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ちくさ正文館書店本店(名古屋)が2023年7月31日で閉店 

店舗建物の老朽化と売り上げ減が理由

 充実した人文、芸術系のラインナップで、大学教員や文化芸術関係者らに親しまれた名古屋・千種の「ちくさ正文館書店」本店(名古屋市千種区内山3-28-1)が2023年7月31日で閉店となる。10月ごろに文化関係者がさよならイベントを予定している。

 閉店については最初、ツイッターなとで情報が伝わった。近くにあるミニシアター、名古屋シネマテークの7月28日での閉館が報道されたばかりで、二重の悲報にSNSでは動揺と悲しみが広がっている。その後、 ちくさ正文館書店のWEBサイトでも公式に「店舗閉店のお知らせ」が出た

 店舗建物の老朽化と売り上げ減が主な理由。少子化やインターネット上の学習コンテンツ普及による参考書などの売り上げ減や、専門書籍の販売低迷が原因とみられる。

 文学や歴史、哲学思想、心理学など専門書が多くの棚を占める同書店にとって、知的探求心のある読者層が減少している趨勢も無縁ではない。

 芸術映画やドキュメンタリー、実験映画、アジア映画などを柱としたミニシアターの低迷をはじめ、文学や美術、演劇、映画、現代音楽、古典芸能など、メインカルチャーの支持層が減っている状況とも重なっている。

 外商部は継続されるという。9月からインターネットでの販売を始める予定。

出版を超えた文化芸術の拠点として

 ちくさ正文館といえば、長く店長を務めた古田一晴さんである。1952年、名古屋市生まれ。74年から、本店にアルバイトとして働き始め、大学卒業後の78年に正式入社した。

 50年近いキャリアである。学生時代から映画の自由上映に関わった経験から、名古屋のキーパーソンの1人として、文化芸術活動に関わった。筆者も1990年代からお世話になっている。

 同書店は1961年12月にスタート。古田さんは、書店の基本を2017年に亡くなった、文学好きの創業者・谷口暢宏さんから学び、その後、店長として切り盛りした。

 文学や、哲学、思想、歴史、芸術などの分野の本が多く並び、筆者が学生時代に熱中した演劇や、取材として関わった映画や美術などの本のバリエーションも破格であった。

 筆者が有志で始めた(現在はリタイア)芸術批評誌「REAR」や、写真家でパフォーマーの林裕己さんが発行している小冊子「さくらPAPER」など、自主的な出版活動にも理解があった。

 1979年の「加納光於馬場駿吉・ブックワークとその周辺展」、2015年の岡部昌生さんの展覧会「被爆樹に触れて」など、重要な展覧会の会場としても機能した。

 また、2023年5月、書棚を使って本にまぎれるように長谷川哲さんのアート作品が展示された

 2016年から3年間は、2階スペースに「喫茶モノコト~空き地~」が入り、文芸、アート、芸能など、さまざまなイベントが開催された。

 

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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