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三重県立美術館 美術にアクセス!―多感覚鑑賞のすすめ 2021年6月5日〜8月1日

過去の鑑賞支援ツール展示風景 ツールは三重県立城山特別支援学校高等部とデザイナー楠木一徳氏(KUSUKI DESIGN)との共同開発 撮影:松原豊  転載禁止

美術にアクセス!―多感覚鑑賞のすすめ

 視覚だけでなく触覚や聴覚、想像力を駆使し、さまざまな感覚で美術を鑑賞してもらおうと、津市の三重県立美術館で2021年6月5日〜8月1日、「美術にアクセス!」展が開催される。三重県立美術館が所蔵する絵画、彫刻、版画や、鑑賞に役立つ教材など約50点を展示する。

過去の鑑賞支援ツール展示風景 ツールは三重県立城山特別支援学校高等部とデザイナー楠木一徳氏(KUSUKI DESIGN)との共同開発 撮影:松原豊  転載禁止

どんな展覧会か?

「美術にアクセス!」とは?

 多様な人がさまざまな感覚で作品を体験できるようにというのが趣旨。誰もが自分から能動的、主体的に美術を鑑賞してほしいとの期待も込めている。

 美術を目で鑑賞するときに生じる、見る「私」と見られる作品の距離を近づけ、「私」が自分から作品にアクセスするための工夫として開発された障がいのある人向けの教材やプログラムがヒント。そこから、触覚や聴覚を活用した鑑賞や、想像力でさまざまな感覚を結びつける鑑賞を提案している。

過去の鑑賞支援ツール展示風景 ツールは三重県立城山特別支援学校高等部とデザイナー楠木一徳氏(KUSUKI DESIGN)との共同開発 撮影:松原豊  転載禁止

「多感覚鑑賞」とは?

 複数の感覚を使って鑑賞してもらうこと。特別支援学校との連携事業で五感を活用する鑑賞プログラムに取り組んだ経験などから着想しているが、それに留まらず、すべての来館者が感覚や想像力を駆使して作品を楽しめるよう提案している。

展覧会開催の経緯は?

 三重県立美術館は、2018年3月の「三重県立美術館のめざすこと」策定前後から、県内の特別支援学校等との連携事業を展開。その中で、障がいのある人向けの教育プログラムや教材が、障がいの有無にかかわらず、幅広い人の潜在的ニーズにも応え得るものだと考えた。同館が目標とする「誰もが利用しやすい環境」を整える第一歩となる展覧会である。

触覚や聴覚を使うとは?

 会場では、目が見える/見えにくい/見えないにかかわらず、一部の彫刻作品に触ることができる。触れるツール(凹凸のある作品の簡易図)や音声ガイドも作品と一緒に紹介。音声で聞く解説は、会場設置の機器だけでなく、自分のスマートフォンやタブレット等からもウェブサイトにアクセスできる。イヤホンや手袋も希望者に配布する予定。

過去の鑑賞支援ツール展示風景 ツールは三重県立城山特別支援学校高等部とデザイナー楠木一徳氏(KUSUKI DESIGN)との共同開発 撮影:松原豊  転載禁止

展示されるのはどのような作品?

 これまで、展示補助教材(鑑賞支援ツール等)が多く開発された絵画や、聴覚や味覚、嗅覚、皮膚感覚等を喚起する絵画、彫刻・立体、版画、水彩素描など、同館の所蔵品や鑑賞に役立つ教材など約50点。

ポイント

・一部の彫刻や絵画の触図(凹凸のある簡易図)に触ることができる。
・6月6日(日)、26日(土)、7月3日(土)、22日(木祝)、8月1日(日)の14時〜17時は、触れる作品の数が増える。
・展示や作品の解説の一部を音声で聞くことができる。
・感染防止のため、使い捨て手袋やイヤホンを配布する。
・サポートを希望する人は事前に連絡したほうがスムーズ。

過去の鑑賞支援ツール展示風景 ツールは三重県立城山特別支援学校高等部とデザイナー楠木一徳氏(KUSUKI DESIGN)との共同開発 撮影:松原豊  転載禁止

観覧料

 観覧料=一般700(500)円 学生600(400)円 高校生以下無料 ( )内は20人以上の団体割引料金
※この料金で「美術館のコレクション」、「柳原義達の芸術」も鑑賞できる。

関連プログラム(参加無料)

 ウェブ申込は美術館ウェブサイトの専用フォームからの申し込みとなる。ウェブ申込を希望しない人は連絡する。要約筆記や手話通訳、その他支援の必要な人は事前に相談する。プログラムは今後の状況に応じて内容を変更する場合がある。

(1) 【ワークショップ(対面/オンライン)】
  視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ

 見えない人や見える人が一緒に、見えることや感じることを言葉にしながら数点をじっくり鑑賞する。

ナビゲーター:「視覚障害者とつくる美術鑑賞ワークショップ」メンバー。
申込方法:ウェブ申込フォームによる事前申込。申込締切 7月2日(金)17時
定員:各回8人 申込1件につき1人のみ応募可。応募者多数の場合は抽選。抽選結果は7月7日(水)夕方までにメールで知らせる。

①【ウェブ申込】美術館でのプログラム(対面)
日時:7月17日(土)14時〜16時30分(2時間30分)
会場:美術館企画展示室
17日のプログラムも、開催方法をオンライン会議システムZoomに変更する可能性がある。申込フォームには、オンライン化する場合の参加方法の希望も記入する。

②【ウェブ申込】オンラインプログラム
日時:7月18日(日) 13時30分〜16時30分(3時間)
方法:オンライン会議システムZoomによる開催

中澤弘光《絵葉書『美人と感覚』より「嗅(女学生)」》1905(明治38)年 木版・紙 
三重県立美術館蔵  転載禁止

(2) 【ワークショップ(対面)】
  あなたとわたしのバランス

 粘土を握って、やじろべえを作る。
 ※油粘土を使用予定(チラシから変更)

講師:宮田雪乃+金光男(美術作家)
会場:美術館美術体験室(柳原義達記念館地下1階)

①【申込不要】「握る」
 粘土を握る。
日時:6月12日(土)、7月10日(土) 14時〜16時開室
予約不要の立ち寄り式。所要時間10分程度

②【当日整理券】「バランスをとる」
 誰かが握った粘土と自分の握った粘土のバランスをとるやじろべえを作る。
日時:6月13日(日)、7月11日(日) 11時〜12時、14時〜15時(各回1時間)
定員:各回10人(各回開始1時間前からインフォメーションで整理券を配布)

(3) 【レクチャー(対面/オンライン)】
  担当学芸員によるスライドトーク

 展覧会の成り立ちや、美術館の取り組みについて話をする。3回ともほぼ同じ内容のトークを予定。

①【申込不要】美術館でのトーク(対面)
日時:6月19日(土)、7月4日(日) 14時30分〜15時10分
会場:美術館講堂(柳原義達記念館地下1階)
定員:各回40人(整理券なし)

②【ウェブ申込】オンライントーク
日時:7月25日(日) 14時30分〜15時10分
方法:オンライン会議システムZoomによる開催
ウェブ申込フォームによる事前申込(申込締切 7月16日(金)17時)
定員:80人 申込1件につきデバイス1台で参加。応募者多数の場合は抽選。抽選結果は7月20日(火)夕方までにメールで知らせる。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《アレクサンドリアの聖カタリナ》1645-50年頃 
油彩・キャンバス三重県立美術館蔵  転載禁止

4) 【投稿プログラム(リモート)】
  カタリナにアクセス!

 バルトロメ・エステバン・ムリーリョ《アレクサンドリアの聖カタリナ》についての「あいうえお作文」を考えてもらうプログラム。参加希望の人に、作品の絵葉書や「せいかたりな」の6文字のうち2文字が書かれた2枚のハガキ、参加方法の説明が入った参加キットを配布・送付する。
 送料不要。点訳やメールでのやりとりを希望する人は相談する。参加キットは1回の申込につき2点まで配布・送付する。

申込・配布期間:5月20日(木)〜8月1日(日)。参加キットがなくなりしだい配布終了。
美術館でのハガキの掲示期間:6月5日(土)頃〜8月1日(日)
投稿期限:8月31日(火)当日消印有効

①【ウェブ申込】
申込フォームに住所を記入→美術館から参加キット発送→ハガキを美術館に送る→美術館で公開

②【美術館で受取】
美術館インフォメーションで配布する参加キット受取→ハガキを美術館に送る→美術館で公開

三重県立美術館ソーシャル・ガイド

 発達障がいのある人(主に自閉症スペクトラム障がいのある人)やその周りの人も安心して来館できるよう、2020年度に、三重県自閉症協会の全面的な協力を得て、ソーシャル・ガイド(ソーシャル・ナラティヴ/コミュニケーションの習慣や暗黙の了解を言葉とイラスト・写真等で説明した教材)を作成した。障がいの有無にかかわらず、初めて来館した人が幅広く活用できるようなコンテンツを目指している。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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