愛知県美術館で加藤大博さん「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉」(1966年)を紹介 6月27日まで

愛知県美術館2021年度第1期コレクション展の特集展示「document 2021」

 名古屋・栄の愛知県美術館の2021年度第1期コレクション展の特集展示「document 2021」(2021年4月23日〜6月27日)で地元の画家、加藤大博さんの1966年の作品「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉」の2点が展示されている。

 この特集展示の中で、2019年度に愛知県美術館に収蔵された加藤さんの作品は中核的な位置付けを与えられている。

 1996年、中日新聞社で美術記者になったばかりの筆者が最初に書いた展覧会評が加藤さんの個展だった。

 当時、「点によるタマゴ達」シリーズを展示した名古屋・新瑞橋のギャラリーないとう(閉廊)での個展を取材。レビュー記事は中日新聞の夕刊文化欄に掲載された。

 加藤さんは1936年、名古屋市生まれ。1957年、愛知学芸大学(現在の愛知教育大学)美術科卒業。1950年代半ばから活動を続けている。

 加藤さんとは、会えば気軽に話しかけてくださる関係だが、筆者は、タマゴの作品しか見たことがなかったので、今回の収蔵作品を見られたのは、とても良かった。

 タマゴのシリーズは、文字通りタマゴ形を基本的な形態として反復させる作品であり、その連鎖的な集積はオプティカルな効果を生むとともに生命力、復活・再生の象徴でもあった。

「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉」

 今回、展示されたのは、それらの原点ともいうべき「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉エノラ・ゲイ」「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉No.2」(いずれも1966年)である。

 加藤さんにとって、10代のころ、丸木位里、丸木俊(赤松俊子)の「原爆の図」を見たことが大きな制作の拠り所になっている。「墨は流すもの—丸木位里の宇宙— 愛知・一宮市三岸節子記念美術館」「『原爆の図』 (丸木位里・俊)愛知県立芸大が修復へ」も参照。

 加藤さんは、一瞬にして全てを灰燼に帰す原爆を化け物と捉え、そうした戦争の記憶と、そのアンチテーゼともいうべき生命力、復活・再生と向き合ってきた。

 「Y.W.B計画〈ヒロシマ〉」の連作は、黄色みがかった作品で錯視効果が印象深いが、戦争や差別などへの問題意識が如実に表れている。

 今回は、生命力や復活・再生のシンボルである「点によるたまご」のシリーズでも並んでいる。

 この特集では、加藤さんの作品を核として、東松照明、荒木高子、新井卓、福沢一郎、桂ゆき、工藤哲巳、名井萬亀の作品も展示されている。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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