八木一夫《ザムザ氏の散歩》1954 年 京都国立近代美術館蔵
八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の５人で結成
岐阜県美術館で2023年12月19日～2024年2月18日、「走泥社再考 前衛陶芸が生まれた時代」が開催される。
1948年に八木一夫、叶哲夫、山田光、松井美介、鈴木治の5人で結成された陶芸集団「走泥社」は、同人の入れ替わりを経ながら半世紀にわたり、日本の陶芸界を牽引してきた。
走泥社は、宣言文に「我々の結合体は、夢みる温床ではなく、まさに白日の下の生活それ自体なのだ」と記したように、戦後という時代を真摯に見つめることで、土による新たな造形を模索するところからスタートした。
走泥社という団体の功績を一言で述べるとすれば、いわゆる「オブジェ焼」を世間に認知させたということになる。
彼らの活動を見渡したとき、その革新性は特に前半期に認められる。
1960年代半ば以降、 例えば、1964年の現代国際陶芸展を皮切りに海外の動向が日本で紹介されると、走泥社が時代の中で有していた「前衛性」は次第に相対化されていくからである。
本展では、走泥社結成25周年となる1973年までを主な対象とし、走泥社と同時期に前衛陶芸運動を展開した四耕会など、走泥社以外の作家等も加え 、前衛陶芸が生まれた時代を振り返る。
同展は、京都国立近代美術館を含め、全国4カ所で開催される（他に岡山県立美術館2024年2月27日-4月7日、菊池寛実記念 智美術館2024年4月20日-9月1日）。
展覧会概要
会 場：岐阜県美術館 展示室3（岐阜市宇佐4-1-22）
会 期：2023年12月19日（火）～2024年2月18日（日）午前10時―午後6時
休 館 日：毎週月曜日（祝日の場合は翌平日）
夜間開館：2024年1月19日（金）、2月16日（金）は午後8時まで
※展示室の入場は閉館の30分前まで
料 金： 一般 1,000（900）円、大学生 800（700）円、高校生以下無料
※（ ）内は20名以上の団体料金
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、特定医療費（指定難病）受給者証の交付を受けている人、および、その付き添い(1名まで）は無料
主 催：岐阜県美術館、中日新聞社
特別協力：国立工芸館
企画協力：京都新聞
見どころ
解散後初となる本格的な走泥社回顧展
走泥社の活動期間の前半に限るとはいえ、 八木 一夫 、山田光、鈴木治という 創立メンバーと共に活動した同人による走泥社の多様な活動を紹介する初めての試みである。
走泥社は同人の増減を繰り返しながら活動を続けてきたが、今回は1973年までに一時期でも走泥社に参加した作家のうち、32名の作品および関連資料を紹介する。
【本展出品の走泥社作家】
門井嘉衛、加藤達美、金ヶ江和隆、叶敏、叶哲夫、川上力三、河島浩三、熊倉順吉、小西晴美、近藤清次、笹山忠保、佐藤敏、里中英人、鈴木治、高野基夫、田辺彩子、辻勘之、寺尾恍示、鳥羽克昌、中島清、林秀行、林康夫、人見政次、藤本能道、益田芳徳、緑川宏樹、宮永理吉、三輪龍作、森里忠男、八木一夫、山田光、吉竹弘
パブロ・ピカソやイサム・ノグチ。同時期に前衛陶芸活動を展開した四耕会の作品も！
当時の陶芸界に影響を与えたパブロ・ ピカソやイサム・ノグチの作品、また、同時期に前衛陶芸を牽引した四耕会、そして陶彫の辻晉堂や現代国際陶芸展（1964年）の出品作家など、走泥社以外の団体や作家も一部交えつつ、前衛陶芸が生まれた時代を振り返る。
【本展出品の四耕会作家】
宇野三吾、岡本素六、清水卯一、鈴木康之、中西美和、林康夫、藤田作、三浦省吾
【その他本展出品作家 】
辻晉堂、森野泰明、柳原睦夫、イサム・ノグチ、ケネス・スターバード、ニーノ・カルーソ、パブロ・ピカソ、ハワード・コトラー、ハンス・コパー、ピーター・ヴォーコス、ルース・ダックワース、ルーチョ・フォンタナ
展覧会構成
第１章 前衛陶芸の始まり 走泥社結成とその周辺（1954年まで）
敗戦により、 価値観が大きく揺らいだ時代 、戦後まもない京都で叶哲夫、鈴木治、松井美介、山田光、八木一夫の5人が走泥社を結成した。
走泥社は特別な規則や方向性を有した団体ではなく、多様な考えを持つ人材が集まり、前衛という意識のもとで活発な制作活動を行った。陶芸界の伝統的な規範から距離をとりつつ、外的な影響を受けながら自身の心象風景を表現するところに、あるいは陶磁器が持つ造形要素を現代の造形言語に昇華させようとしたところに当時の走泥社の前衛意識をみてとることができる。
同時期に活動した四耕会や当時の陶芸家の仕事に大きな影響を与 えたパブロ・ピカソやイサム・ノグチ の作品もあわせて展示する。この時期の前衛陶芸界は、陶芸家たちが器物形態をいかに現代的な立体造形として自立させていくのかを模索する時期と言える。
第２章 オブジェ陶の誕生とその展開（1955-1963年）
50年代後半になると、 走泥社以外で活動していた有力な陶芸家が走泥社に参加し 、前衛陶芸家集団としての走泥社の骨格が固まっていく。当時のメンバーの写真などからは、活動が活発化していたことがうかがえる。
走泥社同人を中心に「時代の意識」に根差した陶芸作品を展示するとともに、走泥社同人と交わりながらも陶彫を制作し、立体と空間という彫刻の造形言語を追究した彫刻家の辻晉堂の作品も紹介する。
第３章「現代国際陶芸展」以降の走泥社（1964-1973年）
現代国際陶芸展は、東京オリンピック開催を記念し、全国4会場を巡回して行われた日本で初めての本格的な国際陶芸展だった。
走泥社にとって大きな転機となる出来事となり、 彫刻家の柳原義達は「藝術新潮」に「日本陶芸の敗北」というエッセイを寄稿するなど、日本の陶芸界に対しての自己変革を促すものとなった。
この時期の走泥社は 、 草創期の同人と若手作家とがバランスよく併存し、 最も充実した時期だった。 心象風景の表象から始まった陶によるオブジェが、さらなる自己検証を行うことにより前衛性が相対化し 、 個々人の造形表現として成熟と拡張を見せ始めた時期だった。
関連プログラム
■講演会「今、なぜ走泥社なのか」
日 時：2024年1月27日（土）13:30-15:00
会 場：岐阜県美術館 講堂
講 師：大長智 広（京都国立近代美術館 主任研究員・本展企画者）
備 考：聴講無料、事前申込み不要 、定員170名（先着順）
■美術講座「走泥社とその時代 vol.1」
日 時 2024年2月3日（土）13:30-15:00
会 場：岐阜県美術館 講堂
講 師：齋藤智愛（岐阜県美術館学芸員）
備 考：聴講無料、事前申込み不要 、定員170名（先着順）
■美術講座「走泥社とその時代 vol.2」
日 時：2024年2月10日（土）13:30-15:00
会 場：岐阜県美術館 講堂
講 師：正村美里（岐阜県美術館 副館長 兼 学芸部長）
備 考： 聴講無料、事前申込み不要 、定員170名（先着順）
■ギャラリートーク
日 時：2023年12月23日（土）14:00-14:45
2024年1月7日（日）14:00-14:45
会 場：岐阜県美術館展示室 3
備 考：要観覧券、事前申込み不要
■夜間開館 ギャラリートーク
日 時：2024年1月19日（金）19:00-19:30
2024年2月16日（ 金）19:00-19:30
会 場：岐阜県美術館 展示室 3
備考： 要観覧券、事前申込み不要
■ナンヤローネアートツアー
日 時：2024年1月21日（日）14:00-15:30
会 場：岐阜県美術館 多目的ホール、展示室 3
備 考：要事前申込み、要観覧券
詳細は、岐阜県美術館ウェブサイトで確認
■ナンヤローネアートアクション
日 時：2024年2月4日（日）13:30-15:30
会 場：岐阜県美術館 多目的ホール、展示室 3
備 考：要事前申込み、要観覧券
詳細は、岐阜県美術館ウェブサイトで確認
■パイプオルガン定期演奏会
日 時：2024年2月11日（日・祝）14:00-
会 場：岐阜県美術館 多目的ホール
備 考：参加無料
同時開催
◆「ルドンコレクションから：黒との会話」
2023年1９月20日（水）- 2023年12月24日（日）
◆「さかのぼり岐阜洋画史 大正・明治編」
2023年10月11日（水）- 2024年12月24日（日）
◆「林武史《石間》 安藤基金コレクションから」
2023年10月11日（水）- 2024年12月24日（日）
◆「フォルムーやきものから」
2023年11月14日（火）- 2024年13月13日（日）
◆「ルドンコレクションから：聖アントワーヌの誘惑」
2024年11月15日（金）- 2024年14月２7日（日）
◆「フランスに渡った日本人画家」
2024年11月15日（金）- 2024年13月31日（日）
◆「アートまるケット」
2024年11月13日（土）- 2024年13月17日（日）