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名古屋城を舞台にしたアートプロジェクト「アートサイト名古屋城 2023 想像の復元」2023年11月29日-12月10日に開催

  • 2023年10月19日
  • 2024年4月15日
  • 美術

玉山拓郎 + GROUP、寺内曜子、丸山のどか、山城大督が参加

 名古屋城で2023年11月29日~12月10日、「名古屋城 秋の特別公開」として、4組の現代アーティストが特別史跡を舞台に新作を発表するアートプロジェクト「アートサイト名古屋城 2023 想像の復元」が開催される。

 期間中は、 「史跡・文化財の特別公開」と「アートサイト名古屋城」が楽しめる。

 開幕に先立つ 10月22日(日)17:30時から、 名古屋市中区のFabCafe Nagoyaでプレイベントとして、 「アートサイト名古屋城」 のアーティストとキュレーターによるトークがある。

 歴史、あるいは歴史的遺構は、発見・発掘された断片を専門家たちの知識や想像力で補完し、繋ぎ合わされることで描出され、復元される。

 今秋、名古屋城を舞台にスタートするアートプロジェクト「アートサイト名古屋城」は、戦災で焼失した名古屋城の高精度の復元には、たとえ実測図やガラス乾板写真による記録が残っていても、アートと同様、想像力が不可欠であるという着想で企画された。

 4組の作家らが、名古屋城のこれまでの歴史や、2018年に完成公開を迎えた「本丸御殿」、今なお復元整備が進む「名勝二之丸庭園」に刺激を受け、独自の観点で想像力を働かせることで作品を制作。名古屋城をアートサイトへと変容させる。

見どころ

現代アートと名古屋城が交錯する

 名古屋城の築城にまつわる歴史や、近世城郭御殿の最高傑作といわれている「本丸御殿」を10年かけて復元した軌跡や、日本随一の規模を誇る回遊式大名庭園である「名勝二之丸庭園」の復元に要した調査研究など、名古屋城が長い時間をかけて続けてきた「復元」という創造的な行為からインスピレーションを受けた4組のアーティストが、ここ名古屋城でしか成立しない大胆な屋外アート作品や参加型の作品を展開する。

散策しながら城内をめぐるアート鑑賞

 城内の広範囲にわたってアート作品が点在する。色鮮やかな表情をみせる秋の名古屋城で、散策するようにアートを楽しめる。会期中は開場時間を延長し、夜間の時間帯もアート作品を楽しめる。「名勝二之丸庭園」の紅葉ライトアップや、光をつかった作品にも注目! 作品をより深く体験する参加型のイベントや鑑賞ツアーなども開催する。アートを通じ、新しい名古屋城の姿に出会える。

プロジェクト概要

会期:2023年11月29日(水)~12月10日(日)
会場:名古屋城内の各所(本丸御殿南側、二之丸庭園、茶席、カヤの木ほか)
アーティスト:
玉山拓郎 + GROUP Tamayama Takuro + GROUP
寺内曜子 Terauchi Yoko
丸山のどか Maruyama Nodoka
山城大督 Yamashiro Daisuke
キュレーター:服部浩之 Hattori Hiroyuki

入場料:大人500円 中学生以下無料
・名古屋市内高齢者(敬老手帳持参の方) 100 円
・障害者手帳を提示の方 無料(付き添い2 名まで)
・名古屋城内への入場料で「史跡・文化財の特別公開」「アートサイト名古屋城」を併せて見ることができる。
入場時間:9:00~19:30(閉門 20:00)
観覧時間:10:00~19:30
・17:00 以降一部観覧できない作品がある。
・本丸御殿への入場は9:00 より 19:00(閉門の1時間前)まで。
・天守閣には現在入場できない。

アートサイト名古屋城 プレイベント「想像から創造へ 」

 開幕に先立ち、アーティスト、キュレーターによるトークイベントを開催。プロジェクトのテーマ「想像の復元」をどのように捉え、どのような作品プランを構想中かを聞く。

日時:10月22日(日)17:30~19:00 [17:00 開場・受付]
会場:FabCafe Nagoya(愛知県名古屋市中区丸の内三丁目 6 番 18 号先 RAYARD Hisaya-Odori Park ZONE1
進行:服部浩之
出演:玉山拓郎 井上岳(GROUP)* 寺内曜子 丸山のどか 山城大督
   * オンライン出演予定 
定員:30名(先着順)
参加料:無料(ワンオーダー制)

史跡・文化財の特別公開

本丸御殿夜間特別公開 期間中9:00~19:30(19:00 最終入場)

 名古屋城本丸御殿は、尾張藩主の住居かつ藩の政庁として徳川家康の命によって慶長20(1615)年に建てられた。昭和5(1930)年には、城郭として初めて国宝に指定されたが、残念ながら、昭和20(1645)年の空襲で焼失。現在の本丸御殿は、平成21(2009)年から復元が開始され、10年に及ぶ工期を経て完成した。

 復元にあたっては、江戸時代の文献や昭和戦前期の古写真、実測図などの豊富な資料をもとに、伝統技術を受け継ぐ現代の職人によって、細部にいたるまで忠実な復元がなされた。

 今回は、松・楓・槇・雪持ち椿などの立木による秋冬の美しい風景が描かれた障壁画のある「表書院二之間」へ入室し、間近で障壁画を見ることができる。また、江戸幕府将軍が滞在した上洛殿「上段之間」の北側に設えられた「菊之廊下」を公開。紅白の菊と鮮やかな流水が描かれた金碧の障壁画も公開する。
 
 普段は入ることができない夜の本丸御殿も特別に公開。昼間とは表情が異なる、夜ならではの御殿建築の美しさを楽しむことができる。

二之丸庭園ライトアップ 期間中16:30頃~ 20:00

 名勝二之丸庭園は、尾張藩主の居館及び藩政の中心であった二之丸御殿の北側に造営された日本随一の規模を誇る回遊式大名庭園である。

 当初は、初代藩主徳川義直によって儒教思想を反映した唐風の庭園として造営されたが、文化・文政期(1804~1830年)には、十代藩主徳川斉朝によって大改造され、和風の回遊式庭園へと変貌を遂げた。

 明治期以降には、一部を残して、その姿は失われたが、現在、往時の姿を蘇らせるべく発掘調査や保存整備の取り組みが進められている。

 二之丸庭園は、変化に富んだ地形や豪壮な石組などを特徴とし、点在する築山や茶室、四季を彩る花々や樹木によって変化に富んだ空間が展開する。
 
庭園では「アートサイト名古屋城」の会場として、丸山のどかの作品が広域にわたって展開する予定である。この時期は、ヤマモミジを中心とする紅葉が美しく、ライトアップされた幻想的な空間を楽しめる。

乃木倉庫特別公開 期間中9:00~16:30(16:00最終入場)

 乃木倉庫は、明治初期に陸軍の弾薬庫として建設されたレンガ造りの倉庫で、国の登録有形文化財に登録されている。本丸御殿の障壁画は、名古屋空襲を前にこの倉庫へと避難させられたことにより焼失を免れた。

プロフィールと作品コンセプト

玉山拓郎 + GROUP

 本丸御殿の中庭を掃き掃除する手入れに着想を得て、屋外にて発光する大型インスタレーションを気鋭の建築コレクティブ「GROUP」と制作

玉山拓郎(たまやま・たくろう)
 1990年、岐阜県生まれ。東京都在住。愛知県立芸術大学を経て、2015年に東京藝術大学大学院修了。

 身近にあるイメージを参照して生み出された家具や日用品のようなオブジェクト、室内空間をモチーフに、鮮やかな照明や映像、音響を組み合わせたインスタレーションを制作。空間に対し作品を大胆に介入させることによって、鑑賞者の身体感覚や知覚に揺さぶりをかける。

 近年の主な展覧会に、「Something Black」ANOMALY(2023、東京)、「六本木クロッシング 2022 展:往来オーライ!」森美術館(2022-2023、東京)、「NACT View 01: 玉山拓郎」国立新美術館(2022、東京)、「Anything will slip off / If cut diagonally」ANOMALY(2021)、「開館 25 周年記念コレクション展 VISION Part 1 光について / 光をともして」豊田市美術館(2020、愛知)など。

GROUP(グループ)
 2021年結成。井上岳、大村高広、 齋藤直紀、棗田久美子、赤塚健による建築コレクティブ。

 建築プロジェクトを、異なる専門性をもつ人々が仮設的かつ継続的に共同する場として位置づけ、建築/美術/政治/労働/都市史の相互的な関係性に焦点を当てた活動を展開している。

 主な活動として、設計・施工「新宿ホワイトハウスの庭」(2021、東京)、設計・運営「海老名芸術高速」(2021、神奈川)、企画・編集「ノーツ 第一号 庭」NOTESEDITION(2021)、設計・施工「水屋根」(屋外美術展「のけもの」会場構成)、個展「手入れ/ Repair」WHITEHOUSE(2021、東京)など。「EAST EAST_Tokyo」(2023、東京)では玉山拓郎会場の展示構成を担当した。

寺内曜子(てらうち・ようこ)

 茶席空間から、「私たちは世界の部分しか見ることができない」という前提のものと、全体像や大きなつながりへの想像を喚起するミニマルな作品群を提示

 1954年東京都生まれ。1981 年セント・マーティンズ美術大学彫刻アドバンストコース修了。1979-98年ロンドンで活動後、1998 年に帰国し東京・愛知にて作家活動。現在、愛知県立芸術大学名誉教授。

 「世界は区別のない一つの物」とのコンセプトのもと、表裏、内外など、当たり前と見なされている対立項の解消を素材から必然的に成る形の彫刻で実証したり、人間の知識や見ることの限界を「部分しか見えない」状況のインスタレーションで提示し続けている。

 主な個展に、「寺内曜子 パンゲア」豊田市美術館(2021、愛知)、「スタンディング・ポイント1 寺内曜子」慶應義塾大学アートセンター(2017、東京)、「Yoko Terauchi Air Castle」チゼンヘール・ギャラリー(1994、ロンドン、英国)、「寺内曜子 空中楼閣」かんらん舎(1991、東京)。パブリックコレクションに東京都現代美術館、豊田市美術館、ヘンリー・ムーア・インスティチュート(英国)など、国内外多数。

丸山のどか(まるやま・のどか)

 二之丸庭園にかつてあった営みや情景を時代背景から想像しつつ写し取った状況を別の素材やかたちに変換する彫刻作品を庭園全体に展示

 1992年、新潟県生まれ。愛知県在住。2018年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科美術専攻彫刻領域修了。

 身の回りにある「言葉」や「もの」「風景」を発想の源にし、ベニヤや角材などホームセンターで入手可能な規格サイズの木材を用いて立体化する作品を制作。

 店の看板や内装、ソーラーパネルの立ち並ぶ山間部と道路などの風景は、精巧に立体化されるが、素材となる木材は製材された形をほぼ変えることなく組み合わせれ、淡い色彩で平坦に着色されることで抽象化する。

 現実と虚構が入り混じり、次元の境界が曖昧となる作品によって、みるものと風景との距離感を否応なしに意識させられる。

 近年の主な展覧会に、「資材館」YEBIS ART LABO(2022、愛知)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ 2020」旧・名古屋税関港寮(2020、愛知)、ファン・デ・ナゴヤ 2019「風景をみる/風景にみる」市民ギャラリー矢田(2019、愛知)など。

山城大督(やましろ・だいすけ)

 名古屋城築城以前から存在する樹齢 600年といわれている榧の木(かやのき)に注目し、『香り』をテーマにしたプロジェクト型作品を展開

 1983年、大阪府生まれ。京都府在住。 岐阜県立情報科学芸術アカデミー [IAMAS] (現情報科学芸術大学院大学 [IAMAS] ) を経て、2006 年 京都造形芸術大学(現京都芸術大学)芸術学部卒業。アーティストコレクティヴ Nadegata Instant Party メンバー。

 映像の時間概念を空間やプロジェクトへ応用し、その場でしか体験できない〈時間〉を作品として展開する。近年は映像や音、光、家具を配置する上演型インスタレーションを制作している。

 近年の主な展覧会に、「Homō loquēns 『しゃべるヒト』――ことばの不思議を科学する」国立民族学博物館(2022、大阪)、山城大督展「パラレル・トラベル」高鍋町美術館(2019、宮崎)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ 2017」名古屋港~築地口エリア一帯(2017、愛知)など。

服部浩之 (はっとり・ひろゆき)

 1978年、愛知県生まれ。愛知県在住。建築を学んだのちにアートセンターに勤務し、約10年アーティスト・イン・レジデンスに携わる。

 また、アートスペースを運営し、アートプロジェクトや芸術祭・国際展の企画にも参加。国内外の複数の周縁の土地に暮らした経験から、公共性・コモンズ・横断性などのキーワードに関心をもち、アジアの表現活動を研究して、様々な表現者との協働プロジェクトを展開。

 現在、東京藝術大学大学院准教授。近年の企画に、「ARTS&ROUTES あわいをたどる旅」秋田県立近代美術館(2020)、第 58 回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示「Cosmo-Eggs|宇宙の卵」(2019、イタリア)がある。

関連イベント

寺内曜子「タゴトノツキ 誰毎の月」
 浮世絵師の歌川広重も描いた「田毎の月」に着想を得た参加型プロジェクト。ひとりひとつ器を持ち、水面に月を映す。
日時:11 月 29 日(水)21:00~22:00 * 雨天中止
会場:二之丸広場
定員:20名(参加料 500 円・要事前申込・先着順、申込フォームから)

山城大督「かやのき音楽祭」
 本作品のモチーフでもある樹齢 600 年を超える巨樹「カヤの木」を囲んだ音楽ライブを開催する。開催日時が決まり次第、公式サイトにて発表する。
 第一部では、2012 年より「カヤの木」の樹木医である寺本正保氏をゲストにアーティストを交えたトークセッション。第二部では、2018 年に制作された「名古屋城本丸御殿完成公開スペシャルムービー」の楽曲を制作した音楽家の蓮沼執太氏によるスペシャルライブを、「カヤの木」と秋の夕暮れを背景に実施。
日時|12 月 9 日 ( 土 ) 15:00~17:00
会場|西之丸エリア
第一部 15:00~16:00
トーク・セッション「樹木医から診る名古屋城のカヤの木」
出演:山城大督、寺本正保(岩間造園株式会社 取締役 営業部長、樹木医)
第二部 16:00~17:00
スペシャル・ライブ「Shuta Hasunuma “unpeople + 1 people #06″」
出演:蓮沼執太(音楽家)
音響:listude

寺内曜子作品鑑賞ツアー
 会期中の土日のみ夜間はツアー形式にて案内する。
日時:12 月 2 日(土)、3 日(日)、9日(土)、10 日(日) 各日 17:00~19:00
集合場所:西之丸メイン看板前
定員:15名(先着順・当日受付)

名古屋城総合事務所 TEL 052-231-1700
企画・制作|Twelve Inc.

プロデューサー:野田智子(Twelve Inc.)
キュレーター:服部浩之
コーディネーター:小田鮎子、近藤令子
アシスタントコーディネーター:東美沙季
アートディレクター:中西要介、中澤耕平(STUDIO PT.)
インストーラー:ミラクルファクトリー
照明:山下恵美、長坂有紗 (RYU Inc.)
映像:須賀亮平(Twelve Inc.)
広報:有田泰子

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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