松田新 展 銅版画&コラージュ A・C・S(名古屋)で6月19日まで

ギャラリーA・C・S(名古屋) 2021年6月5〜19日

松田新展〜銅版画&コラージュ〜A・C・S

 松田新さんは1950年、千葉県出身で、現在は神奈川県厚木市在住。習志野高校で野球に打ち込むが、その後、中学校のときの美術教員だった恩師から銅版画を学び、画家を志した。

 1999年から、ギャラリーA・C・Sで個展を重ねている。作品は、銅版画とコラージュである。

銅版画

松田新

 メゾチントによる作品である。シンプル極まりない作品だが、微細な光までも吸収しそうな深い青にとても引きつけられた。松田さんは、このウルトラマリンの、全てを包み込むような濃密で柔らかさを内にはらんだ青に魅せられている。

 モチーフは、自宅近くを流れる相模川の丸い河原石、あるいは海景。青い色彩の中に階調を変化させた幾何学形態が浮かび上がる構成である。

 全体に抑制がきいていて、「無窮の時間を宿した静寂」という言葉がふさわしい。画面の小さな丸い形象には、山岳地の岩石が削られていった膨大な時間性が内包されている。

 ムラなく、きめ細かく、吸い込まれるような青。このどこまでも深いウルトラマリンは、どうやって生み出されるのか。

松田新

 メゾチントでは、通常、版面にベルソー(ロッカー)などの道具でサンドペーパーのような表面を作るが、松田さんはこの段階で、カッターナイフを丹念に併用し、深い彫り込みによる目立てを施す。

 カッターナイフは、1ミリ幅に5本の線を刻むほど細密に、縦、横、斜め(対角線2方向)の計4回彫る工程を4回繰り返す。

 気の遠くなるような作業である。作品はサイズ的に決して大きくはないが、それでも1作品に1カ月ほどを要する。

 この鋭い線の集積した面をスクレーパーで削ることで階調を作り出すのだが、松田さんは、腐食などの方法はほとんど使わず、直刻法によって、時間をかけて制作する。

松田新

コラージュ

松田新

 一方、コラージュは、同じウルトラマリンながら、手塗りをして、アルミ箔を押し当てた構成的な作品である。

 とりわけ、メゾチントに見られるように、松田さんの作品では、深いウルトラマリンと幾何学的なシンプルな画面、長い年月をかけてかたちづくられた自然というテーマが一体となって、その小さな空間に日常を超えた悠遠な世界を想起させる。

 ウルトラマリンブルーの奥からたゆとうように現れるのは、奥深くはるかに根源的な世界が私たちに教えてくれる永遠の時間と精気である。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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