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岐阜県美術館 アーティスト・イン・ミュージアム AiM Vol.13 力石咲 2023年1月21日-3月12日

アーティスト・イン・ミュージアム

 岐阜県美術館(岐阜市)で2023年1月21日〜3月12日、アーティストの制作活動と作品を公開するアーティスト・イン・ミュージアムの第13弾「AiM Vol.13 力石咲ちからいしさき」が開催されている。

 公開制作は2023年1月21日~2月26日、作品展示は3月4日~12日となる。

 力石咲さんは、「編む」ことをテーマに国内外でアート・プロジェクトに取り組む埼玉県出身の美術家である。

展示レビュー(途中経過)

 人と人、場所と人がつながる、そんなネットワークとしての「編む」活動がコロナ禍で困難になる中、奈良県の山中(吉野町、天川村、曽爾村)で開催する「MIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館」への参加(2020、2021、2022年)をきっかけに、人間にとって欠くことのできない「編む」行為という原点にかえった。

 編むことによって人類は、さまざまな道具を作ってきた。編む行為は、人間が生き延びるための原初的な作業だともいえる。

 編み物は、自在な形状をつくることができる。柔らかいもの、しなやかなものも、逆にある程度、強度のあるものも制作可能。そして、いったん完成させたものをほどき、別の形につくりなおすこともできる。

 今回のレジデンスでは、「編む」行為によるさまざまな実験的な試みが行われている。

力石咲

 美術のデッサンなどに使われる石膏像を、工業用の糸による編み物としてつくる取り組みもその1つ。

 石や金属、木など固い素材を使った、形が不変的な彫刻に対し、素材が柔らかいソフト・スカルプチュアの一種である。ただ、素材も彫刻概念も拡張している現在、こうした分類そのものに意味があるわけではない。

 力石さんの作品の場合、編む行為と、それによって生成される編み物としての立体の性質、つまり、形が変わるという可変性、脆弱で自立しないという不安定性などによって、価値や可能性、物語性、社会との関係の更新が図られている。

 最終日の3月12日には、力石さんがアトリエで制作した作品の糸をゆっくりとほどいていく「解くパフォーマンス」を見せてくれる。

力石咲

 別のタイプの作品に、マジックテープの原理を使った「絵画」がある。これも「編む」作品である。会場には2点が展示されている。

 1つは、月から見た地球のイメージ、もう1つは、力石さんの娘さん(4歳)が描いた絵をトレースしたイメージ。いずれも、マジックテープを貼った支持体に毛糸をくっつけて、イメージをつくっている。

 力石さんの作品が面白いのは、絵具で描くという既存の方法をとるのでもテクノロジーを駆使するのでもなく、あえて、糸という素朴な素材を使い、旧石器時代までさかのぼる「編む」という営為で創作している点である。 

力石咲

 今後のレジデンスでは、工業製品のマジックテープでなく、長良川で採取した砂で自然の〝マジックテープ〟をつくって作品化する方向である。

 筆者が会場を訪れた際は、まだ実験段階だったが、近く、長良川の砂を使った支持体に糸をくっつけた「絵画」が展示されるだろう。

 氷を支持体にした「溶ける絵画」も制作される。糸でつくったイメージを氷の板でサンドイッチにする。氷が溶けるにつれ、イメージが崩れ、やがて、糸がほどけてしまうという実験的作品である。

力石咲

 会場には、試作品の映像記録と、残存物が展示してあった。

 力石さんの作品は、発想がとてもユニークである。編むという原初的な人間の行為から絵画、彫刻を捉え直すのだが、それにとどまらず、「編む」「ほどく(解ける)」という反復、つまりは循環的な視点から環境への問題意識にもつなげているのである。

 それを脱力系というのか、難しいことを言わずに誰もが楽しめるように、ユーモアたっぷりに提示している。最終日のパフォーマンスも期待できそうである。 

力石咲

展覧会概要

会  場:岐阜県美術館 アトリエ(岐阜市宇佐4-1-22)
会  期:【公開制作】2023年1月21日~2月26日【作品展示】3月4日~12日
開館時間:10:00~18:00
夜間開館:企画展開催中の第3金曜日は20:00まで開場
休 館 日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)
※期間中は、アーティストが会場で公開制作をする。状況によってアーティストが不在の場合もある。
料  金:無料
主  催:岐阜県美術館
協  力:大垣化染株式会社、岐阜県毛織工業協同組合、テキスタイルマテリアルセンター

力石咲

 1982年、埼玉県生まれ。2004年、多摩美術大学美術学部情報デザイン学科卒業。編む、ほどくという行為によって、一本の糸が変容していく編み物の特性を人生や自然現象、物事の成 り立ちなどと重ね合わせながら制作している。

 近年の舞台に「吉祥寺ダンスLAB.vol.4 『エコトーン ECHO TONE 』」(吉祥寺シアター、東京/2022年)、展示に「道後オンセナート 2022 」(道後温泉地区、愛媛/2022年)、「宇都宮美術館開館25周年記念 全館コレクション展 これらの時間についての夢展」(宇都宮美術館、栃木/2022年)などがある。

関連プログラム

編む― 解く ワークショップ

内  容: 力石咲さんと一緒に、糸を編んで「かたち」をつくり、解いてみましょう。
日  程: 2023年2月26日(日)10:30~12:00、13:30~15:00(受け付けは各回15分前から)
対  象:どなたでも ※小学2年生以下は保護者同伴
定  員: 各回10名
会  場:岐阜県美術館 アトリエ
料  金:無料
申し込み:要事前申し込み ※受け付け期間2023年1月28日(土)~2月5日(日)
※申し込み多数の場合は抽選。岐阜県美術館webサイトから申し込む

解く パフォーマンス

内容: 力石咲さんが1カ月半にわたってアトリエに構築した作品をゆっくりと解いていきます。
日程:2023年3月12日(日)14:00から60分程度(受け付けは13:45から)
対象:どなたでも ※小学2年生以下は保護者の同伴
定員:40名
会場:岐阜県美術館 アトリエ
料金:無料
申込: 当日先着順

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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