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生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」 7月10日から名古屋市美術館で

グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生

 無名の農婦から70代で本格的に絵を始め、 温かいまなざしで身近な出来事や自然を描いた画家、グランマ・モーゼスの作品を集めた生誕160年記念「グランマ・モーゼス展―素敵な100年人生」が2021年7月10日~ 9月5日 、名古屋市美術館で開催される。 国内で開催される回顧展としては16年ぶり。

 自然や素朴な暮らしを愛し、たくましく誠実に生きたグランマ・モーゼス。その独特の画風とユニークなキャリアは、大恐慌や第二次世界大戦を経験し疲弊していた米国の人たちの心をとらえた。日本でも、1980年代に初めて紹介されて以来、根強いファンがいる。

 本展は、第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」、第2章「仕事と幸せと」、第3章「季節ごとのお祝い」、第4章「美しき世界」の4章で構成。

 最初期の作品から100歳で描いた絶筆まで、愛用品や関連資料を含め約130点を展示する。

主な見所

(1)米国の国民的画家であり、日本でも人気の高いグランマ・モーゼスの画業と人生をたどる16年ぶりの本格的な回顧展。

(2)日本初公開となる《村の結婚式》、遺作《虹》を含む代表作品を展示する。

(3)80歳で個展を開催し、国民的画家になるまでの軌跡を、作品だけでなく、写真、愛用品、彼女が遺した言葉と併せて多角的な展示で紹介する。

(4)101歳まで生き抜いたモーゼスの人生を通じて、「人生100年時代」といわれる今日の私たちに勇気と幸せに生きるヒントを伝える。

モーゼスおばあさん(グランマ・モーゼス)

  米国人なら誰もが知る国民的画家、アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス(1860-1961年)は、1860年9月7日、ニューヨーク州東部に生まれた。

 人生の大半を農家の主婦として家庭をきり盛りして暮らしたが、70代にリウマチの悪化で得意の刺繍絵が上手くいかなくなると、絵筆を手に作品を描き始めた。

 ニュー・イングランドの自然や農村の暮らしを素朴な筆致で描いた作品は、偶然、村を訪れたコレクターの目にとまり、80歳のとき、ニューヨークで初個展。たちまち人々の心を打ち、人気作家となった。

 グランマ・モーゼス(モーゼスおばあさん)との愛称により国内外で作品が展示され、大統領から表彰を受けるなど著名になってからも、モーゼスは変わらず農家の一主婦としての堅実な暮らしを守った。

 101歳で亡くなる年まで1600点以上の作品を描き続けた。

展示構成

第1章「アンナ・メアリー・ロバートソン・モーゼス」

 グランマ・モーゼスのほとんどの作品は、ニューヨーク州とヴァーモント州にまたがる田園とその土地の人々の日常を描いている。モーゼスは、生涯を通じて暮らし、愛した身近な風景を変わることなく描き続けた。第1章ではモーゼスと縁のある場所や人生の転機となった作品、また絵画を始める前から得意とした刺繍絵などにより、グランマ・モーゼスの人物像を紹介する。

第2章「仕事と幸せと」

 モーゼスの絵は、当時の人々が自力でやらなければならなかったさまざまなことを教えてくれる。キルトや石鹸、ロウソク作り、作物の収穫など。こういった活動の多くに人々の集いが伴った。つまり仕事とは、仲間意識を育む楽しい機会でもあった。こうした精神は、結婚式や引越しを手伝うといった地域の行事にも現れる。第2章ではモーゼスが描く家族や村の人々との素朴な日常の暮らしを紹介する。

第3章「季節ごとのお祝い」

  モーゼスは農場の暮らしについて、“毎日ほとんど変化がないけれど、季節だけは移ろう”と語っている。だからこそ、村の人々はそうした季節の微妙な変化を大切にし、そして季節ごとの特別な行事があった。春の訪れの予兆として楓(かえで)の樹液がめぐり始める2月には、樹液からメープル・シロップと砂糖を作るシュガリング・オフ。夏にはピクニック。晩夏から初秋にかけてはアップル・バター作り。そして秋と冬にはハロウィーンやサンクスギビング、クリスマスと続く。

第4章「美しき世界」

  グランマ・モーゼスの絵で最も大切なテーマは、自然の変わらぬ美しさ。自然は過酷な仕打ちをすることもある、けれども人間が理解と敬意をもって自然と接するならば恵みを与えてくれる存在だと、農婦だったモーゼスは知っていた。自然は穏やかで平穏な時も、混乱と脅威と化す時もある。モーゼスは自然の静と動、そのどちらにも敬意を表し、そして目の前に映る風景をとらえた。第4章では自然を主題にした作品を紹介する。そして、100歳で描き絶筆となった《虹》も。

愛用品・資料

  今回は、画家グランマ・モーゼスが描いた作品だけでなく、彼女のお気に入りや手作りのものなど、モーゼスおばあさんのプライベートを垣間見ることができる品々のほか、モーゼスの偉業や当時の影響力を示す資料など約50点を併せて展示する。特に、モーゼスが絵の制作時に実際に使っていたテーブルは、これまで米国国外に出品されたことがない貴重な品で、両脇の支えの板にはモーゼスにより風景画がほどこされている。

会期・観覧料

会期:2021年7月10日(土)~9月5日( 日)
開館時間:午前9時30分~午後5時、7月23日を除く金曜日は午後8時まで、いずれも入場は閉館30分前まで
休 館 日:月曜日(8月9日は開館)※8月9日から8月15日は休まず開館
観 覧 料:一般:1,500円( 前売・団体1,300円 )、高大生:1,000円( 同800円 )、中学生以下:無料   ※その他、各種割引あり

展覧会解説会

①7月18日(日) 午後2時~(約60分)
②8月21日(土) 午後2時~(約60分)
講師:井口智子(名古屋市美術館学芸課長)
会場:名古屋市美術館2階講堂
定員:90人(先着順。午後1時30分に開場、定員になり次第締切)入場無料。ただし聴講には展覧会観覧券(観覧済みの半券も可)が必要。

グッズ

 展覧会に合わせ、公式図録、オリジナル商品など、さまざまなグッズが販売されている。オンラインショップも利用できる。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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