2021年香港インディペンデント映画祭 シネマスコーレ(名古屋)で7月31日〜8月6日

香港インディペンデント映画祭

 「2021年香港インディペンデント映画祭」が2021年7月31日〜8月6日、名古屋・シネマスコーレで開催される。日本初公開となる長編5、短編13の計18作品が一挙公開される。

 2014年雨傘運動から、2019-2020年の香港民主化デモまで、香港の政治的状況、社会の変化をリアルに描いてきた香港インディペンデント映画の特集。大阪のシネ・ヌ ーヴォ、京都の出町座での2021年 6月からの開催に続く企画である。

 2014年、香港の高校生、大学生が中心となって、真の普通選挙を求めた雨傘運動。1997年香港返還以後に育った若者たちは、基本法の一国二制度に基づき保証された高度な自治が揺るがされるのを目の当たりにし、香港人としてのアイデンティティを強く意識した。

 2019年、逃亡犯条例改正に端を発したデモが街を埋めた。2020年には、香港国家安全維持法の施行により、民主化活動家に実刑判決が下された。

 香港政府は2021年6月11日、国家安全維持法に基づき、 映画に対する新たな検閲基準の導入を発表。政治的な自由のみならず、表現の自由が一段と狭まる事態が懸念されている。

リム・カーワイ監督(2021年香港インディペンデント映画祭主催) コメント

 2017年、東京、名古屋、大阪の3都市で開催された第1回「香港インディペンデント映画祭」は好評をもちまして 終了となった。本映画祭で、日本初上映された、雨傘運動を描いたドキュメンタリー映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(チャン・ジーウン監督)、北京近郊の芸術村で起きた、政治が芸術家を監視し、追い詰めた事件を描いた 『アウト・オブ・フレーム』(ウィリアム・クォック監督)はそれぞれ山形国際ドキュメンタリー映画祭と福岡アジア 映画祭で作品賞を獲得した。

 映画『乱世備忘 僕らの雨傘運動』は劇場でも公開され、話題を呼んだ。本映画祭では、多種多彩な作品を通じて、2014年に香港でなぜ雨傘運動が起きたのか、直接の政治的な原因以外の間接的な原因とし て、例えば香港人のアイデンティティの形成、返還後中国との関係や日常生活における問題など、様々な要因を提示することで、日本の観客に考えるヒントを提供することになった。

 雨傘運動の5年後の 2019年6月から、誰も予想だにしなかった、雨傘運動よりも大規模で激しい抗争運動が起き、 それは新型コロナウイルスが流行し始める時期まで長期間続いた。そして、コロナ禍の真っ最中、23年目の返還記念日に、なんと中国政府が香港で国家安全維持法の実施を採決し、香港の中国返還で約束された一国二制は事実崩壊したのではないかと世界各国から懸念されることになった。

 本映画祭が開催された 2017 年からコロナ禍が起きるまで、 この数年間の社会と政治状況の激変に対応して、誠実に描く劇映画とドキュメンタリー映画も数多く作られたが、その殆どが映画会社が作った商業映画ではなくて、自主映画だった。映画業界の自己検閲もあって、残念ながら、そういう映画は香港の劇場で一般公開されなかった。2020年のロッテルダム国際映画祭では、香港で上映 されなかった政治的なテーマを持った自主映画の特集が組まれ、国際的にも大きな反響を得た。残念ながらそのよう な映画は日本ではまだ一本も紹介されていない。

 「2021年香港インディペンデント映画祭」は、そのような映画を精選して上映する予定ですが、必ずしも抗争をそのまま描く映画ばかりではなく、雨傘運動の失敗後から 2020年まで香港の若者がいったいなにを考えていたのか、そしてなぜ彼らが死を覚悟しながら、抗争に命懸けで積極的に参加したのか、多種多彩の映画を通じて日本の方々に理解していただく助けになればと考えている。

 今回紹介する映画にはもう一つ特徴がある。それは雨傘運動が起きてから、特に自主映画の分野で突然たくさんの新人女性監督が現れたことだ。 これらの作品を鑑賞していただければ、日本の観客も香港の女性監督の勇気と才能、社会へ関心の深さに感服するだ ろう。

上映作品概要・18 作品(長編5作品・短編 13 作品)

※全作品日本語字幕あり

僕は屈しない

地厚天高》Lost in the fumes 2017年/93min/カラー/広東語/
【監督】ノーラ・ラム 【プロデューサー】ヴィンセント・チュイ

 一般劇場公開されなかったが、2018年から今日まで香港アートセンターの劇場をはじめ、 すでに数百回以上の自主上映が行われ、毎回満席を記録した奇跡のような映画。
 人気の理由に、この映画の主人公、香港本土派の政治活動家エドワード・レオンのカリスマ性があ る。2019年抗争運動のメインスローガン「光復香港、時代革命」が、 2016 年、彼が立法会議員に立候補した際に作った選挙スローガンに由来することからも、その影響力が窺える。
 彼はモンコックで起きたデモ騒動で6年の実刑判決を受けており、この映画はその顛末を描いている。このドキュメンタリーに出演した彼は一時海外に亡命。その後、香港に戻って逮捕され、いまだに服役中だ。

逆さま

《對倒 》Tete-Beche 2017年/78min/劇映画/カラー/広東語/
【監督】ルーサー・ン
【出演】ベン・ユエン、ン・ウィンシー、ニック・ヤン

 雨傘運動が終わり、香港社会が大きな転換期を迎えたにも関わらず、ドキュメンタリー映画以外、このような時代を必死に生きようとする一般の香港人の生活を描く劇映画は殆ど作られていな い。
 この映画は雨傘運動の影響を受けたある家族の物語、すなわち、父はベテランの新聞記者、息子は警察、娘はデモ参加者という矛盾、対立と、崩壊の過程を2014年から2017年までの長いスパンで丁 寧にリアリズム的に描き出した。
 香港映画に欠かせない名優、ベン・ユエン(袁富華)が映画『トレイシー』で香港アカデミー賞助演男優賞を獲得する前に撮影した初主演作 ということでも話題を呼んだ。

逆向誘拐

《逆向誘拐》Napping Kid 2018年/98min/カラー/広東語
【監督】アモス・ウィ
【出演】セシリア・ソー、ン・シウヒン、ディビッド・シウ

 第10回大阪アジアン映画祭に出品された「点対点」のアモス・ウィー監督の長編映画 2作目。原作は 2013年台湾の島田荘司推理小説大賞を受賞。商業映画だけではなく、自主映画にも積極 的に投資、製作、配給を行う製作会社、ゴールデン・シーンはアモス・ウィー監督の「点対 点」に続き、本作もプロデュースした。
 自主映画にも関わらず、香港映画を代表する若手俳優、 ベテラン俳優など豪華キャストが集結。サスペンス映画の形を借りながら、若者の上の世代に対する絶望と反乱がエンタテインメント的に描かれている。

あなたを思う

《看見你便想念你》 I miss you, when I see you 2018 年/93min/カラー/広東語/
【監督】サイモン・チュン

【出演】ジュン・リー、ライアント・マック

 香港を代表するゲイの映画作家、サイモン・チュン監督の最新作。あるゲイカップルが時代に翻弄されながら、お互いの愛を確かめ合うプロセスを感情豊かに描くことに成功し、香港版の『ムーンライト』と絶賛されている。
 テーマ、内容とも政治と関係がないが、ある意味では一番政治的な映画であるといえるメロドラマの傑作。主役を演じたジ ュン・リーはその後『トレイシー』(2018 年東京国際映画祭で上映)で監督デビューを飾り、香港アカデミー賞でも多くの部門でノミネートされた。本作は香港国際映画祭、シアトル国際映画祭、台湾クィア映画祭などに出品された。

理大囲城

《理大圍城》Inside the Red Brick Wall 2020 年/88min/ カラー/広東語
【監督】香港ドキュメンタリー映画工作者

 2019年 11月中旬、香港理工大学で警察と学生との攻防が 11 日間に渡り繰り広げられた。大学キャンパ ス内は惨憺たる戦場と化し、その後、1000人以上の学生が暴動罪で逮捕された。
 この事件は 2019年抗争運動の中で一番スキャンダラスな事件であったが、あまりマスコミに報道 されていない。その真相と過程も未だに明らかにされていないところが多い。観客はこの映 画に映し出された様々な衝撃的な現実を目の当たりにして、驚かざるを得ないだろう。
  将来のキャリアと身の安全を考慮して、本作の監督と製作者たちは匿名としている。香港映画評論学会最優秀映画賞、台北国際ドキュメンタリー映画祭オープニング映画。

2019 年港民主化デモ傑作短編集

100min、ドキュメンタリー映画

 2019年6月中旬から始まった香港民主化デモは今日まで続いている。クライマックスは11月中旬の香港理工大学の攻防戦だが、 それまでにいくつか決定的で、重大な事件もあった。
 以下のドキュメンタリー短編を時系列で見ていくと、マスコミとテレビでは 伝わらなかった、この香港史上最大の民主化デモの一面を知ることができるだろう。

立法会占拠

《佔領立法會》Taking back the Legislature 2019 年/45 分/カラー/広東語
【監督】香港ドキュメンタリー映画工作者

 7月1日、香港返還記念日。市内をデモ隊が行 進する中、台湾のひまわり運動になぞらえ、立法会への突入、占領を呼び掛ける若者たちがいた。冷静に止めようとする大人たちもいる中、若者たちは最終的に突入、占領。香港政治史上未曾有の夜、若者たちは尋常でない恐怖を感じていた。
 これはその緊張感と焦りがよく伝わる貴重な記録映像。台湾アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた。

私たちのやり方

《用自己方式的時代》The Time of Individual 2019/13 分/カラー/広東語
【監督】カナス・リウ

 2019年7月7日、香港の繁華街で、若者が中国大陸からやってきた観光客に「なぜ反中デモを行うか」を平和的手法で伝えようとしていた。

仲間たち

手足》Comrade 2019/15 分/カラー/広東語
【監督】カナス・リウ

 2019年7月28日の香港島西。警察と市民の間で大規模の武力衝突が起きた。警察は無差別に市民を逮捕したが、市民たちは警察に捕まらないよう、互いに助け合った。2020年ベルリン国際映画祭出品作。

試行錯誤

《Trial and Error》 2019/12 分/カラー/広東語
【監督】カナス・リウ

 2019年8月12日、ゼネストを行っても政府が一向に市民の声に耳を傾けない中、デモ隊は香港国際空港を占領するという最後の賭けに出た。警察は強制的に武力撤去を行うと噂されていた。最後まで空港を死守した人々と、引き上げようとした人々。市民らの対立と助け合いが描かれる。

誰も見捨てない

缺一不可》No One Less
【監督】カナス・リウ、サム・ツァン

 2019年9月13日、香港で旧正月の次に重要とされる中秋節の警察拘留所前、集まった無数の若者たちが、逮捕・拘留されたデ モ参加者たちに応援の歌を送る、涙なしで見られない感動作。ちょうど抗争から100日目。逮捕されたデモ参加者延べ1453 人は12歳から 72歳までと幅広い年齢層に及んだ。

「香港、アイラブユー」短編集

《我真係好_鍾意香港》I Love Hong KongSeries 2020/計 118 分

 2019年民主化デモ以後、若手新人監督たちによる香港への強い思いと愛情で作られた劇映画短編集。監督には、映画科の学生や、商業映画の現場で下積みを経験した助監督や制作スタッフらが含まれる。いずれも、彼らこそがこれからの香港映画を担うことになるだろうと思わせる力作だ。

暴動の後、光復の前

《暴動之後,光復之前》After the Riots, Before the Liberation 2020/15 分/カラー/広東語
【監督】イウ・チョンホン

 劇映画でもなくドキュメンタリーでもなく、エッセイ映画という形で香港抗争運動の歴史が語られている。数々のイメージとサウンドのモンタージュは、あたかもゴダールやクリ ス・マルケルが撮ったような美しい詩篇となっている。

尋ね人

尋人事》Missing 2020年/17 分/ カラー/広東語
【監督】ジュ・カーシェン【出演】ロー・ジャンイップ

 父から引き継いだレストランの壁の一角に万遍なく貼られた尋ね人欄。兄妹は最近の出来事によって、行方不明になったり、香港を離れたりした人々の複雑な思いを知る。

ラブレター

《和你寫一封情書》Loves,with Love 2020年/14 分/カラー/広東語
【監督】ジョミン・チャン

 幼なじみの少女が年長の男にラブレターを渡すのを目撃した少年の心の移り変わりを描く珠玉の短編。

初めての夜

《第一晚》Blue Hour 2020年/12 分/カラー/広東語
【監督】サム・イップ

 フードパンダの配達員になった父が初出勤の夜、息子と一緒に食べ物を客に届けにいくと、思 いもよらない出会いがあった。

1944 年の秋

《四四年秋》1944,Days of Fall 2020年/9分/カラー/広東語
【監督】フィッシャー

 1944年秋、日本軍に占領された香港で、英国軍の逃亡を手伝った香港の若者が一人の少女と出会ったことで運命が大きく動きだす。

ホワイトナイト

《天暗亦明》White Night 2020年/21 分/カラー/中国語
【監督】チョウ・キンカン

 ある香港人女子大生が台湾に引っ越した。彼女に興味を持つ隣の台湾人男性が急接近。やがて、彼は彼女の秘密を知ることになる。

町へ出よう

《出去》Going Out 2020年/14分/カラー/広東語
【監督】ジェイソン・イウ

 2019年7月21 日、元朗駅で白服集団無差別襲撃事件が起きた。その夜のある出来事をパ ロディにした映画。

レモン、牛乳

《檸檬,牛奶》Lemon Milk 2020年/15分カラー/広東語
【監督】ワイリー・チャン【出演】ン・ウィンシー、ロー・ジャンイップ

 未来の香港。ある若い女性が保険会社の入社テストを受ける。限られた時間の中、顧客の問題を解決しなければならない。やがて、彼女は目の前の顧客たちが実はアンドロイドだと気付く。

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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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