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登山博文「1, 2」 タカ・イシイギャラリー(東京)で 2022年4月23日-5月21日

  • 2022年4月16日
  • 2022年5月22日
  • 美術

Hirofumi Toyama “1, 2”, 2021
Oil on canvas
73 x 60.5 cm each Set of 2
© Satsuki Toyama
Courtesy of Taka Ishii Gallery

登山博文「1, 2」

 愛知県を拠点に絵画の形式性や生成の過程を突き詰める作品を制作しながら、2021年11月に亡くなった登山博文さんの個展「1, 2」が2022年4月23日〜5月21日、タカ・イシイギャラリー(東京)で開催される。

 登山さんが最後に描いた2点組の新作ペインティング「1, 2」と共に、そこに至る思考をたどる試みともいえる2017年以降のペインティング5点ほどを展示する。

 なお、2022年5月21日〜6月25日、名古屋造形大の新校舎に開設されたギャラリーで、登山さんがあいちトリエンナーレ2010に出品した大作が再展示されている。

 登山さんは、コンポジション、色彩、マチエールなどの造形要素や、矩形の木枠、画布、絵具といった絵画の形式をつくりだす素材、あるいは描き方や描く順序などを手がかりに、絵画の生成過程そのものに向き合ってきた。

 それら諸要素を還元的に扱い、絵画が絵画として成立する端緒に関わろうとする登山さんの制作姿勢は厳格な論理に基づいていた。

 例えば、登山さんが深く思考を巡らしてきた余白は、構図のみならず、地と図の関係、画布、あるいは絵具そのもの、マチエールにも関わっている。

 こうした相関関係の1つ1つを検討し、それらを総合した後、再び解体するという作業を繰り返すプロセスにおいて、登山さんの作品は時折、大きな変化を見せながら展開してきた。

 特定のスタイルに固執することなく、まだ見ぬ絵画空間を追究した作品はおおらかさをもたたえ、還元的であることが絵画の豊かさを否定するものではないことを教えてくれる。

 本展で展示される新作「1, 2」は本来、5色の2点組、計10点を同時に展示すべく構想されたシリーズの一部である。

 長らく描画材として使われた工業系塗料は油彩へと回帰した。

 これまで取り組んできたさまざまな絵画的要素に対する探究はほぼ一元化され、平行する筆の動きのゆるみない持続が、作家の求める色彩やマチエール、 強靭な平面性、光をたたえた絵画空間を一挙に生み出している。

 組作品についての登山さんの試みは、2017年に組となるタブロー同士の関係を探ったことから始まり、今回、タブロー間の距離を思考するに至った。

 「1, 2」では 、2点の作品間の距離は可変とされ、2点組5色の計10点のタブロ ーが散り散りに展示された空間を、鑑賞者が巡る構想だった。

 これらの組作品は互いを同時に見えない距離にあっても1つの絵であると作家は語っている。

 たとえ見ることはできなくても、ほぼ等質のもう1つの存在を知っていることで、作品を見るという経験、そして作品の存在そのものについての意識は大きく揺るがされることになるのだ。

登山博文「1, 2」
会期:2022年4月23日(土) – 5月21日(土) 会場:タカ・イシイギャラリー(complex665) オープニング・レセプション: 4 月 23 日(土)17:00 – 20:00

登山博文(1967-2021年)

 福岡県生まれ。1997年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科修了。「引込線 2013」旧所沢市立第2学校給食センター(2013年)、「あいちトリエンナーレ」(名古屋、2010年)、「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子 たち」愛知県美術館・名古屋市美術館(2009年)などに参加。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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