野口哲哉展―THIS IS NOT A SAMURAI 刈谷市美術館で9月18日-11月7日

野口哲哉展―THIS IS NOT A SAMURAI

 愛知・刈谷市美術館で2021年9月18日〜11月7日、「野口哲哉展―THIS IS NOT A SAMURAI」が開催される。

 野口哲哉さん(1980年、高松市生まれ)は、鎧兜と人間をテーマに、超絶技巧で、現代性や人間性を問いかける現代美術作家。

野口哲哉

 鎧兜を着た人物をモチーフに、立体造形や絵画を制作。古びて見える作品は、樹脂やアクリルなど現代的な素材で、歴史資料と見間違えそうなほど、精巧、リアルに作られ、古典の引用や歴史的な読み解きにいざなうとともに、憂いや哀愁、苦悩、屈折、滑稽さなど人間の内面性、奥深さをにじませる。

 鎧をまとう人々の彫刻や絵画など、初期から新作まで代表作約180点を展示。荒々しい甲冑と現代的な身振りのあわい、空想と現実のはざまに、多様な文化、喜怒哀楽が混ざり合うユニークな世界観が、ここにはある。

野口哲哉

 鎧を着た人物が所在なくたたずんでいたり、空中に浮かんだり、風船を見つめたり‥‥。

 時には流行りのスニーカーを履き、ブランドのロゴが付いた甲冑を自然に着こなすなど、鎧兜とはアンバランスな、等身大な人間の姿をリアルに映す。

 「鎧を脱ぎ捨てる」という言い方もあるが、鎧兜は、自分を守り、強く見せ、ありのままの自分を覆い隠す手段。あるいは、人間の承認欲求、優越コンプレックスを象徴する組織や地位、名誉、規律、制度のメタファーでもある。

野口哲哉

 一見ユーモラスに見えながら、どこか物憂げな雰囲気も帯びる野口さんの作品には、目まぐるしく移り変わる文明、予測不能な危機と背中合わせの中で、矛盾を抱えながら生きる人間の普遍的な姿が鋭い視点で映し出されている。

 作品を見た人は、野口さんの幅広い思考や、精緻な作品に込められた温かさ、人間への好奇心を感じとるだろう。

見どころ

第1章 IN THE ARMOUR~鎧の中へ~

 ちょっと小さな鎧兜や、すごく小さな侍たちが来館者を出迎える。でも、その侍は「侍じゃない」。それは一体どういう意味なのか? 「なさそうで、ある物」と「ありそうで、ないもの」の2つが混在する、知的でユニークな作品世界の始まりである。

第2章 REAL IN UNREAL~仮想現実の中で~

 生きている兜や、ヘッドフォンに聴き入る侍、猫を散歩する鎧姿の男たち。作品の重要な側面である「ありそうで、ないもの」には、人間社会への鋭い考察が反映されている。今とは異なるルールの中でも、今と変わらない人間の姿が息づいている。読み解きや哲学が秘められた独自のリアリズムが展開する。

第3章 ARMOURD DREAM~鎧を着て見る夢~

 まるで昆虫標本のような、小箱に入った鎧姿の人物像。眠っているようにも死んでいるようにも見えるミステリアスな姿は、見る者の好奇心をかき立てる。手のひらに乗るほどのサイズから、小指よりも小さな作品まで。感情を失って安らかに眠る人の表情が、兜の下に浮かび上がる。

第4章 TRIP TO THE WORLD~別世界旅行~

 絵本のような幻想的な世界観や、ヨーロッパの古典技法で描き出された鎧姿の人物たち。私たちの先入観とは異なる視点で表現された絵画は、全てアクリル絵の具で再現されている。クラシックだけど新鮮な絵画世界が展開する。

第5章 THIS IS NOT A SAMURAI~鎧を纏うひとびと~

野口哲哉

 作者である野口哲哉さんにとって、「鎧と人間」の2つがあれば、侍という要素は必要ない。鎧兜を着ていても、「侍」というフィルターを通さず、人間をクリアに見つめる作風は、異なる人種や文化に偏見を持ちがちな私たちに、時に優しく、時に皮肉を込めた警鐘を鳴らす。人間と感情、そして鎧兜を精緻に表現した近作が一堂に会する。

野口哲哉 Tetsuya Noguchi

 1980年、香川県高松市生まれ。2003年、広島市立大学芸術学部油絵科卒、05年同大大学院修了。
 「鎧と人間」をモチーフに、 樹脂やアクリル絵具を使って彫刻や絵画作品などを制作する。
 2016年、香川県文化芸術新人賞受賞。主な個展に、「野口哲哉展-野口哲哉の武者分類図鑑-」(練馬区立美術館、アサヒビール大山崎山荘美術館)、「中世より愛をこめて」(ポーラ ミュージアム アネックス)、「鎧ノ中デ-富山編-」(秋水美術館)。
 著書に「侍達ノ居ル処。」(青幻舎)、「野口哲哉作品集 〜中世より愛をこめて〜 From Medieval with Love」(求龍堂)。
 CHANELやAudi Japanなどの企業とコラボレーションした作品も制作。2015年には羽田空港国際線ターミナルでアートディレクションを手掛けた。

野口哲哉

関連イベント

アーティスト・トーク「野口哲哉、自作を語る」

Vol.1 :9月18日(土曜)13時30分~15時
9月1日(水曜)正午から電話受付(先着順)
電話:0566-23-1636

Vol.2 :10月9日(土曜)13時30分~15時
9月22日(水曜)正午から電話受付(先着順)
電話:0566-23-1636

定員:各日90名(要事前申込)
会場:刈谷市中央図書館3階大会議室(美術館隣)
聴講無料

学芸員によるミニトーク

9月22日(水曜)/ 30日(木曜)/ 10月8日(金曜)/ 12日(火曜)/ 23日(土曜)/ 11月4日(木曜)各日14時から10分程度
会場:美術館1階ロビー
参加無料(要展覧会チケット)、申込不要

ワークショップ「デコレーションかぶと」

 カッコよく!オシャレに! 自分の好きな飾りや色で「オリジナルかぶと」を作ってかぶろう。

10月24日(日曜)
(1)小学1~3年生 10時~11時30分
(2)小学4~6年生 13時~16時
講 師:山口百子(美術家)
定 員:各12名
会 場:美術館研修室
参加費:300円
申込方法は、公式サイトで確認を。

展覧会概要

開館時間:午前9時から午後5時
※入館は午後4時30分前まで
休 館 日:月曜日(9月20日は開館)、9月21日(火曜)
入 場 料:一般1,000円、学生800円、中学生以下無料

※身体障害者、精神障害者保険福祉、療育の各手帳所持者及び付き添いの人(1名)は入場無料。入館の際に手帳を提示する(ミライロID可)。

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文化とメディア—書くこと、伝えることについて

1980年代から、国内外で美術、演劇などを取材し、新聞文化面、専門雑誌などに記事を書いてきました。新聞や「ぴあ」などの情報誌の時代、WEBサイト、SNSの時代を生き、2002年には芸術批評誌を立ち上げ、2019年、自らWEBメディアを始めました。情報発信のみならず、文化とメディアの関係、その歴史的展開、WEBメディアの課題と可能性、メディアリテラシーなどをテーマに、このメディアを運営しています。中日新聞社では、企業や大学向けの文章講座なども担当。現在は、アート情報発信のオウンドメディアの可能性を追究するとともに、アートライティング、広報、ビジネス向けに、文章力向上ための教材、メディアの開発を目指しています。

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