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『1640日の家族』伏見ミリオン座(名古屋)などで7月29日公開

7月29日(金) TOHOシネマズ シャンテほか全国公開
監督・脚本:ファビアン・ゴルジュアール 出演:メラニー・ティエリー、リエ・サレム、フェリックス・モアティ、ガブリエル・パヴィ 2021年/フランス/仏語/102分/1.85ビスタ/5.1ch/原題:La vraie famille/英題: The Family/日本語字幕:横井和子 配給:ロングライド © 2021 Deuxième Ligne Films – Petit Film All rights reserved. 

実話に基づく感動作

 4年以上の年月を一 緒に過ごした里親家族と“末っ子”の別離を描いた人間ドラマ『1640日の家族』が2022年7月29日、名古屋の伏見ミリオン座などで全国公開される。

 幸せな日々に突然訪れた家族のタイムリミット。少年時代の思い出をファビアン・ゴルジュアール監督自らが映画化した。里親制度を超えて、「家族とは何かを」を考えさせてくれる秀作だ。

 ストーリーは、生後18カ月の里子を迎えて6歳まで一緒に暮らしたという監督自身の経験と、出産直後に母親が亡くなり、父親が子どもと引き離されたという別の実話が基になっている。

 里親制度をサポートする組織や里親の役割もリアルに紹介され、子どもを育てる厳しさ、子どもの幸せを願う温かさがじわりと伝わってくる。

 複雑な愛情関係を脚本に落とし込む中で、『キッド』(1921年)、『クレイマー、クレイマー』(1979年)、『E.T.』(1982年)の傑作群が参照されている。深い愛で結ばれた絆と別れのエッセンスが作品の隅々まで行きわたっている。

ストーリー

 アンナ(メラニー・ティエリー)と夫のドリス(リエ・サレム)が里子のシモン(ガブリエル・パヴィ)を受け入れて、4年半がたった。

 にぎやかで楽しい日々が続くと思ってい た家族5人に、ある日、激震が走る。月に1度の面会交流を続けてきたシモンの実父エディ(フェリックス・モアティ)から、息子との暮らしを再開したいとの申し出があったのだ。

 エディには、生まれて間もないシモンを遺して妻が亡くなってしまった悲劇から立ち直れず、福祉に子どもを託した辛い過去があった。

 シモンを迎え入れるために個室を準備。日曜日の朝はミサに連れて行き、ケガや病気のないようにと心配りして、我が子以上に大切に“末っ子”を育ててきたアンナ。

 家族に戸惑いが広がる中、児童社会援助局は、週末をシモンが実父エディの家で過ごすように促すなど、家庭復帰の手続きを粛々と開始する。別々に暮らしていた父と息子は、ぎこちなくも、ゆっくりと距離を縮めていく。

 ギクシャクする家族。繊細なシモンは荒れる家族を不安そうに見つめていた。

 クリスマスが近い。家族は雪山のバカンスを楽しみにしていたが、シモンはエディの家へ行くことが決まった。5人のクリスマスを守るために、アンナは……。

フランスの里親制度から見える家族のかたちの今

 人権や児童福祉を重視するフランスでは、公的機関だけでなく、地域ぐるみで、困難な状況にいる児童と里親家族を支援する活動が展開されている。

 本作で、シモンが経験するように、週末は実の家族と過ごし、平日は里親の家庭で過ごすなど、柔軟な里親制度は日本でも注目を集めている。

 家制度のしがらみが抜けきらない日本では、実の親と過ごせない子が養子や里子として受け入れられる機会は少な く、施設で集団養育されることが多いのが現実だ。

 しかし、今、国は、家庭的な環境での生活が安定的な人格形成に役立つとして、施設養育から里親養育への転換を進め始めている。

 ファビアン・ゴルジュアール監督は、自身の経験について、「初めて里親となった母は、ソーシャルワーカーから“この子を愛しなさい、でも愛し過ぎないように”とアドバイスを受けた。しかし、愛情のさじ加減は難しく、その後、我が家で里子を受け入れることは二度となかった」と振り返っている。

 別離後、里子は実の家族とどこで、どんな人生を送っているのだろう。辛い別れを見つめ直した監督が到達したのは、今は一緒にいなくても、血がつながっていなくても、家族だった時間は消えないという事実。さまざまなかたちの家族にエールを送る物語である。

監督・脚本: ファビアン・ゴルジュアール

 1976年、フランス生まれ。2007年から2016年にかけて、6本の短編映画を監督し、2013年には『Le Sens de L’orien- tation』がクレルモンフェラン国際短編映画祭で審査員賞 を受賞。

 代理母出産を引き受けた女性を描いた初の長編映画『ディアーヌならできる』(2017年)は、マイ・フレンチ・フィルム・フェスティバルで映画監督審査員賞を受賞した。

 2019年には、エマニュエル・ベルンエイムの小説を脚色し、舞台「Stallone」を演出。フェスティバル・ドートンヌで選出され、フランス国内でツアーが組まれた。

出演

メラニー・ティエリー(アンナ)

 1981年、フランス生まれ。幼少期にモデルとして活動をスタートし、これまでにエルメスやイヴ・サンローランなどの 広告塔を務める。

 映画やテレビドラマでも活躍し、1998年には『海の上のピアニスト』に出演、一躍脚光を浴びる。

 『Le dernier pour la route』(2009年)ではセザール賞有望 若手女優賞を受賞した。

 主な出演作に、テリー・ギリアム監督『ゼロの未来』(2013年)やスパイク・リー監督『ザ・ファイブ・ブラッズ』(2020年・Netflix)などがある。

リエ・サレム(ドリス)

 1973年、アルジェリア生まれ。俳優・脚本家・映画監督。自身で監督・脚本・主演を務めた『Mascarades』(2008年)はセザール賞をはじめ、世界中の映画祭にノミネートされた。

 『カメラを止めるな!』(2017年 )のフランス版リメイクで2022年カンヌ国際映画祭オープニング作品の『キャメラを止めるな!』へも出演。

 その他の主な出演作に『負け犬の美学』(2017年)などがある。

フェリックス・モアティ(エディ)

 1990年、フランス生まれ。『LOL ~愛のファンタジー~』 (2008年)で長編デビューを飾り、『Télé Gaucho』(2012年)と『À trois on y va』(2015年)でセザール賞有望若手男優賞にノミネートされる。

 主な出演作に『シンク・オア・スイムイチかバチか俺たちの夢』(2018年)、『沈黙のレジスタンス ~ユダヤ孤児を救った芸術家~ 』(2020年)、『フレンチ・ディスパッチザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021年)などがある。

 監督としては短編『Après Suzanne』(2016年)でカンヌ国際映画祭短編映画パルム・ドールにノミネートされた。

ガブリエル・パヴィ(シモン)

 2014年生まれ。公園で遊んでいるところを、監督とキャス ティングディレクターに見いだされ、演技未経験にして本作で映画デビューを果たす。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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