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橋を渡す 柄澤健介展 美濃加茂市民ミュージアム(岐阜県)で2025年9月20日-10月19日に開催

柄澤健介

 岐阜県美濃加茂市の美濃加茂市民ミュージアムで2025年9月20日~10月19日、「橋を渡す 柄澤健介展」が開催されている。2025年度の同市民ミュージアム現代美術レジデンスプログラムの一環。

 美濃加茂市民ミュージアムでは開館以来、「芸術と自然」をテーマに現代美術レジデンスプログラムを継続してきた。作家は滞在制作をし、その成果発表として展覧会を開く。

 今回の美術家、柄澤健介さんは1987年、愛知県生まれ。金沢美術工芸大学に進み、2013年、同大学院彫刻専攻を修了。令和3年度豊田文化新人賞受賞。

 2021年にAIN SOPH DISPATCHで2022年にライツギャラリーで個展を開いている。2023年の国際芸術祭地域展開事業「なめらかでないしぐさ 現代美術 in 西尾」では、スケールの大きな作品で評価を高めた。

 基本的な制作スタイルは、クスノキをチェーンソーで彫り込み、パラフィンワックス(蝋)で空間を埋める。

 近年は、木彫を支える鉄の構造体を作り、その構造体も作品に取り込みながら、ダイナミックな作品を展開させている。山の尾根や渓谷、湖などの自然の景観、地勢をテーマとした作品は、精妙かつ壮大な造形性で見る者の想像力をかき立てる。

橋を渡す 2025年

 2021年以降の近作に2025年の新作を加えて、展示している。「なめらかでないしぐさ 現代美術 in 西尾」に出品された大作も再展示した。

 柄澤さんの作品の魅力の一つは、一般に、私たちが山頂、尾根、崖、谷、湖、川、地中、斜面、森、木々などと、人間の分別智で「解釈」しているフィクションを取っ払い、ひとつながりの宇宙として再構築していく造形力である。

 柄澤さんは外から風景を眺めるだけでなく、実際に山の中に入る。その上で、自然を一つの宇宙と捉え、視覚的な認知を超えて、素材や自身との対話プロセスを経て自然を捉え返していく。

 この世界と内なる世界とに向き合い、社会から与えられた「自然」を解体しつつ、新たな風景、新たな地勢を構築する作業と言い換えることもできるだろう。

 柄澤さんは彫る前に精密な設計図を描くことはせず、彫り進めながら素材との対話プロセスの中で形態の細部を決めていく。

 内部が表面としてあらわになり、以前の表面が空間へと変化し、新たな表面の奥には、さらに見えない内部が生まれる。

 そうした細部への弛まぬ作業を反復させながら、それを部分化させないのが作品の魅力につながっている。風景、地勢を一つ一つの部分と捉えず、その奥、向こう側、反対からの視野、より大きな感覚、広がりととして知覚を遊ばせながら、全体性を意識して造形していく。

 近年は、鉄の構造物の存在感が増している。水平方向に延びる鉄のフレームは、「橋」のイメージもあるようだ。

 人間精神によるイメージの補助線を引くことで作品のサイズが大きくなって、ダイナミズムが増している。時に軽やかに、時に重厚にと作品の幅が広がり、以前の作品になかった新たな造形性が生まれ、自然の奥深さが浮かび上がってくる。

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