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中島晴美展/中島克子展 目黒陶芸館本館(三重県四日市市)2025年10月12-26日

目黒陶芸館本館(三重県四日市市) 2025年10月12〜26日

中島晴美展

 中島晴美さんは1950年、岐⾩県⽣まれ。⼤阪芸術⼤学デザイン科陶芸専攻卒業。2014年まで愛知教育⼤学教授を務め、その後、多治⾒市陶磁器意匠研究所所⻑。2009年度日本陶磁協会賞受賞。2023年、円空大賞展(岐阜県美術館)

 土素材と徹底的に向き合うことで、内なる衝動と理性的な造形思考との二重性を更新し続けながら、まだ見ぬ形態を生成させる。単に有機的、バイオモルフィックというだけではない。デモニッシュな有り様と幾何学性、本能と理性がせめぎあう姿は、人間の深遠さ、人間とは何かを追究したものだともいえる。

 それは「苦闘する形態」「不条理を開示する形態」「ざわざわするかたち」「内なるかたち」などのタイトルにも現れている。

 素材の限定性、なかんずく、手捻りによる制作において素材を陶土から磁土へと展開させたように、自ら抱え込んだ葛藤、矛盾は、単に不条理な対立などではなく、それを超えていくことで新たな形態が生まれる発展の原動力ととしての弁証法的制作なのである。

 単に、自分の思い、イメージ、コンセプトを実現するだけなら、こんなに迂遠した、苦しい道のり、逆境、逆張りをあえて選ばないだろう。

 今回、中島さんはすべての新作に、従来の球体のみならず、キューブを取り入れた。有機的なところから幾何学的なものが生まれ、幾何学的なところから有機的なものが生まれる。命のエネルギー、放逸、異質なものの出合いを引き受け、そして、それらを抑制し、自我と無我、本能と理性、曲線と直線を合一させる。

 岐阜・多治見市文化工房ギャラリーヴォイスで2023年11月4日~2024年1月28日に開催された「やきものの現在 土と魂の立ち上がる姿」展でも、球体とキューブが入り交じった作品は一部に出品されているが、今回は、そのバリエーションといい、完成度といい、格段に作品のクオリティーが上がっている。

 2年前のヴォイスの展示では、全体をまとめようという意識が先に働いてしまったのか、いくらか漫然とした印象があったが、今回は全体に、運動や、ダイナミズムがあり、形態を立ち上げる中で、増殖していく球体とキューブがまさしく弁証法的に新たな形態を生成させている。

 実は、この球体(円形)とキューブ(グリッド)の弁証法的な関係は、50年前の大学の卒業制作や、20代から30代にかけての陶壁の作品にも見られるものだ。

 今回は、蔵の展示スペースに旧作も展示されている。

中島克子展

 中島克子さんは大阪芸術大学デザイン科卒業。受賞歴は、1998年第5回国際陶磁器展美濃銅賞、2003年第2回京畿道世界陶磁器ビエンナーレ金賞、2007年神戸ビエンナーレ2007陶芸コンペティション大賞、2008年台湾陶磁器ビエンナーレ審査員特別賞など。

 独特の雰囲気を醸す足付きの器がスケールアップし、所狭しと展示されている。機能性、デザイン性がベースにはなってはいるが、このサイズになると、もはや器というよりオブジェである。

 しかも、台座の高さを変え、各々の作品の自律性を高めているから、彫刻的な存在感が強く出ていて、さらにいえば、全体がインスタレーションとしての性質もある壮観な展示である。

 器であっても器ではなく、「うつわ」はある種の抽象概念である。つまり、「うつわ」なるものを追究する中で、遊び心とともに、さまざまな実験性を融合させた作品だといっていいだろう。

 異質な性質のものが出合う、その破調の感性ゆえか、穏やかな作風であっても、決しておとなくしく形式に収まることがない。

 がっしりとした動物のような大きな4つの足、繊細でありながら、おおらかな模様、自由に躍動する放縦な線、表面の段差、突起や裂け目など、機能性の逆をいくような、楽しげな佇まい。さりげなく、そして大胆、鷹揚な作品である。

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