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石崎誠和 植物ー時間 アインソフディスパッチ(名古屋)で2025年10月18日-11月8日に開催

AIN SOPH DISPATCH(名古屋) 2025年月10日18日〜11月8日

石崎誠和

 石崎誠和さんは1976年、石川県生まれ。金沢美術工芸大学美術工芸課程日本画専攻卒業、同大学院美術工芸研究科絵画専攻日本画コース修了、同博士後期課程美術研究領域絵画分野(日本画)修了。現在、同大学准教授。

 1999年から日展に出品し、すでに特選を2回受賞している(2020年、2023年)。現在は日展準会員である。

 同時に現代美術のギャラリー、AIN SOFH DISPATCH でも2015、2016年に個展を開いている。今回は久しぶりの同画廊での個展となる。

 石崎さんは、日本学術振興会の科学研究費助成を受けた研究成果報告展「半有-静かに変化するもの- 」を2024年、東京のAnpel Galleryで開いている。今回は、その中の主要作品である大作「桜」を完成形として名古屋で見せてくれる。

植物ー時間

 石崎さんは、写生をベースにしながら、時間とともに絶えずうつろいゆく生命の変化を、いかに画面に表現するかをテーマの1つにしているように思う。

 絵画として風景を再現し、合理的なリアリズムやイリュージョニズムを追究するわけでも、逆に平面性や岩絵具、墨を強調するわけでもない。作品はとても繊細である。

 「半有-静かに変化するもの- 」の図録に掲載された石崎さんの文章を読むと、北澤憲昭さんの著作に依っている箇所があるなど、院展、日展をはじめとする日本画の近代以降の制度論的な課題も明確に意識しながら、近代以前に遡るようにして日本の絵を研究しつつ、現在の日本画を深化させようとしていることがわかる。

 「桜」は、コロナ期の2020年4月から写生を始めている。変化する桜が主題である。一見して気づくのは、色彩を抑え、画面に広く、薄墨の滲み、溜まりの皮膜が覆っていることである。

 この水分で薄く溶いた淡墨は、和紙の表面に広がりつつ、繊維質にも滲むように静謐に浸透している。その自然にゆだねるように、墨線を延ばすように線を引き、不可視の運動性を引き出し、岩絵具で桜を描いた後に、さらに薄墨の層を重ねている。

 重なる微かな層によって、絵画空間が多元性、神秘性を帯び、色を薄め、むしろ滲むような墨の線を生かすことで、絵の中の桜という生命の自律性が浮かび上がっている。

 生死を反復するかのような揺らぎの姿が、即時的なたくましさ、生々しさ、強さより、生まれ、枯れていく自然のいのち、循環、輪廻の時間感覚にいざなうと言えばいいだろうか。

 自分の視点を固定化して、自我中心の遠近法的空間を構築することは避け、視点を身体から引き剥がして、多視点的な空間にすることで、ある種の観念性も希求している。

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