほしいが、芸術監督としてイベントの運営管理責任もある。写真だけ切り取られて拡散し、炎上するとまずいので、ジレンマがある。(展覧会なので、それぞれが)実物の作品を見て議論のきっかけにしてほしい」と述べた。

芸文センター会場

表現の不自由展・その後

 国際現代美術展の中に企画され、過去の美術展などでの撤去作品20数点を特集。韓国人彫刻家、キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻が慰安婦を表現した「平和の少女像」などがある。

四間道・円頓寺会場

名古屋市美術館会場

あいちトリエンナーレオープニング記者会見
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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