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大西佐奈個展「Luminous」ギャラリ想(名古屋)で4月13-23日

ギャラリ想(名古屋) 2023年4月13〜23日

大西佐奈

 大西佐奈さんは三重県生まれ。2004-2005年、フランス・パリのグランド・ショミエール芸術学校に在籍した。

 2006年、沖縄県立芸術大学美術工芸学部絵画専攻卒業、2008年、同大学院造形芸術研究科(修士課程)絵画専修修了。

 地元の三重や、名古屋、東京で作品を展示している。三重の個展は侶居(四日市市)などで開催。ギャラリ想での個展は、2021年に続いて、2回目となる。

大西佐奈

 2022年には、Enne_nittouren(名古屋)でも個展「雲をおもい海をおよぐ」を開いた。「Enne_nittouren」の天井の高い、美しい空間に数多くの作品が展示された。

 大西さんの作品は、海、あるいは空の広がりと言ってもいい世界を、淡い光を発するような色彩で描いている。大西さんは幼い頃から海辺の地域に住んでいた。

 今回は、小品が中心だが、その作品世界は変わらない。奥から現れる出るような透明感のある色彩の広がりが魅惑的で神秘的である。ロマン主義的、宗教的ですらある。

「Luminous」2023年

大西佐奈

 作品は、支持体に2つのレイヤーが使われている層構造である。手前に薄い絹地があり、そこは油彩で描かれる。奥の層は和紙が使われ、2つの層に挟まれた空間は、アクリルで彩色される。 

 無窮の光のような広大無辺とした世界。その手前のレイヤーに、帯のような線が左右に走り、さらに、アーチ型や矩形のフレーム、ストライプなどの構造が加わることもある。

 つまり、深奥から広がる茫洋とした光のような世界と、前面のレイヤーの幾何学形が対比的に使われている。

大西佐奈

 横に伸びる線は、光と大気、海と空を象徴する水平線を暗示し、他方、アーチ型、矩形フレームなど、それ以外の幾何学形態は、自然に介入してきた人工物のようである。

 言い換えると、それは、光と物質の対比、宇宙、自然の永遠性、崇高性と、人間の意味と欲望の世界の対比ともいえる。

 今回、大西さんは、絵具の色彩、物質性と、光との関係をより意識的に探究している。作品は、光を透過するレイヤー、支持体や空間に広がる色彩、光を反射する鏡面や、つや消し、絵具の物質性を強調した箇所など、さまざまな部分で成り立っている。

大西佐奈

 それによって、光の透過、反射、拡散、吸収について、絵具と支持体構造の関係によって、さまざまなバリエーションが生みだされる。

 例えば、明るい色彩をたたえたようなレイヤーの輝き、沈み込んだような色彩、色彩が拡散してにじみ出るような空間、マチエールの物質性が強調された絵具、光を反射する銀色のストライプ‥‥。

 あるいは、絹地のレイヤーが境界面であることを認識させるように、水滴のようなものが付けられていたりもする。

大西佐奈

 柔らかい光の層のような奥行きと、絵具の物質的な存在感、水平線、あるいは矩形、アーチ、ストライプなどの幾何学形との対比が顕著である。

 これらによって、さまざまな光と色彩の現象、物質感に対する私たちの感覚が繊細に反応する。

 色彩と光、物質ということでいえば、ケンジタキギャラリーで紹介されているヘルベルト・ハマックという作家を思い出したりもした。1952年生まれのドイツの作家である。

大西佐奈

 ハマックは、色彩の塊である樹脂製のマッスをキャンバスに取り付けるという方法を取っている。つまり、「絵画」の物質と色彩が一体化していている。

 それゆえ、物質と色彩、光がさまざまな表情を見せ、知覚、感情を喚起する大西さんの作品に通じるところがある。

 ハマックが影響を受けたのが、ドイツ・ロマン派の画家オットー・ルンゲの官能的な色彩、同じロマン派のフリードリヒの神秘的な光に包まれた風景である。大西さんの作品にも感得されるものである。

大西佐奈

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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