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「佐藤克久 こりごりごり」名古屋造形大学ギャラリーで2025年9月4-7日、11-17日に開催

名古屋造形大学ギャラリー 2025年9月4〜7日、11〜17日

佐藤克久

 佐藤克久さんは1973年、広島県生まれ。1999年、愛知県立芸術大学大学院美術研究科油画専攻修了。

 名古屋のSee Saw gallery+hibit、東京の児玉画廊などで個展を開いてきた。See Saw gallery+hibitでは、2019年に末永史尚さんとの2人展2023年に個展「あけっぴろげ」を開いている。

 、2013年「反重力 浮遊|時空旅行|パラレル・ワールド」(豊田市美術館)、「あいちトリエンナーレ2016」、2019年「豊田市美術館 リニューアルオープン記念 コレクション展 世界を開くのは誰だ?」(豊田市美術館)、2019年「アイチアートクロニクル1919-2019」(愛知県美術館)、2023年「コレクション 小さきもの─宇宙/猫」(豊田市美術館)などにも参加。

こりごりごり

 佐藤さんの作品は、いわゆる表現というよりは、あるいは表現の要素があるにしても、それと同等以上に、絵画というもの、絵画を制作するという、そのこと自体を、さまざまな絵画的形式に意識を向けることで問い直していくものである。

 会場には、一見して、絵画らしきものと、絵画らしからぬものがある。一般的な意味で「絵画」とはこういうものだという枠組みがあるから、そう感じるのである。

 だが、では、絵画とは何であろうか。モダニズム絵画は、絵画の形式に目を向け、還元主義的、自己言及的に分析した。

 佐藤さんは、それを、大仰な芸術的身振りでなく、むしろ、しなやかに、そうした絵画を行ったり来たりしながら、モダニズム絵画を解体して見せ、鑑賞者がそれを見ることで、「これは何か」「これは絵画なのか」という問いが生まれるようなやり方の中に、絵画の要素を浮かび上がらせる。

 絵具の物質性、形や線、あるいは文字、色彩、レイヤーとしての色面、具象性、抽象性、それらを載せる支持体、支持体を張って絵画の範囲を規定する木枠とその縁などに、さまざまな操作を加えて、軽やかに、「絵画」を制作している。

 縦に延びて空間いっぱいに弛緩されて吊るされた作品など、空間における展示の方法も含め、多種多様である。

 とても緻密に、時に、ノンシャランと、人を食ったようなやり方で、絵画の諸要素を構成し直し、遊びのような戯れと、絵画の形式的要素を鋭くえぐる知的な試みを織りまぜる企てを、何食わぬ顔で実践している。

 タイトルについても、同じことがいえる。個展のタイトル「こりごりごり」は「こりごり」をもじり、作品タイトルの「色景」は「景色」を捩り、「空っぱ」は「空っぽ」を捩り、「いんきち」は「いんちき」を捩っている。

 捩るとは「滑稽味を出すため、もとの表現に似せた口調の言い方をする」ことである。ここでいう「もとの表現」とは、いわゆる絵画である。

 ただ、佐藤さんの「似せた口調」は、とても幅広く、冒険的、そして、ユーモラスであり、いわゆる絵画から、とても遠くに行くことも多い。

 あるいは、既存の絵画とそれほど違わないように見えて、平面性とイリュージョン、絵画の構造などの問題意識を巧妙に忍ばせていたりもする。

 佐藤さんの作品は、そのような意味で、絵画という歴史的な概念、表現言語、文脈、解釈を解体して、自由に、その要素を抽出して、それでもなお「絵画」にとどまろうとする、しなやかな営みである。

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