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「アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの 」愛知県美術館で2024年7月18日-9月23日に開催

アンナ・ハルプリン《シニアズ・ロッキング》2005年/2010年 Courtesy of ZAS Film AG

椅子という⾝近な存在から社会や人間の有り様を考察

 愛知県美術館で2024年7月18日〜9月23日、「アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの」が開催される。

 椅子の機能は、座る姿勢を支えるというだけにとどまらない。権威の象徴として表されることもあれば、安楽や拘束のための道具となることもある。また、複数が集まることでコミュニケーションの場を⽣み出すこともある。

 椅子は多くのデザイナーや建築家の創造性を喚起する究極のテーマであると同時に、アーティストにとっても魅力的なモチーフとなってきた。

宮永愛子《waiting for awakening -chair-》2017年
写真:木奥恵三 ©️MIYANAGA Aiko Courtesy of Mizuma Art Galler
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 アーティストは、椅子と結びつく多様なイメージをとらえ、作品を通じて社会の中の不和や矛盾、個人的な記憶や他者との関係性などを浮かび上がらせてきた。

 現代美術における椅子は、日常で使う椅子にはない極端なあり⽅、逸脱したあり⽅によって、私たちの思考に揺さぶりをかける。

 本展では、こういった作品を「アブソリュート(絶対的・究極的)」な椅子と呼び、主に戦後から現代までの平面、立体、写真、映像ダンスなど幅広いジャンルの約80点を集めた。

 それぞれの「椅子なるもの」の表現に着目し、椅子という⾝近な存在から社会や人間の有り様を考察する。

潮田登久子《マイハズバンド》1981年/2023年、作家蔵

開催概要

展覧会名:アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの
会  期:2024年7月18日(木)〜9月23日(月・振休)[59日間]
開館時間:10:00-18:00 金曜日は20:00まで(入館は閉館30分前まで)
休 館 日:毎週月曜日(ただし8月12日[月・振休]と9月16日[月・祝]、9月23日[月・振休]は開館)、8月13日(火)、9月17日(火)
会  場:愛知県美術館(愛知芸術文化センター10階)
〒461-8525 名古屋市東区東桜1-13-2
美術館ウェブサイト https://www-art.aac.pref.aichi.jp/
チケット:⼀般1,500(1,300)円 ⾼校・⼤学⽣1,300(1,100)円 中学⽣以下無料

※( )内は前売券および20名以上の団体料金
※上記料金で本展会期中に限りコレクション展も見ることができる
※⾝体障害者⼿帳、精神障害者保健福祉⼿帳、療育⼿帳(愛護⼿帳)、特定医療費受給者証(指定難病)のいずれかがある人は、各券種の半額で見ることができる。また付き添いの人は、各種⼿帳(「第1種」もしくは「1級」)または特定医療費受給者証(指定難病)のある場合、いずれも1 名まで各券種の半額で見ることができる。当日会場で各種⼿帳(ミライロID可)または特定医療費受給者証(指定難病)を提⽰。付き添いの人は申し出る
※学⽣は当日会場で学⽣証を提⽰

主  催: 愛知県美術館、中日新聞社
協  力:株式会社国際デザインセンター
問合せ先:愛知県美術館 TEL 052-971-5511(代)

石田尚志《椅子とスクリーン》2002年

見どころ

アーティストによる椅子の探求。なぜ椅子は魅力的なのか?
 椅子に魅了されてきたのはデザイナーや建築家だけではない。アーティストもまた、椅子というモチーフに惹きつけられてきた。

 既製品を美術作品に⽤いた最初の「レディメイド」であり、戦後美術のあり⽅を決定づけたとされるマルセル・デュシャンの《自転⾞の⾞輪》(1913年)に、椅子が使われていることは興味深く思われる。

 本展では、この作品を原点として扱い、戦後から現代までのアーティストによる椅子の表現に着目し、その根源的な機能や象徴の読み解きを通して私たち人間の営みや社会について考える。

日本初公開! ベルギーを代表するダンス・カンパニー、ローザスのインスタレーション
 2013年に開始された《Re: ローザス!》は、ローザスの記念碑的な作品《ローザス・ダンス・ローザス》の中でも出色と言える椅子を使ったパートの振り付けのレクチャーを公開し、このダンスを踊った映像を募集するというプロジェクト。

ローザス《Re: ローザス!》2013-2024 年(継続中)、アンネ・ファン・アールスホットによる《Re:ローザス!》ワークショップ「マリア・ボードシャプ・リセウム(MABO)が《ローザス・ダンス・ローザス》を踊る」カーイテアター、ブリュッセル、2013年 ©️Anne Van Aerschot Courtesy of Rosas

 本展では、世界中から投稿された700本近い動画の中から半数の約350本をインスタレーションとして構成したものを、日本で初公開する。

 会期中は、ローザスの創設メンバーの⼀人である池田扶美代氏をベルギーから講師として招聘し、⼀般の⽅が参加できるダンスワークショップを開催。愛知芸術文化センターのパブリック・スペースで成果発表(フラッシュモブ)を行い、撮影した映像をインスタレーションの⼀部として展⽰する。

国内外のアーティストによる新作を出品。日本初出展のアーティストも
 日本初出展となるミシェル・ドゥ・ブロワンによる新作《樹状細胞》は、日本国内で入⼿した会議椅子を素材として、アーティストが日本に滞在して制作した。球体状に組み上げられた約40脚の椅子は、ヒエラルキーのない共同体のようにも、外部から⾝を守る細胞のようにも見える。

ミシェル・ドゥ・ブロワン《樹状細胞》2024年

 檜皮⼀彦による新作は、自⾝も普段から使⽤する⾞椅子の、⾞輪の回転を動力としてマフラーを編む「⾞いす編み機」で、名古屋の街を観測するプロジェクト。「⾞いす編み機」を押しながら街を歩くと、地面の凸凹やバリアによって⾞椅子が振動し、できあがるマフラーの目地にはほつれや歪みが⽣じる。檜皮は名古屋の観光スポットを10時間かけて歩き、街の起伏をマフラーに記録した。

檜皮一彦《walkingpractice/CODE: Evacuation_drills[SPEC_MOMAS]》2024年、作家蔵

 副産物産店は、埼玉と愛知のアーティストのスタジオや美術⼤学、そして会場となる埼玉県立近代美術館と当館を訪れて廃材を回収。展⽰会場で来場者が座って休むことができる椅子を制作した。特に愛知県美術館所蔵のオーギュスト・ロダン《歩く人》を輸送するために使われていた箱(クレート)を⽤いた作品に注目。

副産物産店《Absolute Chairs #1_rodinʼs crate》2024年、作家蔵

 その他に、シンガポールの住宅街にある敵対的建築物、いわゆる「排除アート」を飾り付けて撮影したダイアナ・ラヒムも、日本初出展のアーティストである。

ダイアナ・ラヒム《インターベンションズ》2020年-、作家蔵

関連イベント

ダンスワークショップ「《Re: ローザス!》を踊る!」

 ローザス創設メンバーの⼀人・池田扶美代を講師として招聘。本展出品作《Re: ローザス!》のための椅子を使ったダンスを踊り、撮影した映像が作品の⼀部として展⽰される。

[日時]
・7月23日(火)15:00-16:30 レクチャー(Aグループ)
・7月24日(水)10:30-12:00 レクチャー(Bグループ)、15:00~16:30 レクチャー(Cグループ)
・7月25日(木)13:30-16:00 成果発表(全グループが集まり、リハーサル・ダンス発表・動画撮影)
[講師]池田扶美代
[会場]愛知芸術劇場⼤リハーサル室(愛知芸術文化センター地下2階)
[対象]小学校4年⽣以上のどなたでも
※レクチャー(7月23日もしくは24日)と成果発表(7月25日)の2日ともに参加できる人が対象
[定員]各回30名
 ※参加無料・要申込(先着順、申込⽅法については愛知県美術館ウェブサイトから)
[申込締切]7月9日(火)
[共催]愛知県芸術劇場
[後援]ベルギー⼤使館

[同時期開催]愛知県芸術劇場「池田扶美代―Rosasレパートリークラス」
日程:7月21日[日]、7月22日[月]、7月23日[火]、7月24日[水]、7月25日[木」
対象:ダンス・舞台経験者(ジャンル不問)で、全日程に参加可能な人
共催:愛知県美術館
主催・問い合わせ先:愛知県芸術劇場 052-211-7333

ワークショップ「walkingpractice / CODE: Knitting_record [SPEC_ APMoA]

 檜皮⼀彦(本展出品作家)と共に、⾞椅子の⾞輪の回転を動力にしてマフラーを編む「⾞いす編み機」を連れて名古屋の街を歩く。「⾞椅子編み機」は地面の凸凹を目地の乱れとしてマフラーに記録する作品。

[日時]7月27日(土)10:30~12:30、15:00~17:00
[対象]どなたでも
「集合場所]愛知県美術館ロビー
[定員]各回8名
 ※要申込(先着順)
[申込締切]7月13日(土)

ワークショップ「副産物産店と椅子なるものを作ってみよう」

 副産物産店(本展出品作家、矢津吉隆・⼭田毅)と⼀緒に、本展の開催地となった埼玉と愛知のアーティストのアトリエや美術⼤学で収集した廃材/副産物を使って、座れそうなものを作る。

 2人のこれまでの活動や作品についてレクチャーを聞いた後で、いろいろなかたち・素材の副産物でどのようなものができるか考える。最後は自分が作った「椅子なるもの」について解説する。

[日時]8月18日(日)13:30-15 :30(13 :00開場)
[対象]小学校4年⽣以上のどなたでも
[集合場所]アートスペースE・F(愛知芸術文化センター12階)
[作業場所]チケット売り場横スペースおよび屋外庭園(愛知芸術文化センター10階)
[定員]15名
 ※参加無料・要申込(先着順)
[申込締切]8月4日(日)

対談「木下知威×伊藤亜紗 椅子と芸術と⾝体」

 木下知威(本展カタログ寄稿者、歴史学者)と伊藤亜紗(美学者)が本展について語り合う。

[日時]8月31日(土)13:30-15:00(13:00開場)
[登壇者]木下知威(本展カタログ寄稿者、歴史学者)、伊藤亜紗(美学者)、モデレーター:鵜尾佳奈(愛知県美術館学芸員)
[会場]アートスペースA(愛知芸術文化センター12階)
※聴講者向け⼿話通訳あり
[定員]180名
※申込不要、聴講無料

ギャラリートーク(学芸員による展示説明会)

[日時]8月11日(日)、8月17日(土)、9月14日(土)各回11:00-11:40、7月19日(金)18:30-19:10
[会場]愛知県美術館展⽰室内
[定員]各回先着30名

渡辺眸《東大全共闘 1968-1969》1968-69年/2014年、作家蔵

図録『アブソリュート・チェアーズ 現代美術のなかの椅子なるもの』

[価格]3,300円(税込)
[頁数]172頁(カラー116頁、モノクロ56頁)
[論考執筆]建畠晢(埼玉県立近代美術館館長)、⼭口惠里子(筑波⼤学教授)、木下知威(東京工業⼤学)、佐伯綾希(埼玉県立近代美術館学芸員)、鵜尾佳奈(愛知県美術館学芸員)
[デザイン]⼤溝裕(Glanz)
[編集・制作・発行]平凡社

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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