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「AICHI ⇆ONLINE」3月21日 山下敦弘監督『ランブラーズ2』上映 + トーク

  • 2020年11月30日
  • 2021年3月16日
  • その他

(デザイン:三重野龍)

オンライン・アートプロジェクト 「アイチ・オンライン」

 新型コロナウイルスの感染症拡大で、制作や発表の機会を失うなど、創作活動に影響を受けたアー ティストや企画者などが、新作をオンライン配信する愛知県主催のアートプロジェクト「AICHI⇆ONLINE」 が2021年2月1日、スタートした。 3月21日 まで。

 愛知県の文化芸術活動緊急支援金事業、アーティスト等緊急支援事業の一環。 9プ ロジェクトが参加している。

 各プロジェクトの作品は、特設ウェブサイトで公開される。 閲覧は無料。一部の作品やコンテンツは、期間途中からの公開を予定している。

概要

 コロナ禍が続く中、文化芸術の表現者や、制作を支えるさまざまな職能の人々を支援するのが狙い。

 アーティストは、愛知県内の場所や、県がもつ文化的財産に着目した新作を制作。オンライン上で発表する。

 企画・運営を担当するSAAC[Sustainable Arts Activity Cooperative]が、県と関わりの深いアーティスト等を選び、制作・企画を依頼した。幅広い分野のアーティストやクリエイターが関われるよう、 ジャンルの枠にとらわれない方向を目指している。

 ロゴに引用した 「明日はみんなをまっている。泉のようにわいている。らんぷのように点ってる。」は、 愛知県半田市生まれの児童文学作家、新美南吉が1932年、19歳のときに発表した詩「明日」の一節。

 29歳という短い生涯の中で「ごんぎつね」などを創作した南吉の創造への希望を掲げることで、コロナ禍での文化芸術の危機に向き合う現代の作家たちの思いを重ねた。

アーティスト・リレートーク

  3月13日にライブ配信した3時間オンライン・アーティスト・リレートークのアーカイブが3月21日まで公開されている。

各プロジェクトの企画者・アーティスト一覧

※詳細は後述。

  • 監督:山下敦弘 
  • 企画:武部敬俊/LIVERARY
  • 企画:劇団うりんこ/うりんこ劇場
  • 企画:ON READING
  • アーティスト:玉山拓郎
  • アーティスト:西尾佳織/河村美雪
  • 企画:西田雅希、アーティスト:黒川岳
  • 企画:明貫紘子
  • 漫画:三浦よし木

監督:山下敦弘

短編映画『ランブラーズ2』

山下敦弘
『リアリズムの宿』2003年 ©ビターズ・エンド、バップ

 『ランブラーズ2』は、愛知県半田市出身の映画監督、山下敦弘さんの初期の代表作『リアリズムの宿』(2003年)の主人公たちの17年後を描いた短編映画である。JR武豊駅など半田、知多、武豊エリアで撮影。会期中、愛知県内の映画館、文化施設で上映会を行う。

 AICHI⇆ONLINE 山下敦弘 新作短編映画 『ランブラーズ2』上映 + トーク
 「AICHI⇆ONLINE」の最終日に、上映会と山下敦弘監督を招いたトークイベントが開催される。
 『ランブラーズ2』の魅力や、山下監督の映画表現に迫る。

日時:2021年3月21日[日] 19:00 – 20:30
18:45 開場19:00 上映19:30 トーク20:30 終了
会場:愛知芸術文化センター 12F アートスペースA  
※ 申込:不要(参加無料)
出演:山下敦弘(映画監督)
進行:中本真生(SAAC)

[ストーリー]
 共通の友人であり俳優だった加地が亡くなり、監督木下(山本浩司)、脚本家坪井(長塚圭史)、俳優船木(山本剛史)は東京から加地の地元へと向かう。お通夜に参列した三人は、知らない町で居酒屋、スナックとはしごをするも加地の死にどう向き合えばいいのか分からないでいる。翌日、加地の実家に行くことになった三人は妹の順子から、加地宛てに届いたファンレターを渡される。それは韓国の若い女の子から届いた手紙で、亡くなる前に加地が何度も読み返していたらしい。日本でも無名俳優だった加地の死は韓国にいるファンに届くわけもなく、三人は彼女にどうやって伝えるか途方に暮れてしまう。

 山下監督は1976年生まれ。
 監督作品に、『ばかのハコ船』(2003年)、『リアリズム の宿』(2004年)、『リンダ リンダ リンダ』(2005年)、『天然コケッコー』 (2007年)、『松ヶ根乱射事件』(2007年)、『味園 ユニバース』(2015年)、『オーバー・フェンス』 (2016年)など。

企画:武部敬俊/LIVERARY

ライブ&アーカイブ・プロジェクト
「LIVERARY LIVE RALLY “Extra”—YOUR CITY IS GOOD—」

「EXTRA LIVE #1 〜道/未知との遭遇/So good!〜」2018年
© LIVERARYMAGAZINE

出演:Ogawa & Tokoro、Campanella、テライショウタ from Gofish、SOSOS CLUB(村上ゴンゾ+藤原草
太朗)、Sunbemo、THE ACT WE ACT、ALKDO、 YNG JOE$ with abentis、NEI、C.O.S.A.、STUTS
会場:バナナレコード大須店、長者町コットンビル(LIVERARY)、DIAMOND HALL、club JBʼS
映像ディレクション:大石規湖

 新型コロナウイルス感染拡大の不安が世界を包む2020年12月26日、名古屋市内のレコードショップ、オルタナティブスペース、ライブハウス、ナイトクラブの4会場で、順次開催された音楽ライブを、複数の視点でアーカイブした映像作品である。
 愛知県在住・出身のミュージシャンが世代を超え、ジャンルレスに集結した。それぞれに厳戒態勢の感染防止対策を講じながら、ライブを敢行。その様子を、映像作家・大石規湖擁する撮影クルーをはじめ、観客らも撮影者となり、さまざまなアングルで捉えた。当日参加したミュージシャンや観客、会場スタッフへのインタビュー、会場周辺の街の様子なども織り交ぜ、「音楽」「まち」「ひと」による複層的な記録映像に仕上げた。

 企画者の武部敬俊さんは1983 年生まれのフリーランスの編集者。 2013年から、Webマガジン『LIVERARY』を仲間と始めた。
 一方、映像制作の大石規湖さんはフリーランスの映像作家。2017年、 初の長編映画「MOTHER FUCKER」を公開。2020年10月、劇場公開第2作となる the 原爆オナニーズのドキュメンタリー映画『JUST ANOTHER』 が公開された。

企画:劇団うりんこ/うりんこ劇場

映像プロジェクト「ベイビーシアター『MARIMO』」

劇団うりんこ
うりんこ劇場がもっとも小さな観客に贈る舞台「ベイビーシアター『MARIMO』」
撮影:服部義安

出演:朝比奈緑+川原美奈子 映像制作:山田晋平 衣装:藤谷香子 楽曲提供:福島一幸  音響:ノノヤママナコ 照明:福井孝子

 名古屋市を拠点に活動し、児童向けの作品制作や公演事業で知られる。
 2017年、劇団員の朝比奈緑さんと川原美奈子さんが、脳科学者、神経心理学者、演出家、俳優のジャッ キー・E・チャンさんと『MARIMO』(作:うりんこ劇場、演出:ジャッキー・E・チャ ン、主催:日本児童・青少年演劇劇団協同組合)を創作。今回は、この作品を愛知県美術館の展示室などで上演した様子を撮影・編集した。

企画:ON READING

短歌プロジェクト「ここでのこと」

ON READING 短歌プロジェクト『ここでのこと』企画イメージ

短歌:小坂井大輔、惟任將彥、谷川電話、千種創一、辻聡之、寺井奈緒美、戸田響子、野口あや子、山川藍 (五十音順) イラスト:宮崎信恵 

 名古屋市の東山動植物園前の書店・ギャラリー『ON READING』による短歌のプロジェクト。愛知県 にゆかりのある9人の歌人、小坂井大輔、惟任將彥、谷川電話、千種創一、辻聡之、寺井奈緒美、戸田響子、野口あや子、山川藍の各氏が県内のさまざまな場所で短歌を作り、イラストレーターの宮崎信恵さんがイラストを添える。「今、ここ」で生まれる言葉から、日常のリアリティが浮かび上がる。

アーティスト:玉山拓郎

オンライン・インスタレーション『When I was born when I was born』

玉山拓郎
玉山拓郎《Eclipse Dance》2019年
Photo courtesy: Nonaka Hill

VRデザイン:平田尚也

 色鮮やかな色彩空間に、家具や日用品、自作の立体を配し、夢想的なインスタレーションを制作するアーティスト。
 玉山さんにとって初めてとなるオンラインの特性を生かした作品を制作する。現実にない仮想空間として、オンライン・インスタレーション を発表。サムネイルをクリックするとVRツアーが始まる。鑑賞者は会場内を自由に移動しながら、彫刻や映像、インスタレーションを鑑賞できる。
 細部まで緻密に制作されたバーチャルな空間に、実際に存在する作品や場所が混在。視覚と聴覚の情報でしか捉えることがで
きず、簡単には認知できない。虚構と現実が曖昧に揺らぐ空
間の中で、鑑賞者の想像力が拡張されていく。
 玉山さんは、本作品の中で展開したインスタレーションの一部を、2021年夏に個展を開催予定のANOMALY(東京)で再び展示する。
 玉山さんは1990年、岐阜県生まれ。 愛知県立芸術大卒業後、2015 年、東京藝術大大学院修了。近年の主な展覧会に、「開館25周年記念コレクショ ン展 VISION Part 1 光について / 光をとも して」(豊田市美術館、2020 年)など。

アーティスト:西尾佳織/河村美雪

映像プロジェクト『この町に住んでいる絵に会いにいく』

西尾佳織/河村美雪
西尾佳織/河村美雪《この町に住んでいる絵に会いにいく》作品イメージ

 劇団「鳥公園」を主宰する劇作家、演出家の西尾佳織さんと現代美術作家の河村美雪さんによるインタビューと映像のプロジェクト。
 西尾さんが同じ1985年生まれの愛知県内在住の女性らに豊橋市美術博物館の所蔵作品カタログを見せながら、作品への関心を引き出すように質問をしていく。その後、そのインタビューで話題に上がった作品のコレクションに至るまでの経緯を調べ、一緒に豊橋へ。実際の作品を見ながら、アートがどういうものであるのかを考える試みである。
 西尾さんは1985年、東京生まれ。河村さんは、映像や音、言葉など多様なメディアを用い て世界の見え方が変わる瞬間を作り出すアーティスト。

企画:西田雅希 アーティスト:黒川岳

オンサイト&オンライン彫刻プロジェクト『甕々の声』

西田雅希 アーティスト:黒川岳
黒川岳《listening to stone》2016年

 愛知県常滑市で長く生産されてきた大甕は、水甕から音響装置、燃料タンクに至るまで、多種多様な場面で活躍してきた。実
用的役目を終え、街中や資料館で静かに眠るそれらの圧倒的な物量は内部に巨大な空洞をもち、それは、コロナ禍で突如、日常に出現した空洞を想起させる。
  彫刻家の黒川岳さんは、愛知県常滑市の「とこなめ陶の森資料館」所蔵の大甕と土管を、戦前の常滑焼装飾タイルが今なお生きる名古屋市内の「アートラボあいち」に運び込み、大甕や土管の「声」を通じて我々が直面する数々のvoid(空洞)にアプローチするサウンド・インスタレーションをオンサイトとオンラインで展開する。
 展示は、2月26日~3月28日の金土日祝。
 企画者の西田雅希さんはインディペンデント・キュレー ター。あいちトリエンナーレ2016のア シスタント・キュレーターを経て、英国から日本に拠点を移した。現在は、国内外でキュレーションや執筆、リ サーチをしている。
 黒川岳さんは1994年、島根県生まれ。彫刻やパフォーマンス、音楽などの作品を制作している。

企画:明貫紘子

アーカイブ・プロジェクト「浮遊するアーカイブズ倉庫:愛知県のメディア・アート」
オンライン特別展示:岩井俊雄『愛知芸術文化センター シンボル映像』

アーテック
カタログ表紙「第1回名古屋国際ビエンナーレ・ARTEC’89」
編集・発行:中日新聞社、1989年
資料提供:森茂樹、名古屋市美術館

UIデザイン/プログラム:林洋介

 愛知県美術館、愛知芸術文化センターなどに残るメディア・アートの関連資料をリサーチし、デジタル・アーカイブとしてウェブサイトを公開する。
「ARTEC」を中心に1980年代から2000年代までの愛知県内のメディア・アートの動向を追った年表と資料をオンライン上で閲覧でき、今後も継続的に更新されるアーカイブ・プラットフォームである。
 アーカイブサイト上では、1992年の愛知芸術文化センター開館時、日本のメディア・アートを黎明期から牽引し、絵本作家としても活動する岩井俊雄さん(1962年、愛知県生まれ)によって制作された環境映像作品『愛知芸術文化センター シンボル映像』が使われる。
 時報としての機能も持ち、現在も人々が行き交う場所で上映され続けている。コロナ禍においても時を共有する時報として機能する。

 企画者の明貫紘子さんは、NTTイン ターコミュニケーション・センター [ICC]学芸員、inter media art institute Duesseldorf(imai、ドイツ)の客員研究員を経て、現在、石 川県を拠点にインディペンデント・キュレーター兼メディアアート研 究者として活動する。Eizo Workshop(www.eizo.ws)代表。
  UIデザイナー・プログラマーの林洋介さんは2018年、株式会社HAUS(https://h4us.jp)を共同設立。Web開発やインタラクティブな展示物の制作に関わっている

漫画:三浦よし木

読み切り漫画『花をうめる』(原作:新美南吉)

三浦よし木《花をうめる(原作:新美南吉)》より

 新美南吉記念館でのインタビューやリサーチを経て、同郷出身で自身も慣れ親しんできた新美南吉の原作による小説「花をうめる」(1939年)を、漫画として描き下ろし、発表する。
 4,000字ほどの短い小説ながら、原作に描かれている登場人物たちの情緒的な心の動きが、無邪気な遊びを通じたみずみずしい感触として表現されている。
 三浦よし木 さんは1989年、愛知県半田市生まれの漫画家、美術家。25歳のときに講談社の新人賞 「第37回MANGA OPEN」に応募した読みきり作品『僕の変な彼女』が、東村アキコ賞 と編集部賞のダブル受賞した。
 本名の杉浦由梨の名前で美術作品も発表。「も」という文字オブジェの上で24時間生活した記録映像を制作するなど、領域横断的に活動を展開している。 2019年10月17日〜11月4日、 愛知県立芸術大学サテライトギャラリー SA・KURA(名古屋)でのグループ展「昨日とおなじ未来に」に参加した。

企画・運営

企画・運営を担うのは、SAAC[Sustainable Arts Activity Cooperative] 。

プロデューサー:野田智子(Twelve inc.)
メディアプロデューサー:山城大督(Twelve inc.)
プロジェクトマネージャー:石川吉典
コミュニケーションディレクター:柴田直美
ウェブディレクター:中本真生(UNGLOBAL STUDIO KYOTO)

コーディネーター:小林麻衣子 近藤令子 山口麻里菜
編集・翻訳:池田絵里佳
翻訳(「明日」新美南吉):奥村雄樹
広報:有田泰子
ロゴデザイン:三重野龍
ウェブデザイン:中西要介(STUDIO PT.) 根津小春(STUDIO PT.)
ウェブデベロッパー:桐谷典親(FLAM)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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