シュウゴアーツ(東京)によると、日本の現代彫刻を代表する彫刻家で、武蔵野美術大学名誉教授の戸谷成雄さんが2026年4月15日、東京都内の病院で肺炎のため死去した。78歳。
葬儀は家族の意向で近親者のみで執り行った。故人を偲ぶ会を後日催す予定という。
〈森〉シリーズなど、チェーンソーで木材の表面を刻んだ作品で知られ、常に「彫刻とはなにか」を問う根源的な思索とともに制作を進めてきた。
1947年、長野県小川村生まれ。愛知県立芸術大学大学院彫刻専攻修了。1974年の初個展以来、彫刻概念の再解釈を試みたコンセプチュアルな作品を制作した。



ポスト・ミニマリズム、もの派以降解体された「彫刻」の再構築と新たな可能性を探究。チェーンソーで木材を刻む作品を中心に、1984年から〈森〉シリーズ、1994年から〈《境界》から〉シリーズ、2000年前後から〈ミニマルバロック〉シリーズなどを展開した。
広島市現代美術館(1995年)、愛知県美術館(2003年)、ヴァンジ彫刻庭園美術館(2011年)、武蔵野美術大学美術館・図書館(2017年)などで個展。名古屋のケンジタキギャラリーでも継続して展覧会を開いてきた。多くの国際展にも参加している。
2022年から2023年にかけ、回顧展「戸谷成雄 彫刻 ある全体として Entity」が長野県立美術館で開催され、埼玉県立近代美術館に巡回した。



作品の基本的な構造は、戸谷さんが彫刻家を志した1970年代の思考から形作られ、一貫している。1970年代の美術では、旧来の絵画や彫刻が事実上否定され、表現することや、美術そのものの在り方が問われた。
そうした中で、戸谷さんは、制度として解体された彫刻を、時代や地域の枠を乗り越え、起源から見つめ直した。
言語学や人類学の方法論を用いて社会の構造の在り方を問うという、当時の世界的な思潮に身を置く中で、戸谷さんが彫刻の構造、概念を突き詰めることは、日本社会について人間の存在認識から探究する問題意識とも共振した。



2022-2023年の長野、埼玉での回顧展では、戸谷さんが考えてきた彫刻についての一貫した問題意識が70年代から現在までを往還しながら見られるように提示された。
戸谷さんの彫刻観への糸口として、「表面」や「構造」といった独自の彫刻概念に、日本語の言語構造への深い思索が反映されていることにもフォーカスしていた。