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Dear Summer : ジャンフランコ・ザッペティーニ / 平川典俊 / ジョエル・アンドリアノメアリソア スタンディングパイン(名古屋)

STANDING PINE(名古屋) 2021年7月3〜31日

Dear Summer STANDING PINEで7月3-31日

 「Dear Summer」と題し、ギャラリーが個展で紹介してきた3人の代表作や新作を展示している。ジャンフランコ・ザッペティーニさん、平川典俊さん、ジョエル・アンドリアノメアリソアさんである。

 夏をテーマに、すがすがしい展示になっている。

ザッペティーニ

 ザッペティーニ さんは、1939年、イタリア・ジェノヴァ生まれの画家。現在もキアーヴァリで制作を続けている。

 イタリア戦後美術のムーブメント「pittura analitica」(直訳すると、分析絵画)のアーティストの一人で、ドイツ・カッセルでの1977年の「ドクメンタ6」に出品した。

 同じ画廊で2019年に日本での初個展が開かれた。詳細は、そのときのレビュー「ジャンフランコ・ザッペティーニ個展」を参照。

 アクリル絵具を丁寧に重ねた抽象絵画で知られる。印象としては、純粋性、根源性、還元性を志向し、シンプルで統一感のある画面と色彩がとても美しい。

 禅や道教、スーフィズムなどの思想を取り入れ、特定の色彩や金や銀などの象徴性や精神性を追求している。

 青色の画面に精緻な筆触が折り重なる「Misteri 1,01,07,04」や、枯山水の砂紋のように幾重にも円を描いた「CON CENTRO n.77」が展示された。

 いずれも、わずかに使われている金色が、画面全体に緊張感を与え、神秘性を高めている。

平川典俊

 平川典俊さんは1960年、福岡県生まれ。1993年以降、米ニューヨークを拠点に活動している。名古屋では、Gallery HAMで作品を発表していた時期があることから、筆者も作品を見る機会は多くあった。

 写真、映像、ダンス、インスタレーション、パフォーマンスなどを通じて、死や性などのタブー、社会制度や権力、人間意識と文化などをテーマにしてきた。2019年の個展レビュー「平川典俊個展 Seeking a Light」も参照。

 今回は、プリツカー賞を受賞している米国の世界的な建築家、トム・メインとのコラボレーションによって制作された写真作品「Subject」シリーズを展示している。

 シリーズ名「Subject」(主題)には、人間を建築の主題にするという人間性回復の含意がある。トム・メインが主宰する建築設計事務所モーフォシスによるカナダ・トロントの建築物で撮影された。

 作品は、トム・メインの建築空間で男女数人が展開する1場面の写真である。演劇的なシーン、コンテンポラリーダンスの瞬間をとらえたように強調された人物は、エロティックな姿態やぎこちなさ、無表情と相まって異化効果を与える。

 平川さんは、規格化、工業化、効率化の中で人間性が反映されなくなった現代建築のあり方への疑問から、人間が建築の中の主題として見直されるべきというテーマで制作している。

 登場する男女は、非日常的なあり方として建築空間に従属することなく、存在感をあらわにし、その身振りが建築と拮抗したイメージになっている。

ジョエル・アンドリアノメアリソア

 ジョエル・アンドリアノメアリソアさんは1977年、アフリカの島国マダガスカル生まれ。フランス・パリとマダガスカルの首都アンタナナリボを拠点に活躍している。

 ヴェネツィア・ビエンナーレ、シドニー・ビエンナーレなどの国際展にも出品。2020年の個展レビュー「ジョエル・アンドリアノメアリソア個展 STANDING PINE(名古屋)」も参照。また、2022年の新作個展については、こちら

 テキスタイルを素材にした作品を展示。「BLUE TAKE ME TO THE END OF ALL LOVES」は、故郷であるマダガスカルの空を想起させるようなブルーに焦点をあてたインスタレーションである。

 「Sentimental garden」のシリーズは、華やかな柄のテキスタイルを細かい襞状にして立たせた平面作品である。布を変化させることでグラデーションのようなうつろいを生み、繊細な表情をつくっている。布を絵具のように使った絵画といってもいいだろう。

 それは、さまざまな樹々や草花が生い茂る豊かな空間のようである。現実の庭園がさまざまな記憶や感情を掻き立てるように、これらの作品も感覚的、瞑想的である。

 同様に、多様な布を巻きつけるようにした立体作品「Vertigo」は、円柱の断面に色鮮やかな布が同心円状に層をなす。タイトルどおり、眩暈のような感覚へと誘う。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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