名古屋のカルチャーWEBマガジン「アウターモーストナゴヤ」では、レビュー、リポート、トピックスなどを掲載します

ギャラリーキャプションのenvelope as a door 2020年最終第9弾 藤本由紀夫さん

GALLERY CAPTIONからのメールより

 GALLERY CAPTION(岐阜市)が、2020年5月下旬に始めた郵便を介したプロジェクト「envelope as a door」の2020年最後となる第9弾、藤本由紀夫さんの作品受け付けを2020年12月19日午前10時から始める。

第9弾 藤本由紀夫

 2020年の最後となる藤本由紀夫さんの作品は「栞」。「ECHO」、「FATE & CHANCE」、「SUGAR」、「TARUPHON」という4つの作品シリーズを記録したリバーサルフィルムで作られ、全20点がある。

 それぞれのフィルムは、撮影時の露出やアングル、作品の内容とも異なる。パッケージのペーパー・フォルダーも、ひとつひとつ藤本さんの手作りである。

藤本由紀夫

 今年の4〜5月、自粛期間中を使って、作品を撮影したポジフィルムがそのままになっていたので、スキャナーでデジタルデータに取り込む作業をしていた。久しぶりに手にしたフィルムは手に程良いしなりと、両サイドに開けられたパーフォレーションのフォルムの美しさ、そして小さな薄い空間に透き通って見える画像のデジタルにはない存在感、それらがとても新鮮に感じられた。
 
 稲垣足穂の短編集「ヰタ・マキニカリス」のデラックス版には35mmの映画フィルムの栞がついていたことを思い出し、栞にしてみることにした。
 
 パーフォレーションの穴にリボンを通して結ぶと、そのリボンはまるで箒星の尻尾のようになり、本の頁の間を擦り抜けるような栞が出来上がった。
 
藤本由紀夫

GALLERY CAPTIONのWEBサイトより
藤本由紀夫

藤本由紀夫『comet – ECHO, FATE & CHANCE, SUGAR, TARUPHON』
リバーサルフィルム、リボン
folder size/ 12.4×4.5(cm)
2020年
​*オリジナル・パッケージに、直筆サインが入る。
¥3,500

envelope as a door

 envelope as a doorは、ギャラリーと作家、そして封筒を受け取る人とを結ぶメール・アートのプロジェクト。第1弾は藤本由紀夫さん、第2弾は寺田就子さん、第3弾は大岩オスカールさん、第4弾は木村彩子さん、第5弾は金田実生さん、第6弾は寺田就子さん、第7弾は植村宏木さん、 第8弾は中村眞美子さんだった。

 新型コロナウイルスの影響で、世界中の人々の生活と健康が脅かされている中で企画された。今後、ポストコロナの新常態の中で、オンラインによるコミュニケーションや、インターネット配信など、新しい生活様式が急速に日常に浸透し、人間が新たな環境でどう生きるか、芸術と人間との関わりはどうなるのかが問われている。
 「envelope as a door」は、そんな現在を見据えたプロジェクトである。

 90年代の初め、インターネットが話題になり出した頃、私は手紙というものは20世紀中になくなってしまうのではないだろうかと考えていたことを、つい最近思い出した。

 直筆で便箋に築かれた世界が折り畳まれ、封筒という二次元ワールドに封印され、世界を旅して、遠い異国の友人のもとに届く。その友人は、封を開けることにより、未知の世界に突然の旅に出る。

 そうである。「封筒」とはあの「どこでもドア」と同じものなのである。という事実を、最近世界を騒がせたニュースを見ていて教えられた。

藤本由紀夫 「26 philosophical toys」 2005年

GALLERY CAPTIONのWEBサイトより

 「envelope as a door」は、からっぽの封筒をギャラリーの空間に見立て、作家の作品を封書で届ける。ギャラリーの入り口の扉を開けるように、封筒を開くと、そこに作品がある。人が作品と出合い、そこから、さらなる出合いへと導かれる。

 GALLERY CAPTIONは、オンライン・ショッピングの仕組みと変わらないと、説明する。それでも、そこには、ギャラリーだからこそできること、作家とギャラリーの真摯なメッセージとともに、美術作品の可能性、人間を豊かにする小さな時間と空間の大切さが提示されているのではないだろうか。

 それは、コロナによって世界の見え方、人間の生活と生き方が変容する中で、人間の価値、人間と世界との関わり、過去と現在、未来をつなぐ可能性を問い直す試みでもある。

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伝えること、文化芸術とメディアについて

1980年代から、名古屋、東京、関西で文化芸術を見てきた。新聞文化面、専門雑誌、「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、自ら新聞文化欄を編集、美術、映画、演劇などの記事を書いてきた。2000年代に入ると芸術批評誌を立ち上げ、2019年にはWEBメディアを始めた。文化芸術とメディアの関係、その歴史的展開、メディアリテラシー、課題と可能性、レビューや伝わる文章の書き方、WEBメディアの意義、構築方法について、若い世代に伝えたいと考えています。

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