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小森はるか監督「空に聞く」名古屋シネマテークで12月5日から

「空に聞く」 2018年(愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリ ジナル映像作品) © Haruka Komori

 愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品の第27作で、2019年の「あいちトリエンナーレ2019」の映像プログラムでも話題を呼んだ「空に聞く」(小森はるか監督、75分/2018年)が2020年12月5 〜25日、名古屋・今池の名古屋シネマテークで上映される。

 「空に聞く」は、あいちトリエンナーレ2019で、「コンゴ裁判」(ミロ・ラウ監督、105分/2017年)、「Grand Bouquet」(吉開菜央監督、15分/2019年)など、国内外14組15作品の1つとして、映像プログラムで上映された。

 東日本大震災後に各地に設けられた災害FM局のひとつ、岩手県の「陸前高田災害FM」でパーソナリティを務めた阿部裕美さんを追ったドキュメンタリーである。

 陸前高田市で種苗店を営む男性の2年半を描き、高い評価を得た前作「息の跡」(2016年)と並行した時期に撮影され、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品第27作として完成した。

 阿部さんは、地域の人たちの思いに優しく寄り添い、ラジオによって、その声を伝え続けた。カメラは、人々の生活空間や風景、復興に向かう街の変化とともに、震災後を生きる人たちの喪失と希望を映しだす。

 あいちトリエンナーレ映像プログラム初日の2019年9月15日には、愛知芸術文化センター12階、アートスペースAで、小森監督らが参加したアフタートークが催された。

 小森監督は、トークの中で、撮影当時のことを振り返った。大学院にいた2011年ごろは、東京から通いながら撮影。その後、「被災地の変化が激しく、通っているだけでは大事なものを取りこぼす」と、2012年から陸前高田市に移り住んだ。

 阿部さんについては、「自分も両親を津波で亡くしたのに、当事者の語りでなく、街のため、亡くなられた人のためと行動する凛とした姿にひかれた」と発言。カメラは、そんな阿部さんが地域の人たちの記憶や思いに触れ、その声をラジオを通じて届ける日々を親密な距離で撮影している。

 震災後は、誰もかれも心が折れ、コミュニティーがバラバラになる状況。小森監督は、「情報というより、阿部さんが生活音とともに何かを伝えようとしていること、話しかけていることが、聞いている人の支えになっていた」と語った。

 津波で流された街の復興が着々と進み、嵩上げされた土地に新しい街が造成されてゆく様子も描く。

 いろいろな思いが交錯するが、小森監督は説明的なナレーションは入れない。

 映画の終盤で、阿部さんも、津波で壊滅した市街地を嵩上げした土地で、和食「味彩(あじさい)」を再開する。

 「阿部さんは、両親の七回忌を終えて、反対していた嵩上げによるまちづくりを全てではないにしても受け入れる。この街で生きていくんだという阿部さんの気持ちが分かる」。

 小森監督は、この映画によって、賛否やメッセージを表明するのではなく、陸前高田の人々を見続け、声を聞き続けることで、人々の割り切れない感情を含め、そのままに丁寧に記録した。

 小森監督は、震災の忘却に静かに抵抗する自身の映画スタイルを貫いているのである。

小森はるか
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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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