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「戦争と女の顔」伏見ミリオン座(名古屋)などで7月15日公開

配給:アット エンタテインメント © Non-Stop Production, LLC, 2019

第72回カンヌ国際映画祭 W受賞 (「ある視点」部門監督賞 / 国際批評家連盟賞)

 2015年にノーベル文学賞を受賞したスヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ(ベラルーシ)のノンフィクション『戦争は女の顔をしていない』を下敷きに、第二次世界大戦後間もない旧ソ連の激動を生き抜く2人の女性を描いた人間ドラマ「戦争と女の顔」が2022年7月15日、名古屋の伏見ミリオン座などで全国公開される。

 戦争による悲劇とその後遺症は、戦友だった2人の元女性兵士の心を深くむしばんだ。極限的な状況下で、苛烈であると同時に繊細な生と性が複雑に絡まりながら、深遠な魂の物語が紡がれる。

 監督は、巨匠アレクサンドル・ソクーロフに学んだカンテミール・バラーゴフ。30歳を過ぎたばかりの新鋭、バラーゴフ監督は、『戦争は女の顔をしていない』に衝撃を受け、この証言集を基に本作を完成させた。

 作品は、2019年の第72回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門監督賞と国際批評家連盟賞を受賞。

 ほかにも、50を超える映画祭で上映され、数々の映画賞を受賞。ロシア国内ではゴールデン・イーグル賞・主演女優賞を受賞した。

 また、第92回アカデミー賞®国際長編映画賞のロシア代表にも選出され、元・米大統領のバラク・オバマが選出する年間ベストにもなった。米映画批評サイトRotten Tomatoesでは93%FRESHと驚異の高評価(2022年3月時点)で世界を席巻した話題作である。

 プロデューサーは、『ラブレス』(2017年)や『裁かれるは善人のみ』(2014年)をはじめ、ハリウッドでも実績のあるウクライナ出身のアレクサンドル・ロドニャンスキー。

 主人公の女性2人の複雑な心理状態を、新人のヴィクトリア・ミロシニチェンコとヴァシリサ・ペレリギナが見事に演じきった。

 原案は、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著、三浦みどり訳『戦争は女の顔をしていない』(岩波現代文庫)。

 また、小梅けいとの単行本コミックスとして、『戦争は女の顔をしていない 1~3』(速水螺旋人監修、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 原作、KADOKAWA)がある。

ストーリー

 第2次世界大戦に女性兵士として従軍したイーヤ(ヴィクトリア・ミロシニチェンコ)は、終戦直後の1945年、荒廃したレニングラード (現サンクトペテルブルク)の街の病院で、PTSDを抱えながら、看護師として働いていた。

 病院には、多くの傷病軍人が収容されていた。凄惨な独ソ戦で街は荒廃。心身ともにボロボロとなった市民は、残骸の中で生と死の戦いの中にあった。

 イーヤはある日、面倒をみていた友人の子どもをPTSDによる発作のせいで死なせてしまう。そんなとき、子どもの本当の母親で戦友でもあるマーシャ(ヴァシリサ・ペレリギナ)が戦地から帰還。彼女もまた、イーヤと同じように心に大きな傷を抱えていた。

 2人は、なんとか自分たちの生活を再建しようとし、苦難の先に希望を見いだすが…。

カンテミール・バラーゴフ監督

 1991年7月28日、ロシアに属するカバルダ・バルカル共和国・ナルチク生まれ。2015年にカバルディーノ・バルカリア国立大学のアレクサンドル・ソクーロフの演出ワーク ショップを卒業。

 在学中に、数々の短編映画やドキュメンタリー映画を制作。国内外のさまざまなイベントに参加した。

 監督デビューとなった『Closeness』(2017年)は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門でプレミア上映され、FIPRESCI賞を受賞。

 長編2作目となる本作『戦争と女の顔』(2019年)も第72回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で上映され、監督賞などを受賞した。

 アカデミー賞国際長編映画賞のロシア代表にも選出。新作に、世界的大ヒットゲーム「The Last of Us」のテレビ・シリーズ版「The Last of Us」の最初のエピソードを監督することが決定している。

製作 アレクサンドル・ロドニャンスキー

 1961年7月2日、ウクラナイ・キーウ(キエフ)生まれ。ロサンゼルスを拠点に活動する、ロシアで最も多作なプロデューサーの一人。

 良質な映画・テレビのコンテンツを国際的に提供する製作会社AR Contentの創設者で、これまでに数多くの作品を手がける。

 代表作にアカデミー賞®外国語映画賞ノミネートの『ラブレス』(2017年)、ゴールデングローブ賞®外国語映画賞受賞・カンヌ国際映画祭脚本賞受賞の『裁かれるは善人のみ』(2014年)、『スターリングラード 史上最大の市街戦』(2013年)、アカデミー賞®外国語映画賞・ゴールデングローブ賞®外国語映画賞ノミネートの『イースト/ウエスト 遙かなる祖国』(1999年)などがある。

 本作もカンヌ国際映画祭で公式上映され、「ある視点」部門で国際映画批評家連盟賞と監督賞を受賞。アカデミー賞®国際長編映画賞ロシア代表に選出されるなど、各国映画祭で上映され、多くの賞を受賞した。

 ハリウッドでは、ロバート・ロドリゲス監督『シン・シティ』(2005年)、『シン・シティ/復讐の女神』(2014年)、メル・ギブソン主演の『マチェーテ・キルズ』(2013年)、ラナ&アンディ・ウォシャウスキー監督&トム・ティクヴァ監督の『クラウド・アトラス』(2012年)などを製作。

 最新作に、『チェルノブイリ1986』(2019年)、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門グランプリ受賞の『Unclenching the Fists』(2021年)、『アンネ・フランクと旅する日記』(2021年)がある。

監督・脚本:カンテミール・バラーゴフ  共同脚本:アレクサンドル・チェレホフ
原案:『戦争は女の顔をしていない』スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ, 三浦みどり 訳(岩波現代文庫) 
製作:アレクサンドル・ロドニャンスキー、セルゲイ・メルクモフ 音楽:エフゲニー・ガルペリン 撮影:クセニア・セレダ
出演:ヴィクトリア・ミロシニチェンコ、ヴァシリサ・ペレリギナ、アンドレイ・ヴァイコフ、イーゴリ・シローコフ
ロシア/ロシア語/2019年/137分/DCP/カラー/字幕翻訳:田沼令子/ロシア語監修:福田和代/PG12 原題:Dylda 英題:Beanpole

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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