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河合智子《As If》gallery N(名古屋)で2024年3月9-24日に開催

gallery N(名古屋) 2024年3月9〜24日

河合智子

 河合智子さんは愛知県生まれ。2001年、アカデミー・オブ・アート・ユニバーシティー(米国サンフランシスコ)卒業。平成28年度文化庁新進芸術家海外研修員(ドイツ)。

 ドイツ・ベルリンのアートセンター「クンストラーハウス・ベタ二エン」のインターナショナル・スタジオ・プログラムに2017年から2018年まで参加した。現在も活動拠点はベルリンである。

 主な展覧会に、「河合智子 森の/バロック」(岐阜県揖斐川町、春日森の文化博物館、2023年)、日本の新進作家展vol.15「小さいながらもたしかなこと」(東京都写真美術館、2018年)、「On the Origin of Springs/泉の起源について」(ドイツ・ベルリン、クンストラーハウス・ベタニエン、2018年)などがある。

河合智子

 2021年オーストリア・ウィーンのVerlag für moderne Kunstから出版された作品集「Intimacy of Paradise」がドイツ写真集賞2021銀賞を受賞。

 gallery Nでは、2015年にも個展を開いている。

As If

 写真を中心に、映像、インスタレーションを通じて、人間と動物・植物の分類、都市と自然の関係性や、生命のあり方を考察し、概念や意味、価値を問い直すことで、自然や生命、社会構造に対する認識を揺さぶる作品をつくっている。

 ドイツや日本の動物園を撮影する中で、人間と動物という二項対立の関係を意識し、そこから人間が動物(自然、生命)を客体化することについて洞察を深める作品が生まれた。

河合智子

 動物を撮影する中で、人間が檻の中で演出された動物を見るという構造に潜む幻想を意識させ、人間と自然の関係を措定し直すような問題提起をしているのである。

 それは、言うなれば、近代の認識形式としての視覚優位性を、まさに現代の写真、映像など視覚芸術そのものによって、問い直すことでもある。

 今回は、博物館で撮影した写真のシリーズと、生き物のような活火山の活動の様子を捉えた映像作品が出品されている。

 写真は、ベルリンの博物館で撮影されている。この中には、剥製と分かる写真のほかに、毛で覆われた動物の体表面のイメージを合成したものもある。

河合智子

 動物の剥製を室内のイメージとオーバーラップさせた作品が、違和感とともに、あたかも生きているように見える一方で、剥製の局所を合成したイメージは、極めて装飾的で、生命の残像をにじませながらも奇妙なほどに不均衡感を増幅させている。

 電子計測機器を撮影した作品や、抽象絵画を想起させるイメージもある。計測機器は、動物標本を電子データ化して記録する作業に関わるものらしい。

 動物標本がデジタル化された場合、それはデータでしかないものだが、逆説的に、物質として朽ちることもなく、デジタルデータとして生き続けるともいえる。

 ここでは、剥製や機械、データが等価なイメージに置き換わったような展示によって、生体から剥製、その一部としての装飾性、さらにはデータという変化の中で、生と死が捉え直されているのではないだろうか。

河合智子

 つまり、人間の立場から動物を分類し、管理し、定義し、デジタル化する営みをフラットなイメージに還元して俯瞰することで、既存の認識を転覆させているように思える。

 人種差別、進化主義に根ざしたかつての「人間動物園」はもとより、博物館や動物園は、植民地主義や西洋中心主義、自文化中心主義をはじめ、世界に対するさまざまな人間の眼差し、思考、認識、欲望が潜伏している。

 河合さんの作品は、動物(自然)をカメラを通して見るという行為を契機に、人間の認識を問い直し、人間を含めた世界をグラデーションとして捉え返すような視線がある。

 世界を見ることの曖昧さを、写真というメディアの表層によって更新する。人間がつくった社会構造、制度、あるいは都市や自然と、その変化、テクノロジーの進展を受け入れつつ、既成の概念に囚われないスタンスは至ってしなやかである。

河合智子

最後までお読みいただき、ありがとうございます。(井上昇治)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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