See Saw gallery + hibit(名古屋) 2025年9月6日〜10月18日
原健
原健さんは1942年、愛知県生まれ。1969年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画科油画専攻修了。1975年、文化庁芸術家在外研修員。1987年から2008年まで東京造形大学美術学科絵画専攻教授を務めている。
1971年、パリ・ビエンナーレに出品。1972年、東京国際版画ビエンナーレ展出品。そのほか、多くの展覧会に参加している。
作品の特徴は、腕の動きの振り幅という身体性と結びついたストローク、そして、そのコントロールされた明快性、鮮やかな色彩とグラデーションである。

色彩豊かなストロークが連続しながら折り重なり、動きのある画面をつくっている。グラデーションが加わることで、そのダイナミズムが増していく。
両端が丸みを帯びた帯状形態が、作家の手の動きや呼吸、パルスの臨場感を想起させる一方、情動的な痕跡は排除され、制御が効いている。
この脳的でなく、身体的な制作が明瞭な美しさを生む。全体と部分、部分と部分の階層がないように、画面全体が等価に作られていることも大きいだろう。そうした統一性が強調されるため、グラデーションのぼかしの部分があっても、脆弱ではない。階調そのものが力強いのである。
重なり合うストロークの密度、奥のストロークが手前の半透明のストロークから見えるようなレイヤーの重なりによる美しさが絵画空間を洗練させている。
山村國晶
山村國晶さんは1942年、愛知県生まれ。名古屋市守山区在住。1966年、武蔵野美術大学美術学科油画専攻卒業。1986年から2011年まで金城学院大学教授を務めた。
名古屋、東京など各地で個展を開き、多くのグループ展に参加している。「山村國晶さんの画集 DAILY PAINTING 出版」も参照。

山村さんは画面の左上から、「山村」の「山」の字を描いて、それを起点に歪曲した帯状形態(ブロック)を画面に埋めるように増殖させることで画面を埋め尽くす。
帯状形態は輪郭を伴うので、その色彩の組み合わせと、画面のサイズによって、さまざまなバリエーションが展開される。
断片化され、変形したストライプが画面を均質に覆うことで、地と図の関係は無化され、帯状形態の稠密な広がりによって、空間性と平面性が拮抗するような感覚がもたらされている。

さまざまな戦後アメリカ絵画の影響が見て取れる。一例では、フランク・ステラのブラックペインティングを解体し、画面が踊るような色彩絵画に反転させたという見え方もする。
自由でユーモラス、そして、おおらかである。制作の作業は単調に見えながら、日本の伝統などさまざまな先人の文化を参照しながら、緻密な制作過程によって、豊かな画面をつくっている。スタートの「山」という字や、曲がったブロックを連鎖させていく手法が、日々の生きることと重ねられている。