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「幻の愛知県博物館」展 愛知県美術館で2023年6月30日-8月27日に開催

大阪造幣局《丸八文様鯱環付真形釜》1969(昭和 44)年、名古屋城

総合的な産業技術博物館としての明治の愛知県博物館

 明治時代から昭和の初めにかけて存在した「愛知県博物館」を通じて、当時の時代背景や博物館のあり方を考える「幻の愛知県博物館」展が2023年6月30日〜8月27日、愛知県美術館で開催される。

 現在、愛知県には、県立の総合博物館は存在しないが、明治時代には、1878(明治11)年、県が民間からの寄附金を集めて建設した博物館があり、5年後の1883(明治16)年には県に移管され「愛知県博物館」となった。

 貴重な古来の文物から、味噌や醤油、酒、木材、織物、陶磁器、絵画、機械、動植物など、国内外のあらゆる物産を収集。人々の知識を増やし、技術の発展を促すことを目的としていた。

昇斎一景《東京名所三十六戯撰 元昌平坂博覧会》1872(明治 5)年、一般財団法人名古屋城振興協会

 まだ博物館をどんな施設にすべきか、方向さえ定まらぬ時代。「愛知県博物館」は、先進的な商品見本を展示・販売しながら、県内の産業を刺激しようと、徐々に商品陳列館へと姿を変えていった。

 日本各地に博物館や美術館が建設される中、殖産興業に比重を置いた「愛知県博物館」のような総合的な産業技術博物館は忘れられてしまった。

 本展は、観客を、そんな幻の「愛知県博物館」へと誘う。

絵葉書「名古屋俘虜収容所俘虜製作品展覧会」1919(大正 8)年、名古屋市博物館

展覧会概要

展覧会名:幻の愛知県博物館 Aichi Prefectural Museum That Might Have Been
会  期:2023年6月30日(金)-8月27日(日)[51日間]
開館時間:10:00-18:00 金曜日は 20:00 まで(入館は閉館の30分前まで)
休 館 日:毎週月曜日(7月17日[月・祝]は開館)、7月18日(火)
会  場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階) 〒461-8525 名古屋市東区東桜 1-13-2
チケット:一般 1,000(800)円、高校・大学生800(600)円、中学生以下無料

※( )内は前売券および 20名以上の団体料金
※上記料金で、本展会期中に限りコレクション展も見ることができる
※身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳(愛護手帳)、特定医療費受給者証(指定難病)のいずれかのある方は、各券種の半額で観覧できる。付き添いの方は各種手帳(「第1種」もしくは「1級」)または特定医療費受給者証(指定難病)のある場合、いずれも1名まで各券種の半額で観覧できる。当日会場で各種手帳(ミライロ ID 可)または特定医療費受給者証(指定難病)を提示する。付き添いの方は申し出る
※学生の方は当日会場で学生証を提示

愛知県立明倫中学校付属博物館旧蔵の骨格標本「羚羊ノ頭骨」明治時代中期、学習院中・高等科

展覧会構成

1章 旅する金鯱

 博物館のオープン記念博覧会で来場者を出迎えたのは、「無用の長物」として名古屋城天守から降ろされた金鯱だった。

 世界を旅した金鯱とともに、陸軍省から宮内省、そして名古屋市へと受け継がれ国宝に指定された名古屋城自体の歴史を追いかけながら、激動の時代の文化財と博物館を考える。

2章 幻の愛知県博物館

 1878(明治 11)年に名古屋・大須に誕生した博物館は、5年後に愛知県博物館と改称して県立の博物館となり、その後も愛知県商品陳列館、愛知県商品陳列所、愛知県商工館と、名を変えながら活動を続けた。

 貴重な文物を守り、手本となる商品を世界中から集め、美術家たちに展示場所を提供する、そんな多種多様な博物館活動を、当時の資料を交えながら紹介する。

3章 ものづくり愛知の力

 古代から現在まで無数の産業が生まれ発展してきた愛知県。明治時代から昭和時代初期にかけて愛知県博物館が収集した殖産興業のための資料のほとんどは、戦後引き継がれることなく失われた。

 総合的な産業技術博物館としてありえたかもしれない幻の愛知県博物館の目を通して、弥生時代の木製品から現代の化粧品原料まで、ものづくり愛知の力を見つめ直す。

【重要文化財】朝日遺跡出土木製農具(鋤、鍬先・柄、田下駄)、弥生時代、あいち朝日遺跡ミュージアム

関連イベント

1 記念講演会「愛知県商品陳列館とその時代」

講師:三宅拓也(京都工芸繊維大学助教)
日程:7月22日(土)13:30-15:00
会場:アートスペース A(愛知芸術文化センター12階)
定員:先着90名
※申込不要・聴講無料。開始時刻に会場に集まる

2 スライドトーク(学芸員による展示説明会)

日時:7月8日(土)、7月30日(日)、8月20日(日)各回 11:00-11:40、7月14日(金)18:30-19:10
会場:アートスペース A(愛知芸術文化センター12 階)
定員:各回先着90名
※申込不要・聴講無料。開始時刻に会場に集まる

ウフレヒト(ドイツ)《シュガーボックス》1931(昭和 6)年購入、国立研究開発法人産業技術総合研究所中部センター所蔵 愛知県陶磁美術館管理

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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