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三重県立美術館で「特集展示 生誕100周年 木下富雄展」2023年10月11日-2024年1月8日に開催

木下富雄 《Face(夜)》 1965年 三重県立美術館蔵

初期から晩年までの作品でその版画芸術の真髄に迫る

 三重県四日市市出身の版画家、木下富雄(1923-2014年)の生誕100周年に合わせた回顧展「特集展示 生誕100周年 木下富雄展」が2023年10月11日〜2024年1月8日、三重県立美術館で開催される。

 木下富雄は、1950年代に棟方志功の木版画が国際的な評価を得たことに触発され、木版画制作を始める。1958年に日本版画協会協会賞を受賞、1960年には国画賞を受賞した。

 海外でも高い評価を受け、ノースウェスト国際版画展でシアトル美術館賞を受賞している。

木下富雄
木下富雄 《Face(童女)》 1960年 三重県立美術館蔵

 突き彫りという技法で刻まれたぎざぎざの線によって生み出される人間の顔が特徴。

 四角、三角、円といった幾何学的な図形にまで還元された顔が画面いっぱいに表される。一見プリミティブな様相を呈する顔には、同時代の社会問題や世相が反映され、人間に対する深い洞察がなされている。

 本展では、初期から晩年までの作品を展示し、その版画芸術の真髄に迫る。

木下富雄
木下富雄 《Love》 1955年 個人蔵

展覧会概要

会  期:2023年10月11日(水)〜2024年1月8日(月・祝)
開館時間:午前9時30分-午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 日:月曜日(ただし2024年1月8日は開館)、年末年始[2023年12月29日(金)〜2024年1月3日(水)]
会  場:常設展示室第2-3室
観 覧 料:一般310(240)円/学生210(160)円/高校生以下無料
*( )内は20名以上の団体割引料金
*この料金で「美術館のコレクション」、柳原義達記念館も見ることができる。
*「宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界2022-23」展[2023年12月10日(日)まで]を見る場合は、企画展チケットが必要。
*障害者手帳等(アプリ含む)のある方および付き添いの方1名は観覧無料。
*教育活動の一環として県内学校(小・中・高・特別支援)および相当施設が来館する場合、引率者も観覧無料(要申請)。
*毎月第3日曜の家庭の日(10月15日、11月19日、12月17日)は団体割引料金で見ることができる。

展覧会のみどころー忘れえぬ「顔」の版画家・木下富雄

初期作品

 木下富雄は版画を制作し始めた当初、ドイツ表現主義の木版画作品に強い影響を受け、身体のパーツを変形させた人物像を荒々しい線で手がけた。

 大きな目や簡潔な線で表された口など、すでに写実的な表現から離れ、単純化に向かう過程が見られる。

 これらに加え、本展では、近年新たに発見された初期作品も見ることができる。

四角い「顔」

木下富雄
木下富雄 《Face(災害)》 1959年 三重県立美術館蔵

 1950年代末になると、人の顔を四角や円といった幾何学的な図形にまで単純化して表す独自のスタイルを確立、多くの顔を生み出していく。

 《Face(災害)》は木下富雄の代表作の一つで、1960年に国画賞を受賞した作品。この作品では、伊勢湾台風の被害を受けた富田(三重県四日市市)の人々の顔が表されている。

 木下富雄は世相を反映した「顔」を作り出した。

〇丸い「顔」

木下富雄
木下富雄 《Face 合掌(2)》 1985年 個人蔵

 一方で、《Face(夜)》のようなどこか憎めないユーモラスな「顔」も手がけている。この作品では、夜空に浮かぶまん丸な満月のような顔が画面に大きく表されている。

 実際に作家自身も「お月さん」と呼んで親しんでいたようである。

 線を幾重にも重ね、円という単純な形で表された素朴な見た目ながら、その顔は見る人の目を惹きつける不思議な魅力を持っている。

関連イベント

講演会

10月14日(土)午後2時〜(90分程度)
「木下富雄 その人と作品」
講師:小原喜夫(版画家・国画会会員)
場所:三重県立美術館講堂              
定員150名/参加費無料

スライドトーク

12月2日(土)午後2時〜(30分程度)
「忘れえぬ「顔」の版画家 木下富雄」
講師:坂本龍太(本展担当学芸員)
場所:三重県立美術館講堂
定員150名/参加費無料

同時開催

「宮城県美術館所蔵 絵本原画の世界2022-23」展:2023年10月7日(土)~12月10日(日)
「Y2project 藤原康博」:2023年11月3日(金・祝)~2024年2月4日(日

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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