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生川和美展 / 白木千華 陶展 IDF(名古屋)で2022年12月10-25日に開催

GALLERY IDF(名古屋) 2022年12月10〜25日

生川和美展 -バラとクリスマスローズ-

 生川和美さんは1977年、三重県生まれ。法政大学文学部英文学科を卒業後、ほぼ独学で絵画を制作している。拠点は三重県鈴鹿市。

 2012年の第7回はるひ絵画トリエンナーレで佳作。2015年の第8回はるひ絵画トリエンナーレでも入選している。

生川和美展

 IDFで個展を継続して開いている。自分で撮影した花、あるいは花のある風景の写真画像を忠実に再現する制作スタイルである。

 前回の2019年の個展では、秋の立山のパノラミックな風景を描いた大作を披露した

 近年、描く対象が観賞用の花から、野山の風景、草花に変わったが、今回は、バラとクリスマスローズ、ドッグローズなど、観賞用の花に回帰した。

生川和美展

 コロナの影響があるのだろう、最近は、遠くに出かけることがなくなり、過去に撮りためた花の写真を見返したという。今回の作品は、自生しているクリスマスローズや、新たに出会った風景も含め、原点にたちかえった感じだ。

 生川さんの描く花の絵は、とても繊細、実直で、計らいがない。可憐であるのはもちろん、か弱さ、はかなさにおいて、ヴァニタス、メメント・モリと関連づけられる美しさを備えている。

生川和美展

 砕けて壊れそうな花弁、褪せそうな色、透き通るような肌理、かすかな変化を見せる光と影、葉の朝露などを本物に肉薄するように描いているのだ。

 作品を見ていると、エレガントなたたずまいとともに、生のはかなさがしみ出すのを感じる。それゆえに、見る者は、世界を愛おしむような感覚を受け取るのだ。

 人間は、この宇宙の万物、無生物を含め、すべてのものに支えられて生きている。生川さんは、花のはかなさ、弱々しくも美しい姿を通じて、宇宙と命のつながりを筆者に感じさせてくれる。

生川和美展

 筆者がそう思うのは、生川さんが花を描くときに、それらの花が太陽の自然光とともに存在することを意識していると聞いたからでもある。

 生川さんの実家は農業を営んでいる。きっと、幼いときから、太陽の光や水など、さまざまな関係性の恵みによって穀物や野菜が育つのを見てきたのだろう。

 この地球で最強となった人間の体もまた、ほかの命の恵みをいただくことで成り立っている。改めて、そんなことを思い起こさせてくれる作品である。

生川和美展

白木千華 陶展

 白木千華さんは三重県四日市市出身。1998年、近畿大学農学部食品栄養学科卒業。その後、陶芸を学び、2015年、岐阜県立多治見工業高校専攻科を修了した。現在は、四日市市で制作している。2019年には米国の3カ所で滞在制作をした。

 2017年、萬古陶磁器コンペグランプリ(四日市市)。2018年、第17回三重県文化賞新人賞。2020年、萬古陶磁器コンペ審査員特別賞。​

白木千華

 生息地のニュージーランドやオーストラリア、南米、フォークランド諸島、南極まで見に出かけたというペンギンをはじめ、大学時代に農学部で育てていたキノコ、あるいはコイなどをモチーフに制作している。

 装飾性豊かで生命力があふれた作品である。小さなキノコやコイのウロコ、植物など、細かなパーツを付着させ、ぬめりのような艶やかな質感を出しているのが特長。

 かわいく、わくわくさせるような魅力をもった作品である。 

白木千華

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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