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ロームシアター京都 館長就任延期 朝日新聞が詳報

 2020年4月に予定された演出家・三浦基さんの「ロームシアター京都」館長就任が2021年4月に1年間延期された問題について、2020年5月2日の朝日新聞(WEB)が詳報している。背景にあるのはパワハラ問題。2月に演劇関係者らが公開質問状を京都市に提出したことなどを受け、同紙は、信頼回復に加え、館長の役割や就任までのプロセス、劇場全体の運営などの課題を指摘している。
  
 三浦さんは、劇団「地点」代表で、先鋭的な作品は国内外で高い評価を得ている。2020年4月28日の産経新聞(WEB)によると、三浦さんは同日、新作発表に合わせた記者会見(Zoomによる)で、パワハラ問題について「誤解や疑心を招いたことを真摯(しんし)に受け止め、関係者の皆さまに重ねておわび申し上げます」と謝罪した。
 
 演劇関係者による公開質問状は、ロームシアター京都の館長に今年4月から三浦さんが就任することになった経緯を明らかにするようにとの内容。地点の元劇団員女性から、パワハラを受けて一方的に解雇されたという訴えが起きていた。
 2020年3月19日の朝日新聞(WEB)によると、館長就任延期の背景には、このパワハラ問題がある。団体交渉していた労働組合と「地点」の双方が3月5日に「関係当事者間で解決に至った」と共同声明を出したものの、市が信頼回復のためには時間が必要だとして1年間の就任延期を決定。ハラスメント防止の指針作成や、三浦さんが参加するシンポジウム開催などの方針も明らかにしたという。

 2020年5月2日の朝日新聞(WEB)によると、公開質問状が出されたことで、市や劇場を運営する財団のパワハラ軽視とも受け取られかねない姿勢が問題視され、加えて、館長の役割が曖昧であるなど課題が浮き彫りになった。
 同紙によると、館長の役割は、同財団の規程で「音楽芸術文化の振興に努める」としか書かれていない。三浦さんには、公演の演出やプロデュースなどを含めた芸術監督的役割を果たす立場として館長就任が要請されたが、就任発表前に劇場の企画担当との協議は全くなかったという。
 一方、劇場の開館準備段階から関わり、自主事業の企画を担当する橋本裕介さん(プログラムディレクター)は、市から特定のアーティストの関わりが強くなるなど「偏り」がないようにと言われ、自身も、劇場運営全体を統括する常勤の人材が必要だと感じてきたという。
 
 同紙は、綿密な準備期間を経て白井晃芸術監督から20年度末に長塚圭史さんに引き継がれるKAAT神奈川芸術劇場や、芸術監督が公募制で市民も選考に関わる埼玉・富士見市民文化会館「キラリ☆ふじみ」などの例も挙げている。

 朝日新聞の記事からは、市や財団が三浦さんに求める役割と現場の意見とのすり合わせ、劇場のガバナンスや運営全体、市民とのコンセンサスなどの議論が十分でないまま、三浦さんへの館長要請が先行した経緯が推測される。
 地点の新作については、ステージナタリー


 

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執筆者

井上 昇治

井上 昇治

1964年、名古屋市生まれ。大学時代に演劇に熱中し、現代美術や小劇場演劇、映画などを見始める。89年、新聞記者になり、美術、演劇、映画などを担当。2002年10月、名古屋で芸術批評誌REARを有志で立ち上げ、2011年頃まで編集・執筆。現在も時々、執筆している。2019年6月、WEBサイトOutermostNAGOYAをスタート。ライター、ジャーナリストとしての活動のほか、アートをテーマにオウンドメディアの可能性を追究している。投稿一覧へ

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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