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三重県立美術館 開館40周年記念 いわさきちひろ展-中谷泰を師として 7月16日-8月28日

いわさきちひろ《指人形で遊ぶ子どもたち》1966 年 ちひろ美術館蔵 転載禁止

―やさしい、まなざし―

 平和を願い、子どもの姿を水彩によるにじみ、ぼかしを駆使して描き続けた画家、いわさきちひろと、師で三重県松阪市出身の画家、中谷泰の作品など約170点を紹介する「いわさきちひろ展-中谷泰を師として」が2022年7月16日~8月28日、津市の三重県立美術館で開催される。

 いわさきちひろが描く明るく、甘く、やわらかな絵画世界は、国や世代、性別など、あらゆるものを超えて広く愛されている。

 絵本画家として歩み始める以前の1940年代前半、ちひろは画家の中谷泰の作品に感化され、油彩画の指導を受けた。

 戦争によって芸術活動が中断を余儀なくされたのち、戦後になって、いわさきちひろは童画家として、中谷泰は洋画家として、活躍の幅を広げた。

 わずか 1 ~ 2 年の師弟関係ながら、交流は生涯を通じて続き、愛すべきものに向けるまなざしのやさしさは、2人のどの作品にもあふれている。

 本展では、これまであまり知られてこなかった2人の交流に触れながら、いわさきちひろの絵本の原画や油彩画、素描等約110点、中谷泰の油彩画、素描等約40点、関連資料約20点を展示する。

展覧会概要

会  期:2022年7月16日[土]〜8月28日[日]
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
休 館 日:毎週月曜日(7月18日は開館)、7月19日[火]
主  催:三重県立美術館 ちひろ美術館 中日新聞社
観 覧 料:一般1,000(800)円 学生800(600)円 高校生以下無料
※( )内は前売および 20 名以上の団体割引料金
※この料金で、2階常設展示室「美術館のコレクション」、柳原義達記念館も見ることができる。
※障害者手帳等(アプリ含む)のある人および付き添いの人1名は観覧無料。
※毎月第3日曜の「家庭の日」(7月17日、8月21日)は団体割引料金で見られる。

いわさきちひろと中谷泰について

いわさきちひろ(1918-1974)

 1918年、福井県武生(現・越前市)に生まれ、東京で育つ。1936年、東京府立第六高等女学校卒業。絵は岡田三郎助、中谷泰、丸木俊に師事。1950年、紙芝居『お母さんの話』を出版、文部大臣賞受賞。同年、松本善明と結婚、翌年、長男猛を出産。絵本などの子どもの本を中心に、新聞、雑誌、カレンダーなどさまざまな印刷メディアに絵を描いた。1974年、肝臓ガンのため、55歳で亡くなる。

中谷泰(1909-1993)

 1909年、三重県松阪市に生まれる。20歳のときに画家を志し上京。川端画学校に学び、1930年の第8回春陽会展で初入選。春陽会を通して出会った木村荘八に師事する。春陽会をはじめとする多くの展覧会に出品、1971年から1977年にかけては東京藝術大学教授を務めるなど、戦前、戦後の洋画界で重要な役割を果たした。1993年、84歳で亡くなる。

展覧会のみどころ

いつか見た、あの絵に会える

 画家として出発する以前の油彩画、素描から、童画家時代の挿絵原画、絵本画家として才能を開花させ新境地を開いた後半期の絵本原画まで、ちひろの作品約110点と資料約20点を一堂に紹介する。

わすれられない、あの子のひとみ

 ちひろが生涯、子どもの姿を描き続けたのは、かけがえのない愛すべき存在だと考えていたから。まっすぐにこちらを見つめる絵の中の子どもたちには、「世界中のこどもみんなに 平和と しあわせを」という願いが込められている。

さらによく知るために

 いわさきちひろの展覧会は全国各地で開催されてきたが、今回は、ちひろが若き日に絵を学んだ三重県松阪市出身の画家、中谷泰との交流に焦点をあてて展覧会を構成する。これまであまり知られてこなかった画家いわさきちひろ像に迫る初めての試みとなる(中谷泰の油彩画、素描等約40点を紹介予定)。

きみにおくる、最高のなつやすみ

 三重県立美術館では、企画展も高校生以下はいつでも無料。夏休み期間に開催される本展は、ふだんあまり美術館に足を運ぶことのない若い世代も来館しやすい。

ちかづいて、よく見て

 水彩絵具を駆使し、にじみやぼかしを使った表現により、独特の色調を生み出したちひろ。加えて、線の美しさもちひろの絵の魅力のひとつである。大胆な線描や繊細な色の変化など、ちひろの絵は近づいて見るほどにその味わいも深みを増していく。展示室で実物と向き合うとき、その美しさに息をのむだろう。

ひらかれていく世界

 アートユニット plaplax(プラプラックス)が、いわさきちひろ作品とのコラボレーションにより制作したメディアアート作品を展示する。画用紙に見立てた白い床の上を鑑賞者が歩くと、足あとのように色のにじみが広がる《絵の具のあしあと》(2018年)と、スクリーンの前に立つと、その部分が映像内に白く浮かび上がって白抜きの技法が体験できる《絵のなかの子どもたち》(2018年)を通して、ちひろの絵画世界を体感できる。

ろびー(ロビー)にもおたのしみ

 展覧会公式図録には、出品作をカラーで掲載。論考、資料等も充実した内容を収録(販売予定価格 1,800 円[税込])している。いわさきちひろのオリジナルグッズなどもロビーの特設ショップで販売する。

イベント

記念講演会「いわさきちひろ 母として 画家として」

講師 松本猛(ちひろ美術館常任顧問 横浜美術大学客員教授)
日時 7月30日[土]午後2時~ *約90分
会場 三重県立美術館地下 1 階講堂
定員 70名
参加無料/要事前申込(申込締切 7月18日[月・祝])

ちひろの水彩技法体験ワークショップ「にじみでうちわをつくろう」

講師 原島恵(ちひろ美術館学芸員)[7月16日分]/三重県立美術館スタッフ[8月11日分]
日時 7月16日[土]①午前 10時30分~②午後1時30分~ 
   8月11日[木・祝]①午前10時30分~②午後1時30分~ *各回約60分
会場 三重県立美術館地下1階美術体験室
対象 小学生以上(小学生は保護者同伴で)
定員 各回10名程度
参加無料/要事前申込(申込締切 7月分は7月3日[日]必着、8月分は7月31日[日]必着)

映画上映会「いわさきちひろ~ 27 歳の旅立ち~」

日時 7月24日[日]①午前10時30分~②午後2時~ *約90分
会場 三重県立美術館地下 1 階講堂
定員 各回70名
参加無料/要事前申込(申込締切 7月10日[日])

各イベントの申込方法

下記いずれかの方法で事前申込が必要。申し込み多数の場合は抽選。
①三重県立美術館ウェブサイトの専用フォーム
②往復はがき 
往信用文面に参加を希望するイベント名と希望日時(ワークショップ/映画上映会)、参加者氏名(1枚につき2名まで)、当日連絡先(電話・メールアドレス)、返信用宛名面に住所と氏名を記入し、同館の「ちひろ展イベント係」まで送付する。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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