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愛知県芸術劇場のサウンドパフォーマンス・プラットフォーム特別公演 安野太郎ゾンビ音楽『大霊廟IV -音楽崩壊-』第23回「佐治敬三賞」受賞

サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎 ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ-音楽崩壊-』(C)丸尾隆一

愛知県芸術劇場 として3回目の受賞

 愛知県芸術劇場が2023年10月に小ホールで上演した「サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ -音楽崩壊-』」が第23回佐治敬三賞(2023年度)を受賞した。

 同劇場の自主事業では、第15回の「トム・ジョンソン《4音オペラ》日本語版世界初演」、第17回の「三輪眞弘+前田真二郎 モノローグ・オペラ『新しい時代』」以来3回目の受賞となる。

サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎 ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ-音楽崩壊-』(C)丸尾隆一

サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎 ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ-音楽崩壊-』(C)丸尾隆一

 同賞は、国内で実施された音楽を主体とする公演の中から、チャレンジ精神に満ちた企画でかつ公演成果の水準の高いすぐれた公演に贈る賞として、2001年から公益財団法人サントリー芸術財団により実施されている。

 受賞した本公演は、作曲家で、愛知県立芸術大学准教授の安野太郎(やすの・たろう)が「ゾンビ音楽」で音楽大学の改革を目指す公演として開催した。

 「ゾンビ音楽」のプロジェクトは、安野のオリジナル楽曲を自身が製作した機械で自動演奏する音楽作品として、2012年からスタート。第58回ヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表作家の一人として選出されるなど、「ゾンビ音楽」は近年世界的な評価を得ている。

サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎 ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ-音楽崩壊-』(C)丸尾隆一

 4回目となる今回のテーマは「音楽崩壊」。 音楽大学で教鞭を執ることになった安野は、音楽家を輩出し続ける音楽大学と音楽家の経済的自立を許さない社会の矛盾に違和感を覚え、創作をスタートさせた。

 安野自身の経験や音楽に携わる人々へのインタビューを通じて、一握りの音楽家を無数の屍の上に産み出そうとする「音楽大学」と「音楽教育」の闇を本作品で具象化した。

サウンドパフォーマンス・ プラットフォーム特別公演 安野太郎 ゾンビ音楽 『大霊廟Ⅳ-音楽崩壊-』(C)丸尾隆一

受賞に寄せて

作曲・作・演出などを担当した安野太郎さんの受賞コメント

安野 太郎_01(C)早瀬将大

安野太郎(C)早瀬将大


 『大霊廟 IV -音楽崩壊-』は悩ましい作品です。それだけに素直にこの受賞を心の底から喜んでいいのか分からない自分がいます。ただ、チャレンジ精神に満ちた企画という点ではこの演目が受賞することには意味があると思うので、素直に喜びます。

 これからの活動で真価が問われてくると思うので、さらに精進していきたいと思います。本気で世界を変えたいと思っています。

 オーディエンスのみなさまはこれからも応援よろしくお願いします。

 最後に、この公演に協力してくれた全ての出演者、支えてくれたスタッフ達に感謝します。さらに、コンセプト面から並走してくれた小野寺啓、テクニカル面から並走してくれた渡部景介に最大級の感謝を捧げます。

贈賞理由

(公益財団法人サントリー芸術財団ウェブサイトより抜粋)

 安野太郎がこれまで継続してきた「ゾンビ音楽」は、近年、あらたな形のパフォーマンスに変化している。昨年から彼がテーマにしているのは、「音大生のキャリア構築」という、ある意味ではきわめて非芸術的な問題。実際に公演に足を運んでみれば、彼はふいごを踏み、キックボクシングで痛めつけられ、仲間とともに行先のよくわからないトークを行なうばかり。その過程で特に鋭い知見が披露されるわけではないし、そもそも「ゾンビ音楽」が鳴り響く瞬間も、以前に比べてかなり少なくなっている。

 ある意味では、相当に「退屈」な公演であるということも可能だろう。しかし、小器用に流行を取りいれるのとは正反対に、自らの内奥に湧きあがる疑問に、「ゾンビ音楽」というメディアを借りながら、かたちを与えようとする点において(それは本当に身体的な「運動」でもある)、この公演は容易には真似のできないオリジナリティがある。

 もちろん破天荒な公演だけに、選考委員の受け止め方は様々だった。演奏会という枠をダダイズム的なシアターピースによって打破しようとしたという評価もあれば、一昨年の「大霊廟III-サークル・オブ・ライフ-」に比べるとむしろ後退しているのではないかという意見もあり、賛否含めて多くの議論が交わされた。しかし、多様な議論を喚起すること自体が本公演の価値ともいえ、さらには安野太郎の一連の活動について、何らかのかたちで顕彰したいという思いについては全員が一致しており、佐治敬三賞を贈ることが決定した。

佐治敬三賞とは

 故・佐治敬三(元サントリー株式会社会長、元サントリー音楽財団理事長)の功績を記念して、2001 年度(平成 13 年度)から「佐治敬三賞」を創設いたしました。この「佐治敬三賞」は佐治の音楽への深い愛情と理解およびチャレンジ精神、パイオニア精神を承継し、新しい世紀のわが国における音楽公演活動の一層の振興を願って、氏の名を冠した新しい賞として制定します。この賞は、毎年わが国で実施された音楽を主体とする公演の中から、チャレンジ精神に満ちた企画でかつ公演成果の水準の高いすぐれた公演に贈られるもので、応募のあったものの中から選定されます。賞金は 200 万円。
 (公益財団法人サントリー芸術財団ウェブサイトより抜粋)

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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