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大岩オスカール ドローイング展 ギャラリーキャプション(岐阜)で11月7日まで ​

GALLERY CAPTION(岐阜市) 2021年10月20日〜11月7日

大岩オスカール Oscar Oiwa

大岩オスカール

 大岩オスカールさんは1965年、ブラジル・サンパウロに日系ブラジル人2世として生まれた。

 サンパウロ大学建築学部在学中から制作を始め、卒業後の1991年に来日。東京で活動した後、2002年に拠点を米ニューヨークに移した。

 米国、ブラジル、欧州など世界各地で個展を開き、グループ展にも精力的に参加。日本では、2008年に東京都現代美術館で大規模な個展「夢見る世界」(福島県立美術館、高松市美術館に巡回)が開催された。

 2019年には、金沢21世紀美術館で開いた個展「光をめざす旅」が注目された。

 東京都現代美術館の「MOTコレクション Journals 日々、記す vol.2」(2021年11月13日〜2022年2月23日)でも、ニューヨークでの隔離生活中に制作したドローイングに基づく新作版画、五輪に関わる3都市(リオ・デ・ジャネイロ、東京、パリ)をテーマにした6メートル超の大作《オリンピアの神:ゼウス》が展示される。

​ GALLERY CAPTIONでは、早々と1999年から、個展を継続して開いている。

 筆者は、その1999年、CAPTIONが現在地に移る前の岐阜市若宮町にあったときの個展で大岩オスカールさん(当時は、大岩オスカール幸男さん)を取材している。

drawing works: 2000-2020

 今回は、2000年から2020年までに制作されたドローイングが展示され、とても心地よい空間になっている。

 奥の部屋に​油彩画も1点展示されていた。

大岩オスカール

 ​大岩オスカールさんは、現代の都市の風景を多面的に描きながら、人間がかかえる社会問題に真摯に応答した世界を展開させてきた。

 歴史、記憶を見つめ、未来を問いかける豊かな創造力と生活に根ざした等身大の感覚、機知に富んだ発想とアイロニーは、現代社会への透徹したまなざしにうらづけられている。

大岩オスカール

 迫力に満ちた俯瞰図的な構図など、デフォルメされた大画面のスケール感と歪んだパースでダイナミックに描かれた空間は、現実と幻影のあわいに現れ、風刺、ユーモアとともに不可思議な物語性を印象付けている。

 ブラジルと日本、米国など、自らが背景とする複数の文化を往還しながらアイデンティティを模索する姿勢が、人間を洞察し、未来を遠望する普遍的な主題につながっている。

大岩オスカール

 そうした世界は、空想のようでありながら、絵空事では済まされないリアリティーをもって見る者の心を捉える。​​

 ドローイングは、油彩の下絵として描かれることもあれば、油彩の完成後にドローイングとして反復されること、あるいは、ドローイング作品として独立して制作されることもある。

大岩オスカール

 大作の一部を想起させる場面があるかと思えば、作家のささやかな日常生活の断片と思える情景が軽やかな筆致ですくい取られることもある。

 作品の詳細画像などは、GALLERY CAPTIONのWEBサイトで見ることができる。

大岩オスカール

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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