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topophilia -世界の眺め- エビスアートラボ(名古屋)で6月3日-7月31日 浅野克海 / 大杉好弘 / 大野瑠菜 / 佐藤日向

YEBISU ART LABO(名古屋) 2022年6月3日〜7月31日

若手4人の絵画のグループ展 テーマはトポフィリア

 若手4人の絵画のグループ展。タイトルの《topophilia》は、フランスの哲学者、ガストン・バシュラール(1884〜1962年)の『空間の詩学』に由来する。

 その中で示された「トポフィリ(場所への愛)」を、中国生まれの米国の地理学者、イフー・トゥアンが英語化し、分析している。

大野瑠菜 

 人々が持つ場所「トポス」への愛着が、トポフィリアである。

 4人が愛着をもつ場所、空間をモチーフに選ぶことで、現れてくる色や形、線などの絵画的要素も、トポフィリアと関わっている。

topophilia  -世界の眺め-

浅野克海

 浅野克海さんは1997年、愛知県生まれ。2020年、名古屋芸術大学の洋画コース卒業し、東京藝術大学大学院絵画専攻に在籍している。

 厚い油絵具の筆触を重ねた絵画である。世界をエネルギーとして見ていることが、こうした描き方につながっているようである。

 名古屋市民ギャラリー矢田で2020年10月にあった愛知の3美大の若手作家展「motion#5」展に出品している。当時と比べて、筆触の肌理が細かくなった印象がある。

浅野克海
浅野克海

大杉好弘

 大杉好弘さんは1984年、愛知県生まれ。2008年、名古屋芸術大学卒業。2010年、愛知県立芸術大学大学院油画・版画領域修了。

 大杉さんの絵画は、 ぼやっとした印象のスモーキーな色彩で描かれている。その絵画空間は、現実とも、そうでないともいえるような雰囲気である。

 作家の生活空間にある雑貨類など現実のモチーフと、虚構のイメージがシームレスに画面上で組み合わされている。描くことによる確さ、不確かさの感覚のあわいが立ち上がる絵画である。 

大杉好弘
浅野克海 / 大杉好弘 / 大野瑠菜 / 佐藤日向

大野瑠菜

 大野瑠菜さんは愛知県立芸術大美術学部美術科油画専攻在籍。そこにいたという実感的事実としての空間に別の視点、想像的要素を加えることで、自分と外界との関係をテーマにしている。

 家の近くにあった長良川の川面の揺らぎの感覚に心の動きを重ねて視覚化した作品もある。かつて長い間暮らしたアパートの部屋もモチーフになっている。

 記憶が不明瞭になればなるほど、逆説的にその記憶そのものの干渉を離れて、異質なイメージが立ち現れてくる。

大野瑠菜 
大野瑠菜 

佐藤日向

 日常の何気ない情景の中の不安感、奇妙な印象、違和感を題材に描いている。

 今回は、実家の美容院がモチーフになっている。

 実家で母親に髪を切ってもらってきた佐藤さんは、他人に髪を触られたことがほとんどない。美容院という、身体に徹底的に触れられる空間がある種の不気味さととともに描かれている。

佐藤日向
佐藤日向

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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