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タル・ベーラ監督「サタンタンゴ」名古屋で10月12日からついに公開

 「ニーチェの馬」、「ヴェルクマイスター・ハーモニー」などの作品で知られる、ハンガリ ーを代表する巨匠 タル・ベーラ監督が4 年の歳月をかけて 完成させた伝説の映画「サタンタンゴ」(1994年)が、製作から 25 年を 経て、東京などで公開されている。名古屋シネマテークでも10月12〜18日に上映。

タル・ベーラ「サタンタンゴ」

 7 時間 18 分の長尺で、人間存在と社会、歴史の根底を問いかけ、現代の混迷と生き惑う人間を予見する映画史上不滅の傑作。ジム・ジャームッシュ、ガス・ヴァン・サントらの映画監督に大きな 影響を与え、スーザン・ソンタグが「7 時間すべての瞬間が圧倒的で心を奪わ れる。残りの人生で毎年観たい傑作」と激賞した 。35ミリフィルムにこだわり続けたタル・ベーラ監督が初めて許可した 4K デジタ ル・レストア版での公開となる。

 ルーブル美術館やニューヨーク近代美術館でも上映された。今年の第 69 回ベルリン国際映画祭フォーラム部門に正式出品され、94 年にフォーラ ム部門でワールドプレミア上映されてから 25 年振りのベルリン国際映画祭凱旋を果たした。 タル・ベーラ監督は後進育成に力を入れ、「鉱ARAGANE」や、愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品の最新28作で2019年6月に初公開された「セノーテ」の小田香監督も、タル・ベーラ監督の下で学んだ。

タル・ベーラ「サタンタンゴ」

 「セノーテ」については、「小田香監督の映画『セノーテ』初公開 死者と出会うマヤの水源」を参照。

 2015 年に英文学賞ブッカー国際賞を受賞した、ハンガリーを代表する作家、クラスナホルカイ・ラースローの同名小説が 原作。経済的に行き詰まり、終末的なハンガリーのある村。降り続く雨と泥に覆われ、人々が疑心暗鬼になった活気のない村に、死んだはずの男イリミアーシュが 帰ってくる。彼の帰還に惑わされ、さまよう村人たち。イリミアーシュは果たして救世主なのか? それとも?

 全編約 150 カットという驚異的な長回しで描かれる。日経新聞でのインタビュー(2019年9月28日朝刊)で、タル・ベーラ監督は、「共産主義の時代には撮影許可が下りず、9年間待った」「(この文学を撮影する映画言語を見い出すため)小説の舞台であるハンガリーの低地で2年間、旅をした」「すべての芸術は現実の反響だ」「社会や政治状況についての映画ではなく、探していたのは永遠なもの、人間はなぜ存在するのかという本質的な問いだ」「希望のなさはそのままだ。状況は何も向上していない」などと答えている。

タル・ベーラ「サタンタンゴ」
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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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