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アートまるケット 知るもしるもシル 岐阜県美術館で2023年1月17日-3月19日

「知る」をテーマに2組のアーティスト L PACK. と plaplax が参加

 岐阜県美術館で2023年1月17 日~3月19日、「アートまるケット 知るもしるもシル」が開催されている。

 「アートまるケット」は、岐阜の言葉で「まみれる」を意味する「まるけ」と「マーケット」を結び付け、鑑賞者や岐阜を「アートまみれ」にしようとする企画。日比野克彦館長のディレクションで2015年に始まり、8回目となる。

 会場を展示室から庭園へ、さらに公園へと広げてきたが、2019年度はコロナ禍のためオンライン企画へシフトした。

 今回は、岐阜を「知る」をテーマに2組のアーティスト、L PACK.と plaplaxを迎え、展示室と庭園を会場にリアルで実施する。

 L PACK.は、土地にまつわる歴史、文化、民俗や、日々の生活の中で見聞きするあらゆる事象に視線をそそぎ、アート、デザイン、民芸など表現領域にとらわれることなく、自らのプロジェクトが「風景の一部」になることを目指す。

 plaplaxは、空間、映像、岐阜県美術館の所蔵品を組み合わせ、観客参加型=インタラクティブな作品をベースに、「うつわ」という文化的概念を視覚化。体感型の作品を設置する。

 2組のアーティストは1年前の2022年2月から岐阜県内の調査を開始。彼らが提示するハイブリッドな「岐阜のかたち」は、日常の中に存在する「アートの力」を再考する契機となるはずである。

展覧会概要

会 場:岐阜県美術館 展示室2、庭園 (岐阜市宇佐4-1-22)
会 期:2023年1月17日(火)~3月19日(日)10:00~18:00
※企画展開催中の第3金曜日は20:00まで開館
※展示室の入場は閉館30分前まで
休館日:毎週月曜日
観覧料:無料

作品・作家紹介

L PACK. (エルパック)

L PACK. (エルパック)

小田桐 奨 / ODAGIRI Susumu
中嶋 哲矢 / NAKAJIMA Tetsuya
 ともに1984年生まれ。静岡文化芸術大学空間造形学科卒業。2007年に活動を始めた。アート、デザイン、民藝などの思考や技術を横断。最小限の道具と現地の素材を臨機応変に組み合わせた「コーヒーのある風景」をベースに、まちの要素の一部となるプロジェクトを展開する。
 主な活動に「竜宮美術旅館」(横浜/2010-2012年)、「UCO」(アッセンブリッジ・ナゴヤ/2016年他)、「新生活のスイッチ」(ATELIER MUJI/2017年)、「定吉と金兵衛」(フェスティバル/トーキョー/2018年)。「日用品」を扱うショップ・ギャラリー「DAILY SUPPLY SSS」(東京/2017年~)を運営する。

 今回、L PACK.は岐阜県内をリサーチし、作品化する過程で、歴史、文化、民俗、食など幅広い情報を集め、旅日記を執筆・編集した。旅日記は、岐阜県内を調べ歩く旅と宇宙についてのストーリーが交差するように展開する独特のつくりである。

L PACK. (エルパック)

 展示室では、旅で収集した岐阜にまつわるものを、旅日記に即した流れで物語風に展開している。

 普段見過ごしている、あるいは、それ自体では特別な意味をもたいないものが、 L PACK.の鋭敏な感覚によって、ストーリーに組み込まれている。例えば、馬籠宿で見つけた笠はUFOのように展示された。 

L PACK. (エルパック)

 飛騨の妖怪「雪入道」の木工品なども目を引く。屋外の公園には、高山祭の山車や笠をモチーフにした宇宙開発用の探査車やUFOのような立体が設置されている。

 L PACK.が岐阜県内各地で集めた品々は、旅日記のストーリーに合わせた独特の見立てで構成されている。自由な発想や想像力、イメージの連鎖によって展開する展示手法の軽やかさが何よりも魅力である。

 岐阜の伝統や民俗に関わるものが時空を超えて、宇宙やSFの世界に接続するなど、視点のズレの感覚がおかしみを誘う。    

L PACK. (エルパック)

plaplax (プラプラックス)

近森 基 / CHIKAMORI Motoshi
筧 康明 / KAKEHI Yasuak
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 2000年頃から、多分野のクリエイターとコラボレーションを開始。テーマやモチーフの中に潜む物語を掘り下げ、さまざまなメディアを使いながら、インタラクティブな作品をベースに、発見や学び、ワクワクする体験の創造に取り組む。
 主な発表に「Ars Electronica」(アルス・エレクトロニカ・センター他/1997年他)、「文化庁メディア芸術祭」(東京/1998年他)、「Ombres et lumière」(ポンピドゥー・センター/2005年)、「イマジネイチャー」(大垣市スイトピアセンター/2015年)など。“Imaginature”をテーマにメディアアート的な視点・手法で心象自然をスケッチする活動など領域を広げている。

 plaplaxは、 岐阜県内をリサーチする中で「うつわ」の文化的概念に注目。やきものを中心に、岐阜県美術館の収蔵品の中から器を取り上げ、新しい視点で作品化している。

 映像やインタラクティブな要素を盛り込んだ作品を中心に、先入観なく、大人から子供まで楽しめる展示である。 

plaplax (プラプラックス)

 作品を見ていくと、plaplaxが器の形、とりわけ輪郭にフォーカスして作品を展開していることが分かる。

 例えば、会場に訪れた人がカラフルなモールで形をつくり、台上にいくつか開いた穴に差し込むと、ぐるぐると回転する。その様子をカメラがリアルタイムで撮影。映像の中で、回転するモールがろくろで回したような器の形になっていく。 

plaplax (プラプラックス)

 あるいは、スクリーンに向かって手を挙げると、センサーが感知し、両腕の形を輪郭に取り込んだ器のイメージが画面に現れる作品もあった。

 また、別の作品では、陶磁器の破片を選んで、装置の箱に入れると、スキャンし、全体の器の形状を仮想再現したうえで、画面上で類型化してくれる。

plaplax (プラプラックス)

 台に置かれた器の内部に、上から降りてきた小さなライトが入って、器の輪郭の影を展示室の壁に映すインスタレーションも面白かった。鑑賞者が巨大な影に包まれることで、器の内部に入ったような感覚に誘われるのである。

plaplax (プラプラックス)

 さまざまな種類のやきものを、土ではなく、パンケーキで再現し、写真に撮った作品もある。

 陶器の生地の代わりにパンケーキを使い、抹茶、きな粉、黒ごまペーストなどを加えることで、織部や志野、瀬戸黒などにそっくりのパンケーキの出来上がりである。  

plaplax (プラプラックス)

イベント

◆みんなの日記からL PACK.が作品をつくってみる

内 容:L PACK.が集めたみんなの日記を元に公開制作を行います。
日 時:2023年1月29日(日)10:00~16:00 ※作家不在の場合があります。
出 演:L PACK.
会 場:岐阜県美術館 多目的ホール

◆みんなでまぁるく鑑賞会

内 容:みんなで観て、聞いて、触って、話して作品をさまざまな角度から楽しみます。
日 時:2023年2月19日(日)14:00~15:30、2月23日(木・祝) 14:00~15:30
会 場:岐阜県美術館 展示室2、庭園
備 考:参加無料、定員12人

◆アーティストトーク「岐阜をめぐる」

日 時:2023年3月19日(日)13:30~15:00
出 演:L PACK. 、plaplax、日比野克彦館長、担当学芸員齋藤智愛
会 場:岐阜県美術館 多目的ホール
備 考:参加無料、定員50人

※申し込み方法など詳細は岐阜県美術館Webサイトで。

同時開催

◆「開館40周年記念 美術館の名品ってナンヤローネ 岐阜県美術館名品尽くし! 第3部」2023年1月5日(木)~3月19日(日)
「アーティスト・イン・ミュージアム AiM Vol.13 力石咲」
【公開制作】2023年1月21日(土)~2月26日(日)
【作品展示】2023年3月4日(土)~3月12日(日)
◆「第11回 円空大賞展」2023年1月20日(金)~3月5日(日)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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