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「藤島武二没後80年 鹿子木孟郎生誕150年 洋画の青春―明治期・三重の若き画家たち」三重県立美術館で2024年1月27日-4月14日に開催

三重にはかつて、近代洋画の〈停車場〉があった

 「藤島武二没後80年 鹿子木孟郎生誕150年 洋画の青春ー明治期・三重の若き画家たち」が2024年1月27日〜4月14日、三重県立美術館で開催される。

 日本で油彩画が普及し始めた明治20年代から30年代、のちに近代美術史に名を遺す藤島武二、鹿子木孟郎、赤松麟作らが図画教師として三重に赴任。それぞれの影響や足跡を残した。

 後年、藤島は東京で、鹿子木は京都で、赤松は大阪でそれぞれ洋画家として活躍。著名な画家として世間に知られることになった。そこには、若き20代に三重という〈停車場〉で培った未来への原動力が脈々と受け継がれていた。

 彼らが三重で過ごした青年期は、日本で油彩画が「洋画」と呼ばれながら根づいていく過程で、活力に満ちた作品が次々と生み出される「洋画の青春」と呼べるような時代だった。

 三重県立美術館は1982(昭和57)年の開館以来、洋画をコレクションの収集方針のひとつに掲げて調査研究し、洋画の展覧会を数多く開催してきた。

 本展では、そんな同館が改めて洋画をテーマに据え、三重にゆかりのある洋画家たちの画業を振り返るとともに、当時の三重の美術状況や美術教育についても紹介する。

展覧会概要

展覧会名:藤島武二没後80年 鹿子木孟郎生誕150年 洋画の青春―明治期・三重の若き画家たち
会  期:2024年1月27日[土]から4月14日[日]まで
開館時間:午前9時30分-午後5時(入館は午後4時30分まで)
休館日 :毎週月曜日(2月12日は開館)、2月13日[火]
観覧料 :一般1,000(800)円 学生800(600)円 高校生以下無料

・( )内は前売および20名以上の団体割引料金
・この料金で 2 階常設展示室「美術館のコレクション」、柳原義達記念館も見ることができる。
・生徒、学生は生徒手帳、学生証等を提示。
・障害者手帳等(アプリ含む)のある人および付き添いの1 名は観覧無料。
・教育活動の一環として県内学校(小・中・高・特支)および相当施設が来館する場合、引率者も観覧無料(要申請)。
・毎月第3日曜の「家庭の日」(2月18日、3月17日)は団体割引料金で観覧できる。
・主な前売券販売所 チケットぴあ、ファミリーマート、セブン – イレブンなど。
主  催:三重県立美術館 朝日新聞社
助  成:公益財団法人岡田文化財団 公益財団法人三重県立美術館協力会
協  力:三重県立津高等学校 三重県立津高等学校同窓会 学校法人高田学苑

見どころ

洋画はどうやって始まった? 明治初期の貴重な教育資料
 本展の導入部では、まず、明治初期の油彩画(洋画)教育の一端を知ることのできる教育資料を紹介する。イタリアから招かれ工部美術学校で講師を務めたアントニオ・フォンタネージ(1818-1882年)がもたらしたモデル人形や、美術学校や画塾で学んだ画家たちによるデッサンなど、美術教育の現場で用いられ、制作された貴重な資料が展示される。

切磋琢磨̶画塾で学んだ若き洋画家たち
 明治初期から中期にかけては、東京を中心に各地に洋画を学ぶ画塾が開設された。工部美術学校で本格的な絵画技術を学んだ者や、ヨーロッパに留学し、本場で西洋絵画の技術や表現を学んだ者たちが、画塾の指導者として後進を育てた。ここで学び技術を身につけた画家たちは、第二世代の洋画家として明治中期以降活躍の幅を広げていく。仲間同士、励まし競い合って洋画を習得していく様相を紹介する。

洋画が三重にやってきた!
 三重県では明治10年代前後から、師範学校や中学校が創立され、学校教育の中で図画の教育も始まった。1893(明治26)年には、藤島武二が三重県尋常中学校の助教諭として津に赴任。藤島以降、鹿子木孟郎や赤松麟作といった、のちに近代美術史上に名を遺す画家たちが次々と図画教師として三重に赴任し、若き日々を津で過ごした。このほかにも、大八木一郎、福原霞外など、これまであまり知られてこなかった画家たちも三重に教員として赴任し、活動した。三重時代を彩る彼らの作品や、三重の人々との交遊を示す資料など、近年の調査の成果もふまえて紹介する。

どぶろく VS ワイン、ふたつの潮流
 1893(明治26)年に、フランスから帰国した黒田清輝は、明るく自由な画風により、若い画家たちからの支持を集めた。また、黒田は東京美術学校に新設される西洋画科の若きリーダーとして力をふるい、黒田のもとに集まった画家たちにより、白馬会という新しい美術グループも生まれた。ちなみに、白馬会の名称は、彼らが親しんだ濁酒どぶろくの俗称「しろうま」にちなんでつけられたという。白馬会は美術界の一大勢力として、明治後半期に活躍した。
 
 一方、旧来のグループに残った画家たちも努力を惜しまず、ヨーロッパに学んで帰国した者も多くいた。その一人、鹿子木孟郎はフランスのアカデミー画家に学び、フランス風の徹底した絵画観を習得。それは、いわば、ワインのように歴史や技術に裏付けられたものだった。やがて、白馬会の画家たちと、鹿子木らが目指す絵画は異なる方向へとそれぞれ進んだ。明治30年代という時代の中でふたつの潮流を追い、照らし合わせて展示する。

東京、京都、大阪―次なる場所への展開
 ともに三重県で図画教員を務めた経験をもつ藤島武二、鹿子木孟郎、赤松麟作は、三重離任後、東京、京都、大阪へと拠点を移し、それぞれの場所で後進を育てる教育者としても活躍した。本展では、彼ら三人に学んだ洋画家たちとその作品を、三重県立美術館が所蔵する豊富な近代洋画コレクションの中から選び展示し、その後の展開として紹介する。

関連プログラム

記念講演会「《津の停車場(春子)》から始まったー明治洋画研究の「青春」ー」
講師:児島薫(実践女子大学文学部美学美術史学科教授)
日時:2024年3月3日[日]午後2時から3時30分まで
会場:三重県立美術館地下 1 階講堂
定員:150名 参加費無料、当日先着順(1時30分開場)

ウォーキング「春分の日・津のまち歩き」
本展で紹介する洋画家たちゆかりの場所を歩いて巡る。
案内人:原舞子(三重県立美術館学芸員)
日 時:3 月 20 日[水・祝]午後 1 時 30 分から午後 3 時 30 分まで *少雨決行
集合 近鉄「津新町」駅 / 解散 津偕楽公園周辺
定 員:15名 参加費無料、事前申込制(希望者多数の場合は抽選)
*詳細は1月中旬にウェブサイトに掲載。ウェブ申込フォームより申し込む(3月4日[月]締め切り)

担当学芸員によるギャラリートーク
日時:2月11日[日・祝]、3月16日[土]午後2時から2時30分まで
会場:三重県立美術館企画展示室
*展示室に入るため、洋画の青春展観覧券が必要

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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