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STANDING PINE(名古屋)でテゲネ・クンビ 個展 Bending Back 2024年5月4-25日

  • 2024年5月18日
  • 2024年5月18日
  • 美術

STANDING PINE(名古屋) 2024年5月4〜25日

 アフリカの現代美術やアフリカにルーツのあるアーティストを紹介するSTANDING PINEのシリーズ企画の第2弾「Stories from Africa: Chapter2」。

 第1弾は、2022年に開催。マリ共和国出身で国際芸術祭「あいち2022」にも出品したアブドゥライ・コナテさんと、アンゴラ出身のジャヌアリオ・ジャノさんという2人のアーティストを紹介した。

 今回は、名古屋と東京の両ギャラリーで同時開催である。

 東京では、2024年4月27日から5月25日の会期で、ブラックアーティスト3人によるグループ展「Resonant Harmonies」を開催している。ゲストキュレーターがデクスター・ウィンバリーで、作家はアンソニー・デイリー、テゲネ・クンビ、エイドリアン・ニーヴスとなる。

 名古屋では、このうち、エチオピア出身のテゲネ・クンビの個展「Bending Back」を開催している。テゲネ・クンビのアジア初の個展となる。

 テゲネ・クンビは、1980年にエチオピアのアディスアベバ生まれ。2004年にアディスアベバ大学美術学部で絵画と美術教育の学位を取得。ドイツのDAAD助成金を獲得して、2008年にエチオピアを離れ、2011年に美術修士号を取得した。現在はドイツが拠点。

 国内で複数のグループ展や個展を開催するほか、パリ、カサブランカ、ニューヨーク、ナイロビ、ヌアクショット、アムステルダムなどで国際共同プロジェクトやワークショップに参加している。

 名古屋で展示されている作品は、ファブリックと油絵具を使った絵画である。画面が左右に二分割され、さらに上下に区画された細部のブロックで構成され、大小のグリッドが展開している。

 それぞれの矩形のエリアに内包される、さまざまなファブリックの模様と、厚塗りの油絵具のタッチ、それらのテクスチャーと色彩と縦線、横線が響き合い、豊かな表情を見せている。

 緑や青、赤など色相をそろえた作品のほか、多様な色彩を包含させた作品もある。衣服や布地、盛り上がった絵具からは、密度と物質感が強く感じられるが、同時に調和と緊張感、繊細さ、洗練された美しさも備えている。

 シンプルに見えながら、ダイナミズムと複雑さを孕んだ表現は、生まれ故郷の風景、壁画などのビジョンからもインスピレーションを受けているようである。

 抽象的な縦縞や横縞、色彩のブロックは、エチオピア正教会やコプト正教会の写本や壁画、様々な模様に見られる鮮やかな色彩と親和性が高いものだという。

 展覧会タイトルの「Bending Back」は、作品を制作するプロセスと関係している。それは、背を曲げ後ろを向くように、アーティストがキャンバス上で反復する、数え切れないほどの決断の瞬間を振り返る問いかけである。

 既製品と手技、 聖性と世俗性、規則性と不規則性、物質性と空間・時間、そして微妙な色彩と線、筆触、テクスチャーがせめぎ合うように積み重ねられる数多くのブロック。

 その世界は、おびただしい瞬間の決断、選択の振り返り、集積によって創造されている。大胆でありながら繊細な作品には、自己存在と世界を受容し、問い直し、そして前に進むという、アーティスト自身の決意と永遠性を希求する精神の徴が表れている。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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