清須市第10回はるひ絵画トリエンナーレ 6月20日まで

 愛知県清須市の同市はるひ美術館で2021年4月25日~6月20日、「第10回清須市はるひ絵画トリエンナーレ」が開かれている。

 大賞は、福嶋さくらさんの《stolen landscape》。準大賞は、藤森哲さんの《tableau 2021-02(Kushan)》と、古橋香さんの《草色と午後、忘れること》。

 1999年のはるひ美術館開館を機に、新進作家の発掘と顕彰を目的に、「夢広場はるひ絵画展」として始まった。ビエンナーレからトリエンナーレへの変更、審査員の交代などを経て、回を重ねている。

 10回目を迎えた今回は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴う困難の中、開催にこぎつけた。

 応募は370人の554点。コロナの影響だろうか、第6回(2009年)以降では、最も少ない。会場には、このうち入選以上の28点を展示している。

 全体的には、オーソドックスな絵画が多く、落ち着いた印象。そうした中で、審査員が1点ずつ賞を与える審査員賞に選ぶ人の個性が出ていて、面白い。

審査員

 加須屋明子さん(キュレーター・批評家・京都市立芸術大学教授)、杉戸洋さん(画家・東京藝術大学准教授)、吉澤美香さん(画家・多摩美術大学教授)、鷲田めるろさん(十和田市現代美術館館長)、高北幸矢さん(造形作家・清須市はるひ美術館館長)

入賞作品

大賞 福嶋さくら《stolen landscape》

福嶋さくら

 福嶋さんは1987年、 熊本県生まれ。武蔵野美術大学造形学部 油絵学科卒業、武蔵野美術大学大学院造形研究科美術専攻油絵コース修了。

 日常的な場面に心象的な要素を加え、少し神秘的な、そして何よりとても透明感のある光景を描いている。

 今回の作品のモチーフは、民家の庭先から花を盗む人がいるという話題がきっかけとなっている。

 美しい階調の空とどこまでも続く砂漠のような大地の左手前に、生垣のように生い茂る葉が描かれ、地面にはチューリップの鉢植えが置かれている。チューリップは盗まれた花を象徴しているのか、枯れたように灰色になっている。

 福嶋さんは、アクリル絵の具と刺繍でイメージをつくる。

 絵肌を丁寧に塗り分け、地面に落ちる影の描写も美しい。今回は、チューリップの部分が刺繍になっているが、見落としてしまうほど、絵に溶け込んでいる。

準大賞 藤森哲《tableau 2021-02(Kushan)》

藤森哲

​ 藤森さんは1986年、神奈川県横浜市生まれ。筑波大学人間総合科学研究科博士前期課程芸術専攻洋画領域修了。

 油彩でモノクロームの塊のようなものを描いている。実物を近くで見ると、イメージは繊細で複雑である。

 表面のダイナミズムのみならず、多次元的な宇宙のように、空間が層をなしてねじれ、流動化したエネルギーが混沌として不穏な様相を見せている。絵画は「リアル」の増幅器だという。この虚構の世界がリアリティーということか。

準大賞 古橋香《草色と午後、忘れること》

古橋香

古橋さんは1982年、東京都生まれ。2004年 筑波大学芸術専門学群美術専攻卒業 。

 手前のぼやけたフェンス越しに覗く風景を描いたように見えるが、遠景は現実的なものというより、さまざまな色彩、筆触によって浮かび上がった形象に近い。

 色彩や絵の具の塗りの厚さ、筆触の濃淡や方向、にじみなどが相互の関係によって注意深く選ばれている。手前のフェンスのグリッドによって微妙な均衡と距離感、たゆとうような変化が感じられる絵画空間になっている。

審査員賞【加須屋明子】MITOS《線》

MITOS

 愛知県出身。2008年、名古屋造形大学美術学科卒業。

審査員賞【杉戸洋】髙田裕大《開拓者》

髙田 裕大

 1985年、富山県高岡市生まれ。2008年、金沢美術工芸大学卒業、2010年、愛知県立芸術大学大学院修了 。

審査員賞【吉澤美香】寺本明志《Patio – 踊る人-》

寺本 明志

 1992年、神奈川県出身。2015年、多摩美術大学美術学部絵画学科油画専攻卒業、2017年、多摩美術大学大学院美術研究科博士前期課程絵画専攻油画研究領域修了。

審査員賞【鷲田めるろ】内田涼《Flake》

内田 涼

 1989年、静岡県生まれ。東京都在住。

審査員賞【高北幸矢】瀨川寛《耕地/俯瞰 中標津町》

瀨川 寛

きよす賞/入選 石川丘子《カーテン、左寄せ》

石川 丘子

 2004年、多摩美術大学絵画学科版画専攻卒業、2006年、多摩美術大学大学院絵画研究科卒業、2013年、中国美術学院版画科 大学院卒業。

入選

 野々山 耕、塩原 有佳、末松 由華利、若尾 武幸、阪本 結、ぴろちゃん、柳澤 学海、濱口 綾乃、近藤 太郎、長尾 圭、小野 仁美、清水 彩瑛、矢橋 頌太郎、栗原 光、厚地 朋子、中野 彩愛、
谷内 春子、植田 陽貴、早川 美香

厚地朋子《盆地的空間認識#2》

 1984年、生まれ。2008年、京都市立芸術大学美術学部美術科油画専攻卒業、2010年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画領域油画修了。

阪本結《地元のサンプリング(久世)#1》

 2018年、京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻油画修了。

小野仁美《綯い交ぜる》

 1993年、東京都生まれ。2016年、武蔵野美術大学造形学部油絵学科油絵専攻卒業。2018年、武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コース修了。

佳作(図録掲載のみ)

 伊藤 実穂、小倉 義夫、阿部 亮平、河端 政勧、中森 順一、齊藤 拓未、野田 秀樹、岡野 敦美、伊吹 拓、櫻井 想、𠮷岡 知秋、稲田 翔平、秋山 萩彦、梶浦 隼矢、山下 智子、加藤 賢一、白鳥 日和子、村田 茜、辻原 周、設楽 陸、山口 由葉、竹内 章訓、近藤 佳那子、下村 栞由、坪坂 萌、別所 洋輝、中山 梨絵、むらた ちひろ、MC ドラゴン、寺脇 扶美

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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