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鈴木淳夫 アインソフディスパッチ(名古屋)で2022年8月20日-9月10日

AIN SOPH DISPATCH(名古屋) 2022年8月20日〜9月10日

鈴木淳夫

 鈴木淳夫さんは1977年、愛知県豊橋市生まれ。静岡大学大学院教育学研究科修了。

 鈴木さんの作品の中核にあるのは、パネルに厚く塗り重ねたアクリル絵具の層を彫刻刀で彫ることで「描いた」絵画である。

 もっとも、制作手法はシンプルながら、そこから派生した展開の多様さには目を見張るものがある。

 全体には、絵画からインスタレーション、彫刻、オブジェなどと領域を横断しつつ、同時に常に絵画に回帰し、絵画とは何かを捉え返すような構造である。

 実際のところ、絵具を彫ることによって、積層する色彩(絵具)のレイヤーが顕在化するとともに物理的な深度、奥行きが露出する。

鈴木淳夫

 また、彫り出した絵具屑(断片)を加工し、「撒く」「貼る」「重ねる」「積む」「縛る」「掛ける」などの行為によって、立体やインスタレーションなどとして展示するが、それらは絵画の派生物でもある。

 平面と立体、絵画と彫刻、色彩と物質、主なるものと従なるもの、具象と抽象など両義的な関係を意識させながら、それらは展開していく。

 作品は、フラットな絵画から、床に置いた球状の立体、さらにはインスタレーション、器、オブジェなど、さまざまな展開を見せている。

鈴木淳夫

 つまり、鈴木さんの作品は、「描く」=「削る / 彫る」という行為によって、絵画あるいは立体とそこから派生するものがさまざまな関係性を結びながら、拡張していく。

 愛知・豊川市桜ヶ丘ミュージアムで2022年7、8月にあった企画展「鈴木 と 鈴木 ほる と ほる」、2020年のアインソフディスパッチ(名古屋)での個展2019年の個展のレビューも参照してほしい。

彫る絵画 | 関係

 今回は、淡いメタリックな色彩による繊細で優しい作品を中心に展示している。シルバー、ゴールド、パールなどである。

鈴木淳夫

 鈴木さんによると、2011年の東日本大震災後、作品に鮮やかな色彩を使用することがためらわれ、こうしたシックなシルバー、ゴールド、パールなどを使うようになった。

 その後、作品の幅が広がる中で、こうした色彩を使うことはなくなっていたが、2019年になって再開した。

 優しく癒やしのような柔らかい光を発する作品である。画家の山田純嗣さんがパールを使った絵画にも似て、煌びやかな印象はなく、むしろ上品で落ち着いた印象である。

鈴木淳夫

 鈴木さんは、これらの作品の下層に赤、青、黄などの色彩のレイヤーを重ねているが、それら各層の上に白いモデリングペーストの層も重ねている。

 こうすることで、色彩がモデリングペーストの層を通して透けるように繊細に浮かび上がり、下層の色彩が霞に包まれたように現れる。

 それが、表層の淡いパール、シルバーなどの層と一体になって、にじむような美しい空間性を見せるのである。

鈴木淳夫

 今回も、さまざまな作品の展開がある。

 床に置いた球体の作品は、よく見ると、その一部がフラットになっていて、とりわけ彫刻と絵画が一体になったような造形が強調されている。

 この立体から削られた絵具の断片は、一部が床に散りばめられ、一部は壁の絵画にも貼られている。派生物を介した作品のバリエーションの広がりが、作品相互の関係性の豊かさにもなっているわけである。

 鈴木さんの作品は、支持体と絵具のレイヤー、その物質性という絵画の基本要素を分解、あるいは拡張しながら、創造的な関係性を発見していくようなところがある。

鈴木淳夫

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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