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バウハウス100年映画祭 名古屋シネマテーク 1月11日から

 モダニズムの源流として、ドイツ・ヴァイマルに建築、デザイン、グラフィック、工芸、写真などの総合的な造形学校としてバウハウスが設立された1919年から100年を記念する「バウハウス100年映画祭」が2020年1月11〜24日、名古屋・今池の名古屋シネマテークで開かれる。機能性と合理性を重視し、無駄な装飾を排するなど、モダンデザインの礎となった。
 この映画祭では、4プログラムの6本の映画によって、世界に衝撃をもたらした芸術学校の100年史をひも解く。1月11〜13日には、トークイベントも開かれる。また、バウハウス開校100年記念の「きたれ、バウハウス」展が全国巡回中で、高松市美術館 2020年2月8日 ~ 3月22日、静岡県立美術館4月 11 日~ 5月 31 日、東京ステーションギャラリー7月17日~ 9月6日の日程で催される。
 設立は第一次世大戦終戦直後の1919年4月。創設者は、近代建築の巨匠、ヴァルター・グロピウスで、3代目の校長は、もう1人の近代建築の巨匠、ミース・ファン・デル・ローエが務めた。グロピウスは設立の際、「すべての造形活動の最終目標は建築である」と宣言。ジャンルの垣根を取り去り、総合を目指す根本的な姿勢を明らかにした。
 旧来の伝統的なアカデミー教育を否定する画期的な学校だった。グロピウスは、社会から遊離した孤高の芸術家の育成ではなく、科学技術の発展が著しい時代に合致し、社会や芸術の動きを敏感に受容しながら造形活動を進める芸術家の育成を目指し、社会変革の理想を掲げていた。
 当時最先端の芸術家たちを教師として招聘。絵画芸術の革新の先駆者ヴァシリー・カンディンスキー、パウル・クレー、画家で教育理論家のヨハネス・イッテン、構成主義の先鋭的な作家、ラースロー・モホイ=ナジ、舞台芸術の革新者、オスカー・シュレンマーなど気鋭の芸術家が自らの実践と理論をバウハウスでの教育に惜しみなく注ぎこんだ。学生の中から、ヨゼフ・アルバース やヨースト・シュミット、マルセル・ブロイヤー、マックス・ビルのような優れた人材を輩出した。

 ヴァイマルのバウハウスは、市議会の右傾化で1925年にデッサウに移転。グロピウスは、自らの設計でバウハウス・デッサウ校舎、マイスターハウスを建設し、1926年に完成した。20世紀モダニズム建築の白眉の一つとされるバウハウス・デッサウ校舎は国際的な反響を呼び、学校の名を世界に轟かせた。やがて、デッサウ市議会でも右翼勢力が優勢となり、バウハウスの閉鎖を議決。3代目校長のミース・ファン・デル・ローエは、バウハウスを私立学校としてベルリンで継続しようと尽力し、1932年10月、ベルリン・シュテーグリッツの旧電話工場で再開したが、1933年7月に閉鎖を決定した。わずか14年間の活動だっがが、現代につながるモダニズムの基礎と造形教育の規範を作ったバウハウスは、今も世界中の建築やデザインなどに影響を与え続いている。
 プログラムは、以下の通り。

Aプログラム 「バウハウス 原形と神話

 1919年、バウハウスに集った人々の開放感やナチズムに翻弄された歴史を学生たちの証言や作品、アーカイヴ資料で綴る。1999・2009/ドイツ/103分/原題:Bauhaus – Modell und Mythos/監督:ニールス・ボルブリンカー、ケルスティン・シュトゥッテルハイム/出演:ヴァルター・グロピウス、ヴォルフ・ヒルデブラント、ゲルトルート・アルント、フーベルト・ホフマン、ピウス・パール

Bプログラム  「バウハウス・スピリット」

 バウハウスが掲げたテーマは今も世界のテーマであり続けている。スウェーデンの教室も時間割もない学校や、ヴェネチア・ヴィエンナーレ金獅子賞を受賞したアーバン・シンクタンクによる南米スラム街の住宅改善など、現代のプロジェクトに継承されるバウハウスの発想に迫る。2018/ドイツ/52分/原題:Vom Bauen der Zukunft – 100 Jahre Bauhaus/監督:ニールス・ボルブリンカー、トーマス・ティエルシュ/出演:トルステン・ブルーメ、ローザン・ボッシュ、アルフレード・ブリレンブール、シュテファン・コヴァツ、フーベルト・クルンプナー

Bプログラム 「バウハウスの女性たち」 

472166Inventarnummer: Fo-2010/36Künstler: Consemüller, Erich (Bielefeld 1902-1957 Halle/S.)Gegenstand: Marcel Breuer mit seinem “Harem” (Marta Erps-Breuer, Katt Both, Ruth Hollos-Consemüller)Datierung: um 1927Technik: OriginalfotoAbmessungen allgemein: 57 x 82 mmAbmessungen Rahmen / Passepartout: 36,3 x 31,4 x 1,5 cm

グロピウスは「年齢、性別に関係なく、誰もが学ぶ権利を持つ学校」と謳ったが、現実はそう簡単ではなかった。実は男性優位で進められたバウハウスで才能を開花させ、バウハウスの躍進に多大な貢献を果たしたにもかかわらず、影の存在となった女性たちの実像に迫る。2019/ドイツ/44分/原題:Bauhausfrauen/監督:ズザンネ・ラデルホーフ/出演:エリザベス・オットー、テレジア・エンツェンスベルガー、モニカ・シュタードラー、パトリック・レスラー、アーニャ・バウムホーフ、エレーナ・マカロワ

Cプログラム 「ミース・オン・シーン」 

近代建築の巨匠ミース・ファン・デル・ローエ。彼の代表作の1つがモダニズム建築の最高峰と称される「バルセロナ・パビリオン」である。2カ月という短い期間で作り上げられたこの建物が、なぜ今もなお語り継がれる傑作となったのか。当時の記録と現代一流の建築家や学者などの証言で検証する。2018/スペイン/58分/原題:MIES ON SCENE/監督:ペップ・マルティン、シャビ・カンプレシオス/出演:ルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ、フリッツ・ノイマイヤー、エドゥアルド・メンドーサ、バリー・バーグドール、オリオル・ボイーガス

Cプログラム 「ファグス-グロピウスと近代建築の胎動」

 開校前に若き日のグロピウスとアドルフ・マイヤーは、明るく、衛生的で快適な新時代の工場「ファグス靴型工場」をつくり上げた。世界遺産に登録された現在もなお現役のこのガラス張りの工場を、彼らはどのような思いで作ったのか。その足跡を追う。2011/ドイツ/27分/原題:Fagus- Walter Gropius und die Fabrik der Moderne/監督:ニールス・ボルブリンカー/出演:アンネマリー・イエギ、エルンスト・グレーテン、ヴァルター・シャーパー、エピファニオ・ディ・ロレンツォ

Dプログラム 「マックス・ビル─絶対的な視点」

 彫刻、絵画、建築、デザインと幅広く活動したスイス人の卒業生マックス・ビル。バウハウス最後の巨匠とも言われる彼は、全盛期のバウハウスに入学し、第二次大戦後にはバウハウスの理念を受け継ぐウルム造形大学の初代校長を務める。理論と数学に基づくコンクリート・アートを追求する一方、政治活動にも積極的に関与していった生涯に迫る。2008/スイス/94分/原題:Max Bill – das absolute Augenmaß/監督:エーリヒ・シュミット/出演:マックス・ビル、アンゲラ・トーマス、ゴットフリート・ホーネッガー、イニャツィオ・シローネ、ヤコブ・ビル、エルンスト・シャイデッガー

 映画は、当日券1プログラム1700円、前売り2プログラム2600円。

バウハウス
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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