DOMANI plus @愛知 『まなざしのありか』愛知県美術館ギャラリー1月18-23日、港まち1月18日-3月12日

大塚泰子、冨井大裕、長島有里枝、古橋まどか

 現代美術の「DOMANI plus @愛知 『まなざしのありか』」展が2022年1月18日~3月12日、名古屋市内の2カ所で開催される。出展アーティストは、大塚泰子さん、冨井大裕さん、 長島有里枝さん、古橋まどかさんの4人。

 名古屋・栄の愛知県美術館ギャラリー(愛知芸術文化センター)での展示は1月18日~1月23日。港まちエリアの各会場での展示は1月18日~3月12日。

 文化庁による「新進芸術家海外研修制度」(在研)の成果を発表する展覧会として、1998年から毎年、東京で開催されてきた「DOMANI・明日展」を全国5地域に展開する初の試み。

 本年度初めて企画され、全国5会場(水戸、京都、広島、愛知、石巻)での開催が実現した。

 愛知での展示は、国際芸術祭「あいち」組織委員会、文化庁、港まちづくり協議会の共催。

愛知芸術文化センター会場

会期:2022年1月18日(火)~2022年1月23日(日)
時間:10時~18時(1月21日(金)は20時まで)
場所:愛知県美術館ギャラリーJ(名古屋市東区東桜一丁目13-2 愛知芸術文化センター8階)
入場料:無料
出展アーティスト:大塚泰子さん、冨井大裕さん

大塚泰子

  大塚泰子さんは、平面や立体などの作品で空間での色の存在について考えてきた。

 リトグラフ(石版画)の手法やクレパスなどの画材を用いて制作。平面や立体作品によって空間を構成し、かたちのあるものがもつ「色」や「色の存在」そのものの新しい見方を提示する。

 大塚さんが2021年、名古屋のケンジタキギャラリーで開いた個展のタイトルは「one moment blue (瞬間の青)」である。

大塚泰子

 筆者は、この言葉がトーマス・A・クラークという英国の詩人の作品からとられていることを今回初めて知った。

 大塚さんは、この言葉を、車を走らせた高速道路の側壁の隙間から一瞬見えた橋の青色に重ね、2021年の個展に続いて今回も写真作品として出品している。

 大塚さんの展示では、色そのものと、形(物質あるいはレイヤー)、美術作品という3つの視覚的存在が、空間の中で思索されている。

大塚泰子

 小石や木を青色のクレパスで塗り込めた展示は、青色であり、石や直方体の形であり、そして美術作品である。それを見るとは、どういうことなのか。

 単色を塗られたカラフルなキャンバスを床に積み上げた作品がある。本来は壁に掛けるキャンバスが本のように見える。一番上の層の色ははっきり見えるが、各キャンバスの間の色はかすかに見えるのみである。

 色をめぐる、シンプルながら謎めいた感覚が呼び起こされる。

大塚泰子

 冨井大裕さんは、さまざまな既製品の構造や造形を着想の起点に、現代的な彫刻作品を制作してきた。

 既製品や日常の風景を見つめることで、ものがもつ構造や造形を把握し、固定された本来の役割をとらえ直しながら、現代における彫刻の可能性を模索し続ける。

冨井大裕

 今回の作品では、H型鉄材、紙袋、バスケットボール、ほうき、キャスター、木材、ポリカボネート波板、段ボールなどの既製品が使われている。

 既製品をシンプルに組み合わせ、造形化した作品は、ものがまとった日常性を振り払うかのように意味や物語を排除して超然としている。

冨井大裕

 同時に、ものがもつ形の幾何学性や、構成の仕方が彫刻作品の形式性を想起させるように組み立てられている。

 人間が生活と消費社会のためにつくりだした日常の既製品が備える存在性と、モダニズム美術がたどりついた極点が、彫刻の形式性において結びついている。

冨井大裕

 2人の作品は、同じ愛知芸術文化センター内の愛知県美術館で開催されている「ミニマル/コンセプチュアル ドロテ&コンラート・フィッシャーと1960-70年代美術」(2022年1月22日~3月13日)との関係も深い。ぜひ、足を運んでほしい。

冨井大裕

港まち会場

会期:2022年1月18日(火)~2022年3月12日(土)(日曜日、月曜日、祝日休み)
時間:11時~19時
場所:港まちポットラックビル3F(名古屋市港区名港1-19-23)、旧・名古屋税関港寮(名古屋市港区浜2-4-10)
入場料:無料
出展アーティスト:長島有里枝、古橋まどか

長島有里枝

 長島有里枝さんは、 社会で周縁化されがちな人びとや事象にフェミニズム的視座から注目した作品を制作している。

 近年は、写真だけでなく立体、映像、文章の執筆などジャンルを超えて活動している。

長島有里枝

 今回は、誰かが着ていた衣服をつないで作ったテントとタープ、壁に展示した写真で構成されている。

 テントは、長島有里枝さんが東京で母親と制作し、タープは、神戸で長島さんのパートナーの母親とつくった。

 それを名古屋で出合わせるという発想である。

長島有里枝

 2人の高年女性は共に、若い頃、家庭をもつことと引き換えにパリで洋服仕立てを学ぶ夢を諦めた。

 写真は、テントやタープの素材となっている服を提供した家族、女性など、制作過程や日々の暮らしの中で撮影したものであある。

 個や家族、社会と、そこに関わる性別、人種、階級、国などのフレームが感じ取れる空間である。

古橋まどか

 古橋まどかさんは、滞在制作を軸に活動。

 地域、場所、時間特性を反映する彫刻、インスタレーションを手掛ける。

古橋まどか

 形ある物から制作を始め、近年では形のないエネルギーとしての労働や身体に関心を持って制作している。

 コロナ禍の愛知で経験した家族の死、新たな日課となった庭づくりに加え、瀬戸市への来訪などを経て、港まちで取り組む滞在制作(「MAT, Nagoya Studio Project vol.7」)に参加。自然史の延長に身体をとらえる新作を発表している。

古橋まどか

アーティストプロフィール

大塚泰子

文化庁新進芸術家海外研修制度<在研>
現代美術、2009 年度(1 年研修)イギリス/エジンバラ

 1968年、広島県生まれ。多摩美術大学大学院美術研究科絵画専攻版画修了。愛知県を拠点に活動。

 主な近年の展覧会に、「one moment blue(瞬間の青)」(愛知・ケンジタキギャラリー、2021年)、「ミュージアムとの創造的対話 03 – 何が価値を創造するのか?」(鳥取県立博物館(2020)、「アイチアートクロニクル展1919-2019」愛知県美術館(2019)、「Kaya no Soto」Hebel_121,バーゼル,スイス(2019)、「Art Obulist 2017」大府,愛知(2017)など。

冨井大裕

文化庁新進芸術家海外研修制度<在研>
彫刻、2014 年度(1 年研修)アメリカ/ニューヨーク

 1973年、新潟県生まれ。武蔵野美術大学大学院研究科彫刻コース修了。同大学准教授。東京都を拠点に活動。実験スペース「壁ぎわ」、「はしっこ」世話人。

 主な近年の展覧会に、「所蔵作品展『MOMAT コレクション』」(東京国立近代美術館、2021年)、「練馬区立美術館開館 35周年記念 Re construction 再構築」(2020年) 、「 引 込 線 / 放 射 線 Absorption/Radiation」(埼玉県所沢市・第19 北斗ビル、2019年)、「アッセンブリッジ・ナゴヤ 2017」(2017年)、「アーティスト・ファイル 2015」(国立新美術館)など。

⾧島有里枝

文化庁新進芸術家海外研修制度<在研>
写真、1998 年度(1 年研修)アメリカ/カリフォルニア

 1973年東京都生まれ。カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修士課程修了。武蔵大学人文科学研究科博士前期課程修了。東京都を拠点に活動。

 主な近年の展覧会に、「⾧島有里枝×竹村京 まえ と いま」(群馬県立近代美術館、2019年)、個展「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野、2018年)、個展「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)など。

 出版歴に、『「僕ら」の「女の子写真」からわたしたちのガーリーフォトへ』(2020年)、『Self-Portraits』Dashwood Books(2020年)など。

 ゲストキュレーターとして企画した展覧会「ぎこちない会話への対応策—第三波フェミニズムの視点で」(金沢21世紀美術館)が2021年10月16日〜2022年3月13日に開催されている。

古橋まどか

文化庁新進芸術家海外研修制度<在研>
彫刻、写真、インスタレーション、2017 年度(1 年研修)メキシコ/オアハカ、メキシコシティ

 1983年⾧野県生まれ。英国 AA スクールで建築を学び、ロイヤル・カレッジ・オブ・アート大学院芸術学科修士課程を修了。愛知県を拠点に活動。

 主な近年の展覧会に、個展「ナンセンス、無体物、スト的状況」(栃木・板室温泉大黒屋、2019年)、「Narratives of Exchange / Exchange of Narratives」(メキシコシティ・アルンノス財団、2018年)、個展「Body Object Thing Matter」東京・Yutaka Kikutake Gallery、2018年)など。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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